天魔界戦

皇神凪斗

第56話 無法者魔法指南・ムラサキ vs ルーズ

ルーズの前に立ち塞がったのは黒髪ショートの女性。
その服装と手に持つ禍々しく黒い樹の杖から魔道士だと分かる。
「こんな危ない戦場に何の用かな?お嬢さん?」
ルーズの挑発に、強気な表情のムラサキは鼻で笑う。
「可哀想に・・・。これから『死ぬ』って事が分からないみたいね。」
ルーズは口の端を釣り上げる。
「・・・良かったぜ。氷姫は根はいい奴だから気が引けるが。
お前みたいなクズなら遠慮しなくて済む。」
「口の減らない男ね。あなたは騎士でしょ?悪いけど剣じゃあたしには勝てないのよね。」
ムラサキは杖を振る。
「・・・『炎獄の蛇』!」
その足元から炎が吹き出す。それは一匹の大きな蛇となりルーズへと迫る。
ルーズは全く焦りもせず、左手を前に出す。
「『蒼炎陣』」
蒼い炎がルーズの周りを覆う。炎の蛇は、蒼い炎に触れた瞬間に燃やされていしまう。
ムラサキの表情が曇る。
ルーズは腰に巻き付けていた剣を鞘ごと外す。そして、何を思ったのか近くにいた一人に呼びかける。
「おい、お前。」
「はい!何でしょう?」

「これ、やる。」

そう言ってルーズは剣を放り投げる。
「はい!?」
剣を渡された男とムラサキはルーズの行動が理解出来なかった。
「そ、それではルーズ隊長が!」
「いらねぇよ。俺は元々、ちまちま剣で戦うのが好きじゃないんだ。」
「りょ、了解です!!」
男は早々に戦いの渦へと戻って行った。
ルーズの視線がムラサキへと移る。
「蒼い炎・・・。まさか、魔法の方が得意とはね。騎士が聞いて呆れるわ。」
「俺は自分から騎士と名乗った覚えはねぇ。実力で上り詰めただけだからな。」
「・・・面倒臭いわね。さっさと殺してあげるわ!
『黒炎・火塵ひじん』!!」
ムラサキの前に現れたのは黒い魔法陣。その魔法陣からは黒い炎が放たれる。
しかし、一つの塊ではなく。複数の小さな炎が様々な角度からルーズへ向かってくる。
「炎が俺に効くかよ!『蒼炎鳥』!!」
ルーズの手元に赤い魔法陣。同じく放たれた蒼い炎はかなり大きく。ムラサキに近づく事に雀のような形状の炎となる。
黒い炎を受けながら、ムラサキへ飛んでいく。
当たらなかった黒い炎は三つ程飛んできたが、『蒼炎陣』によって阻まれる。
「さあ、どうする?俺の炎はめっちゃ熱いぞ?」
「問題ないわ。────
届かない、から。」
「は?」
ルーズの放った蒼い炎は黒い炎によって瞬く間に侵食され、消されていく。
結局、ムラサキの少し前で全て黒い炎に飲まれてしまった。そして、ルーズの目の前にも黒い炎は迫っていた。

否、『蒼炎陣』が燃えていた。

黒い炎に侵食されている。
「さっきの魔法陣・・・炎魔法じゃねぇ!」
「正解よ、お坊っちゃん。この黒い炎は闇魔法。・・・悔しい事にロキが作り出した魔法だけど。
これは魔力を燃料として燃える炎。相手の魔法を燃やし、無力化する。
この魔法の前ではどんな魔道士も無力・・・攻撃魔法も防御魔法も直ぐに消してしまう。
・・・物凄い馬鹿ね!剣は持ってた方がいいんじゃない?」
ムラサキは高笑いする。勝利を確信して。
ルーズは大きく息を吸う。
「・・・・・・っはぁ〜。」
「!!・・・なんで悔しがらないのよ。」
「ん?別にそれで負けるわけじゃないし。でも面倒だな〜って思って。」
「あなたに勝機は無いわ。分かったら無様に命乞いしなさい!楽に殺してあげるから。」
「殺されるって分かってて命乞いするかアホ。
それに────

まだ奥の手があるっつーの。」

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