天魔界戦

皇神凪斗

第52話 提案

シャールは突然ナイフを下ろした。
「・・・何の真似だ?」
シャールはアルマへと視線を向けた。
「アルマ君・・・ボスから伝言があります。」
「ロキから?・・・何だ?」

「『一人で城に入ってこい。』との事です。」

それは、望むべくもない提案。しかし、相手から提案してきたという事は───
「おいアルマ!!罠の可能性もあるし、全員でこいつらを片付けてからでも遅くはない!」
ルーズは正論を叩きつける。
アルマならばロキを倒せるだろう。そして、周りの敵を排除してから一斉に攻めた方が勝機がある。
「それを許すとお思いですか?」
シャールが手を上げると、無法者達はそれぞれの武器でわざと音を立てる。
無理に全員で乗り込もうとすれば奴らは容赦なく攻撃してくるだろう。
数も相手が上だ。何よりアルマの力を消耗されれば相手の思うつぼだ。
だが、アルマは今の状況で戦場を移るのか考える。
自分が抜けた後、易々と彼らは捕まってくれるはずが無い。
彼らだけでこの数を相手しきれるだろうか。
そんな思考が頭をよぎった時。

「さっさと行け!この腑抜けが!!」

「カイト・・・?」
「ちょうどいい機会だ。お前に勝負を挑む!お前が奴を倒すのが先か、この俺がこいつらを始末するのが先か・・・。」
アルマは思わず口元が緩むんでしまった。
「そうですよ!いちいち悩むなんてアルマ君じゃありません!!」
「・・・ったく、お前らは・・・。あぁ!!行ってくんぜ!!」
アルマはその場を駆け、扉を叩き割って仲へ入っていった。




「提案を受けていただき感謝します。」
「何が提案だ。無理矢理聞かせただけじゃねーか。」
シャールはナイフを構え直す。
「では、行きましょうか。
ボスがアルマ君を倒すのが先か、私達があなた方を倒すのが先か・・・。」
カイトは槍を、メルは杖を握り締める。

「アルマ、負けるなよ?」




古城の中は植物が生い茂り、崩れそうな石の構造を植物が支える形になっていた。
入口からずっと真っ直ぐ行くと、古城の中心と思われる位置に玉座の間があった。
床のレッドカーペットは所々ちぎれ、多くの足跡で汚れている。
天井も高く、レッドカーペットの脇には柱がいくつも並んでいた。
そして、正面には大きな玉座。
子供の絵本でみるように、金と赤い布で作られた玉座。
背もたれが長く、座る者の威厳を示すような装飾。
そこに座っているのは王ではなかった。
肘掛に肘を置き、拳で顔を支えるようにして座る男は『この時を待っていた』と楽しげな表情を浮かべる。
「お前が座る玉座なら人間の骨で作ったらどうだ?」
「そうだな・・・城の外にいる人間の骨でも回収しておくか。」
「やめとけよ。怪我するぞ?」
ロキはニヤリと笑うと、立ち上がり魔剣を地面へ突き刺す。
アルマは真剣な顔になると一度剣を下げる。
「・・・お前、どうしてこんな事を?」

「・・・そうだな。どうせ誰も邪魔はしない、少し話をしてやる。」

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