天魔界戦

皇神凪斗

第49話 サリムの過去

ロキが立ち去るまでアルマは驚きと混乱で動くことが出来なかった。
「アルマ・・・。」
口を開いたのはサリム、小さい体で腕を押さえながら歩いてきた。
「知りたいか?彼の正体を。」
「奴は・・・、爺っちゃんと会ってるのか?」
「会っているどころか、剣を交えたこともあると言っていた・・・。」
そこでカイトが起き上がり、話に割って入る。
「『言っていた』!?どういう意味だ?」
「隠しても仕方ないか・・・。

僕は・・・元デスペラードの人間だ。」

「「!!!」」
「ほんとかい?ルーズ君。」
ルーズはレイジの視線に臆することは無い。
「あぁ。過去に何があろうと、道端に倒れていたガキを、見捨てる義理はねぇからな・・・。」
「それに、彼は優秀だ。魔法に関しての知識、訓練も真面目に取り組み、すぐに今の地位を得た。」
アルマはサリムの目を見る。
少しの沈黙の後、口を開く。
「何で、あんな組織に入ろうと?」
サリムは難しい顔で、渋々話を始める。
「・・・僕の故郷は奴らに潰された。言い方は悪いけど何も感じなかった。さんざん虐められたからね。
でも、一つ感じたのはあいつロキの魔法の美しさだ。」
「・・・魔法の・・・美しさ?」
「あぁ、ただの痩せた子供に使えるなんて思わなかった魔法を・・・あいつは軽々と、いつくもの魔法を使ってみせた。
不覚ながらその姿に憧れた。」
人は、他人しか持たないものに興味を持つ。これもその一環だろうか。




「僕を!弟子にしてくれないか!?」
「・・・。」
静かな瞳でロキはサリムを見下す。
「貴様を俺の元に置いて・・・何か得があるのか?」
「あなたのように、いろいろな魔法が使えるようになりたい!!そしてあなたの力になる!!何か役に立つはずだ!!」
「・・・・・・俺の道具には魔法を使えるやつもいる。そいつに聞け。」
「!!・・・ありがとう!!」

その後、デスペラードのアジトでサリムは魔法を学んだ。勉強に必要を感じなかっただけで、サリムは頭が良かった。
すぐにドロシーの作り出した魔法を理解し、使えるようになった。
一番最初に教わったのは闇魔法だ。簡単に使えるようになった後、他の魔法を教わる。
最終的には光以外の魔法を使えるようになった。

サリムがデスペラードに入って三ヶ月、すでに魔法を充分に扱えるようになったサリムはロキに顔を出す。
「ロキ!僕は強くなった!僕にも戦わせてくれ!!」
「・・・ならば模擬戦だ。少し遊んでやる・・・。」

結果は惨敗だ。ロキは本気で、殺すつもりで戦った。
かなり一方的な戦いで、終わったのはサリムの魔力が尽きた時。

この時サリムはロキとの生きている世界の差を感じた。

「・・・僕は、必要ない・・・。ロキは・・・誰の力も必要とはしない。
僕が飼われたのは、気まぐれだったんだ。」

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品