天魔界戦

皇神凪斗

第45話 光の中で

気が付くとアルマは白い世界にいた。
白い床、天井かどうか境目がハッキリしないが白い天井。
当たりはどこまでも続く壁の無い白い世界に───
『二人』だけが存在した。
アルマの目の前にいるのは一人の男性。
深い緑の長髪で、顔は無表情な上目は閉じている。服、と言えるのか、大きな布を羽織り腰で帯を巻いて押さえつけただけの服。
肌は人間の物でなくこの世界に溶けてしまいそうに真っ白だ。
さらに、手の甲や肩には金色の二重円があり、線で繋がれている。
白すぎる肌に金色の装飾。しかし、それ以上に目を引くのが彼の背中に生えた体を覆ってしまう程大きな『翼』。
それはまるで────
「・・・天使、みたいだな。」
「如何にも。私は天界に住まう天使の一人、名をミカエルという。」
爽やかな青年の声がした。
ミカエルは目を閉じたまま、口だけを動かす。
「汝はアルマだったな?」
「!!・・・どうして俺の名前を?」
アルマの中で警戒心が高まる。
「人間を見張るのが我ら天使の役目、他にも聖剣に関しての役目もある。」
「折角で悪いんだが、さっきの場所に戻してくれないか?話は後で聞く。」
「否、ここは汝の意識の中。どれだけ話そうとも現実では瞬き一つの時間しか経たない。」
「そうか・・・。それで?聖剣の封印を解いて欲しいんだが?」
「良かろう。元々、人間に授けた物だ。汝が欲するならくれてやろう。」
アルマは呆気に取られる。
「良いのか?何か事情があるから封印したんじゃ無いのか?」
「否、かのドロシーが望んだから封印したに過ぎない。私の意思で封印した訳では無い。」
「ふーん・・・。」
少し拍子抜けだが、これで聖剣の力を取り戻せた。
後はここを離れるのみ。
「待たれよ。」
「ん?まだ何かあるのか?」
「汝に、私の記憶を少し渡そう。」
「何で?」
「・・・真実を知るべきだからな。」
ミカエルは人差し指をそっと、アルマの額に当てた。
「・・・何だこれ・・・。本当なのか?」
アルマの中に流れてきた記憶、それはアルマの考えを根本から否定するものだった。
「さて、用も済んだ。現実に戻るがいい。」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!!もう少し話を───」
「さらばだ、アルマよ。」
アルマの体は光の粒となって溶け始め、忽然とその姿を消した。

白い世界でミカエルは一人呟く。
「アーサーよ。汝の友人として少しお節介をさせて貰う。」

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