天魔界戦

皇神凪斗

第47話 魔剣の力

ロキは既にアルマからレミアール達へと標的を変えていた。
「さて、貴様の力を見せてみろ・・・。」
突如、ロキの上空が割れる。
降り注ぐのは一本の槍。それも高密度の魔力で極太の物だ。
ロキは魔剣でそれを受け止める。
人ひとりの体は簡単に飲み込まれてしまう。しかし、その威力に屈さず踏ん張っていた。
レミアールの頬に一筋の汗が伝う。
「・・・これを受け止めるなんて・・・。地に伏せなさい!!」
更に魔力を注ぎ込み、威力を増す。
元々、膨大な量の魔力を消費する『ジャッジメント神の裁き』は更なる脅威を見せる。
ロキは軽々しく受け止めようとしたが、避けるべきだったと後悔するだろう。
「・・・この程度か?・・・神の従僕。」
余裕など無くなるはずだかロキは魔剣で受け止める体制は全く崩れていない。
「・・・まだです!!」
レミアールは体内の魔力を殆ど注ぎ込む。
神の槍が眩しいほど光を放つ。

刹那、光が爆発する。

その場に居るほぼ全員が、爆風で吹き飛ばされる。
立っていられたのはドロシーと風魔法で爆風を防いだレミアールのみだった。
ロキの魔法は爆発直後に解けた。
アルマは何とか『黄金の盾』で防ぐことが出来た。
「魔法が解けたってことは、入ったのか?奴に?」
周囲に広がる煙、その中に影が一つ。
突如、煙が左右に別れる。
中央に立つのはもちろんあの男。
レミアールの目が見開かれる。
「そんな・・・!?」
攻撃は確実に入った、しかし────
ロキに訪れた変化は上半身の服が破けただけだった。
「本物の魔法・・・神の力・・・。やはり巫女の血か、女。」
攻撃に当たった事より、本物の魔法が見れたことの喜びが大きい様子のロキ。
レミアールは魔力不足でその場に膝をつく。
「あれを受けて・・・立っているなんて・・・!」
ロキは破れた服を掴む。すると、あっという間に元通りの薄手のロングロートとなり、ロキの全身を黒に染める。
そして、腕をまくりボタンは占めない。
そのまま漆黒の魔剣を構えた。
「面白いものを見せてくれた褒美だ。受け取れ、女。」
魔剣を垂直に掲げる。それにより魔剣から黒い何かが浮き出てくる。
もやもやと煙のように空へ伸び、一つに固まる。
その場にいる全員が警戒態勢へと入る。
「レミア!一旦退け!!」
「・・・はい。・・・くっ!!」
しかし、レミアールは膝が震えて立つことが出来ない。
ロキの上空には巨大な黒い球体が浮かんでいた。
「!!・・・さっきと違う、相当ヤバいぞ!!」
ロキは剣を振り下ろす。
「・・・『ヘル・ボルケーノ』!!」
黒い球体は地面に激突、ゆっくりながらもボーリングの玉の様に地面を滑りレミアールに向かって飛んでいく。
「クソっ!!レミアァ!」
「『私に従って』!!」
メルが地面に手をつけると、みょきみょきと樹木が生え網のように広がる。
しかし、黒い球体はそれをものともせず突き進む。
「止まらない!!」
「『蒼炎門』!!」
ルーズが立ち塞がり、目の前に大きな魔法陣が現れる。
そこから生まれたのは青い炎、その炎は黒い球体と同じ大きさの門となる。
激突、ルーズは踏ん張る。
だが、速度が落ちただけでずるずると地面を削り進む球体。
「・・・ここは通さねぇぞぉお!!」
その内に、カイトはメルを抱え球体の直線上より逸れる。
「ルーズ!!巻き込まれるぞ!!」
「ぜってぇ守る!!命に変えても!」

その瞬間、炎の門が破られる。

「ルーズ!!避けなさい!!」
レミアールは叫ぶ。
ルーズへと黒い球体が迫る。その距離、数十cm。
「『ライジング』!!」
レイジが、雷となり駆ける。ルーズの腕を引き、すんでの所で躱す。
「何すんだ!!あれを止めねぇと!!」
「今から行くよ!!『ライ────

「『狂気なる誓い』『地に伏せろ』・・・。」

脳裏に声が響く。頭の中に入っきた言葉に、逆らう事が出来ない。
ドロシーとアルマ以外の二人がその場に伏せてしまう。
「婆っちゃん!!どうにか出来ないのか!?」
「これは────」
「『俺の戦い』ってか!?だとしても目の前で人が死にかけてるんだぞ!!」
「・・・分かったわ。『テレポーテーション転移』!!」
アルマは突如、球体の目の前へと飛ばされる。
その球体へ向けて、聖剣を構えた。
「『聖剣 エクスカリバー』!!」
しかし、聖剣は反応しない。
「!?・・・どうした!エクスカリバー!!」

〈それは魔法ではない。だから聖剣も反応しない・・・。〉

アルマの頭に声が響く、今度はロキの声では無かった。
「ミカエル!!お前か!?」
〈左様。見ていられなくなったのでな。
・・・聖剣に魔力を集めたまえ。〉
「お、おう!!」
黒い球体が迫ってくるが、アルマは冷静に魔力を練り出す。
〈そして、思いっきり振れ!!〉
「うおりゃぁぁぁぁああ!!!!」

アルマが剣を振り下ろすと、空間に白い軌跡が描かれる。
その軌跡から、白く、暖かい魔力が吹き出す。
そして、球体へ向けて一本の魔砲が放たれ

────天の剣となる。

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