天魔界戦

皇神凪斗

第43話 闇の男

封印解除には広い場所が必要らしく、ドロシーの定めた人を連れ新街のあった場所へ来た。
例の事件の後、政府の人間が後片付けをした。
建物は地下の研究室のような空間と共に崩壊していて、瓦礫は全て一箇所に集められている。
隠しているようだが、所々血がこびりついていた。
ドロシーやレミアールは気づいているだろうが、口に出すことは無く黙々と歩く。
「ここら辺でいいかしらね。」
出来るだけ平らで広い場所でドロシーは止まる。
そして、その広場の中心あたりに立ち、箒で地面を叩く。
するとドロシーを中心に、七色に輝く魔法陣が展開される。
中心に大きな魔法陣、それを囲むように小さな魔法陣が七つ浮かび上がる。
それぞれに色があり、魔法の属性を示していた。
「さあ、ルーズ君?」
「あいよー!」
ルーズが赤い魔法陣の上に乗る。青い魔法陣の上に手錠を付けたシャール、黄色い魔法陣の上にレイジ・・・。それぞれがそれぞれの魔法陣に乗った。
中心にいるドロシーは皆の顔を確認する。
「次!アルマ、剣を出しなさい。」
「おう。」
アルマが剣を出し、ドロシーに柄を向ける。ドロシーが指を曲げるとスルッとアルマの手をすり抜けドロシーに吸い寄せられる。
そして、両手で握り魔法陣の中心に突き刺す。
「あんた達!魔力を練って!」
ドロシーの掛け声を受け、皆目を瞑り集中する。
次の瞬間、足元の魔法陣が光り始める。魔力が魔法陣に吸い込まれ、地面を伝い聖剣にぶつかる。
次、また次と魔力が聖剣に当たっていく。

しかし、サリムからは魔力が流れない。

アルマは不審に思い、目を開ける。
「どうした?チビ助。」
「いや、僕も魔力を流しているんだが・・・。」
サリムの頬に汗が浮かぶ。
「婆っちゃん、人を変えられないか?」
「いいえ、もうすぐよ・・・。」
「・・・ん?」
何の事だろうとアルマは首を傾げる。

その時、一つの足音がする。

皆がその音に反応する。その顔には驚きばかりが浮かぶが、ドロシーはただ一人冷静なままだった。
「それなら俺が力を貸してやろうか?アルマ。」
ここ新街には他の人間がいるはずが無かった。
政府の人間の作業は一段落したことで休暇。
一般人は危険なので立ち入り禁止だ。
そんな場所で、ここにいる誰もが知る人物が現れた。
「お前は・・・!?」
アルマの声に力が籠る。
そして、皆が魔法を中断し身を構えようとした瞬間。
「おい、動くとせっかくの魔法が失敗するぞ?
・・・『狂気なる誓い』『動くな』・・・。」
その人物の口の前に黒い魔法陣が現れる。
『動くな』、その言葉を聞いた時皆の動きは止まる。
「何、だ・・・?」
「動けない・・・!何かに押さえつけられてるみたい。」
動けるのはドロシーのみだった。
ドロシーは静かにその人物を見据える。
「やっときたわね。
───ロキ。」
ロキはニヤリと笑う。
そう、アルマにさえ影響を与える魔法を駆使する人物。
全身黒い服装の男。
────絶対強者ロキである。

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