天魔界戦

皇神凪斗

第51話 決戦

デスペラード無法者のアジトは新街周辺の山。その更に下にある森の一角と一体化した『古城』であった。
そして、その城は通称『人喰いの古城』と呼ばれていた。
「まさか、あの『古城』がアジトだとはな。」
『人喰い』と呼ばれる所以は、観光の目的で近づく人間が帰って来ない事にある。
新街が出来てから噂がたっていたので、ガゼルが仕組んだ事だと思ってはいた。
しかし、それもロキの作戦と思えば納得が行く気がした。
「新街の行方不明者事件、その裏に隠れていた。という事か。」
さらに、アルマ達が攻め込んでくるのを予想してか、森だらけだった古城周辺は半径約二十mほどが平坦な地面になっていた。
乗り出せば見つかる。やはりロキは侮れない。
「ルーズ、とりあえず囲っちまおう。」
「おう。じゃあ、幸運を祈る。」
政府から派遣された四小隊と共に周囲を囲む。
扉がある南側にはアルマ、
東にカイトとメル、
西にルーズ、
北にレイジとそれぞれの間に兵を配置する。
そして陣形が整ったその時、

背後に氷の壁が出現する。

「何!?」
「クソっ!一旦氷から離れろ!!」
それは城に近づき森から身を乗りだせということ。
氷は高さが三m以上もある。次々と地面から生え、アルマ達を囲っていく。
結果的に閉じ込められてしまった。
氷は青白く、クリスタルのように透明で美しい。かなり熟練された魔法だ。
「この氷・・・シャールさんですか!!」

「その通りです。よくぞお越しくださいました。アルマ君、メルさん。」

声を聞き見上げると、氷の上に人が立っていた。
目の前の氷よりも美しい銀髪はポニーテールに、動きやすさと音を立てないための暗殺者の格好。
両方の手には華奢な体には似合わないアーミーナイフ。
氷の上にはシャールだけではない。血がべっとり着いた武器を持つ殺し屋、盗賊、山賊。
古城を囲むアルマ達をさらに囲む形で現れた無法者達。
その数はこちらの倍近くだった。兵達は戦況の悪さに後ずさる。
当たり前だ、奇襲を掛けるつもりが待ち伏せで退路を断たれ、数も多く囲まれた。
敵と自分の立場が想像と逆なのだ。

「怯まないで!!────

声を上げたのはメル。そして杖を構える。
反対方向にいたルーズも片手を天へと掲げる。
「「───『サン・フレア』!!」」
メルとルーズの頭上に太陽、大きな火の玉が現れた。
二人が手と杖を振り下ろすと、火の玉の中から火球が放たれた。
数十放たれた火球は、周りの氷に激突し、溶かしていく。
上にいた無法者達は氷の後ろに隠れるが、みるみるうちに氷が溶け、姿を現す。
魔法が落ち着いたと同時に氷の壁も無くなった。
「流石は『炎の魔術師 ルーズ』・・・そしてメルさん。」
「アルマ君!!シャールさんとは私が戦います!!」
こいつシャールには俺も借りがある。」
シャールの前にメルとカイトが立ち塞がる。
「・・・あぁ!任せるぜ!!」
そこでルーズが声を上げる。
「気をつけろ!強えのは氷姫こおりひめだけじゃねーぞ!!」
ルーズの前には一冊の古びた本を持ち、限りなく黒に近い紫色のローブを羽織った黒いショートヘアの魔女、
レイジの前にはスキンヘッドで日焼けしたような色の肉体といくつもの武器をぶら下げた戦士が進み出る。
「悪いけど、あなた達には死んでもらうわ!」
「これもボスの命令でな。まあ、抵抗しないなら半殺しで勘弁してやる。」
それは強者の言葉、弱者への言葉。
しかし、ハッタリではない。彼女らはボスロキには敵わなくても、纏っている空気は本物だ。

アルマはそこで深呼吸をし────

ロキは城の中で一人戦いの始まりを感じ────

「「さあ!戦闘開始だ!!」」

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