天魔界戦

皇神凪斗

第26話 猛反撃

アルマの目の前では奇妙な現象が起きていた。黒く大きな竜がたった一人の人間の拳で後退していく。

いや!見てる場合じゃない。あの黒死竜にトドメを刺すのは俺だ。
もっと近づかなければ。

そう思っていた時、黒死竜が口を開く。
《シツコイゾ!人間!》
黒死竜は"叫んだ"。
《ガアアアァァァァァァ!!!》
その"叫び"は空気を歪ませる。そう認識することしか出来ない。
その衝撃波をまともに食らうロキ。
ただの空気の振動だが、ロキは吹き飛ぶ。
そのスピードは自身の脚程ではないが、近くにいた所為か抵抗出来ず地面を滑る。
木々を跳ね除け、ボールの様に回る。
数十m飛ばされた後、剣を取り出し地面に突き刺す。
それでも数mは地面を切り裂いた。
アルマはロキに駆け寄る。
「おい、大丈夫か?俺的には死んでもらってて結構だけど。」
「問題ない。」
問題ない、とは言ったものの普通なら全身の骨が砕けてもおかしくない。
しかし、ロキに全く傷はなかった。それどころか、服にも傷や土さえも付いていない。
まるで身体の周りを何かで守っているかの様に。
《散レ弱者ヨ!》
そんな事を考えているうちに黒死竜が次の攻撃の準備に入る。
竜は地を蹴り宙へ。しかし直ぐに翼を大きく広げ高度を下げる。
そして、黒死竜の二枚の翼に黄緑色の魔法陣が出現。
鋭利な爪の付いた脚が地面に触れる直前。翼にを羽ばたく。豪快に。
次の瞬間、黒死竜の前に風邪が舞う。翼を羽ばたいたので当然。しかし風圧が尋常ではない。
空気の球体とも言うべきもの、それがロキを追って放たれる。
直径二十mはありそうな風が、木々を粉々にし地面を抉り、迫る。
ロキの姿が掻き消える。アルマも『魔装』を脚に集中し、地面を蹴り離れる。
それでも威力の落ちない風は新街を囲む山岳地帯へ激突。山を二つ程破壊する。
「とんでもねぇ威力だな。」
アルマが山の破壊後を見ていると、ロキはさっさと黒死竜に接近する。アルマも戦うまいと追いかける。
それを見た黒死竜も翼の動きを止め、空を滑るように二人に近づいてくる。
そのまま大きな口を開け、黒い魔法陣を生み出す。
その魔法陣から、『黒い霧』が吐き出される。
アルマは走る方向を直角に曲げて逃れる。
ロキは霧を避けつつ腹の下に潜り込む。そして地に手を当てる。
地面はモゾモゾと動き、まるで地面から人が飛び出るように岩で出来た大きな腕が現れる。それにはその腕に見あった岩のハンマーが握られている。
大きく振りかぶり、黒死竜の腹に叩きつける。
黒死竜は少し仰け反るものの、岩の方が砕けてしまった。
「まだ力が足りないか・・・。」
黒死竜は霧を吐き出すのを辞めロキを睨むと、踏み潰さんと急降下する。
ロキも当たりはしなかったものの、いまだに大きなダメージは与えていない。
ロキの視界の端で、何かが光る。その光は黒死竜の真上に上がる。
アルマだ。アルマが拳に魔力を集め、飛んでいた。
「『ディヴァインストライク』!!」
その拳を黒死竜に叩き込む。光がいっそう強くなると同時に衝撃波が生まれる。
黒死竜はその拳により、地面にその身体を埋め込まれる。
《グアァッ!》
黒死竜は少量ながらも黒い血を吐き出した。
ロキは少し驚きの表情をする。
「ふざけた威力だな・・・。」
もし奴と戦うなら、あの拳を警戒しなければなるまい。
と思いながら、黒死竜にダメージを与えられたことに安堵する。
そして、自分の持つ技術でアルマの拳と同じ攻撃力を出せるものを探す。
「ならばこれだな。」
ロキは黒い魔剣を取り出した。自分の身体と同じだけの魔力で魔剣を覆う。
そして、即座に黒死竜へ近づく。いわゆる『縮地』と言う技だ。
その魔剣を振り上げ、黒死竜の腹に叩きつける。
ゴリッと言う音と同時に、その硬い鱗が切断され小さな、とわいえ人間にとっては大きな傷が付き血が飛び散る。
《・・・!グガアアァァ!!》
自分の身体に傷を付けられる剣を目撃し、咄嗟に『叫ぶ』。
ロキは魔剣を盾にして衝撃波を受けるが、威力を殺しきれず黒死竜から離される。
アルマも黒死竜の背中に着地していたが、翼を動かし始めた為地面へと降りる。
黒死竜は尻尾で周囲をなぎ払いながら上昇する。
アルマは『黄金の盾』で無傷で済んだが、一面はミステリーサークルが出来上がっていた。
舞い上がった黒死竜は上昇しながら下にいる二人に向かって『黒い霧』を吐き出していた。
アルマとロキは一緒にその場を離れる。
「アルマ────

次でトドメだ。準備しろ。」

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