天魔界戦

皇神凪斗

第19話 戦士VS魔道士

メルとマルクの戦いになんとかアルマとカイトは駆けつけた。
「言っておくが、一騎打ちを挑んできたのはその女だからな。」
「分かってるさ。だが元々三対一であんたが挑んできたんだ。この状況に文句は無いだろ?」
「問題ない。貴様らはただ一人戦力を減らしただけだからな。」
マルクは杖を構える。それに答えるようにアルマは剣を、カイトは槍を構える。
「「『魔装』!!」」
アルマとカイトの身体を魔力が包む。これで戦闘準備は完了だ。
最初に動いたのはマルクだった。
「『スパイクフィールド』・・・。」
それは地面を針地獄に変える土魔法だ。マルクを中心に前方5m程に渡り走破不可の領域となる。
目的はもちろん二人を近づかせない為だ。遠距離で戦う魔道士にとって近づかれる事はほぼ敗北に等しいからだ。
「なら、『ウォーターボール』!」
アルマの手の上に水色の魔法陣、さらにその上に大きな水の玉が出現する。直径3m程だ。
アルマはそれを針地獄の上に投げる。
そして水風船が割れるがごとく、水が一面に弾ける。
そこでカイトは手を掲げる。
「『氷の風』!」
訓練場に冷たい風が吹く。その風が針地獄を覆う水に触れると、一気に氷へと変える。
針地獄の上に氷の足場が生まれた。
そこでアルマとカイトは突撃を開始する。
しかし、それをただ見ているだけのマルクではない。
「『フレアブレス』・・・!」
赤い魔法陣から生まれたのは業火。
視界を埋め尽くすような炎にアルマとカイトは立ち止まる。
だがすぐに走り出した。マルクの狙いに 気づいたからだ。
この炎はアルマ達の足止めをするだけでなく、当然足元の氷も溶かすのが狙いだろう。
氷の下は針地獄。しかし、戻ったとしても同じことの繰り返し。ここは進むしかない。
「『豪風』!」
アルマは風魔法を発動する。この魔法により生まれた風は炎を押し返す。
アルマとカイトはさらに進む。
「ふむ。『メテオ』・・・。」
マルクが次に発動したのはメルも使った火魔法。炎に包まれた巨大な岩を放つと言う単純で強力な一撃。
この魔法にアルマは舌打ちをする。
水魔法で炎を消そうにも岩が氷を砕く。岩を砕こうが炎が氷を溶かす。
対処法はこの『メテオ』を完全に消滅させるしかない。
────いや、もう一つ。
「『黄金の盾』!」
アルマの左手に大きな魔法の盾が出現する。
「カイト!飛べ!」
カイトは足に魔装を集中させる。よって脚力がさらに上昇する。そして、足元の氷を思い切り蹴る。
続いてアルマも跳躍する。そして黄金の盾をメテオに上から叩きつける。
メテオは見事に氷を砕きその下の針地獄でさえ爆発で半分程平らにしてしまった。
アルマとカイトも爆風にさらされ、さらに上昇。
それが隙を作ってしまった。
「『嵐風槍』!!」
マルクは勝負を決めに来た。防ぐことが困難な風魔法を2つ、アルマとカイトそれぞれに向けて放つ。
そして空中では重力に逆らえず避けることが出来ない。
アルマは黄金の盾で何とか逸らす。カイトは身体を捻るも槍が纏う風で腹を切り裂かれ左肩を少し抉れる。
「カイト!」
「うぐっ!!」
攻撃を喰らい体制を崩した上、後方へ押され針地獄の上に落下する。
咄嗟に槍を突き立てるも、針に足を掠める。
アルマは黄金の盾を削られたものの、安全な地面に着地する。
「大丈夫か!?」
「放っておけ!・・・『アイシクルランス』・・・!」
カイトの手の上に氷の槍が出現する。
それを思い切りマルクへ投擲する。
「『ファイア』」
マルクが小さな火の玉を放つ。それは火魔法の基礎中の基礎である下級な魔法であるが、カイトの『アイシクルランス』を溶かすには充分だった。
「俺はここから援護する。貴様は隙をつくれ。」
「お前・・・。わかった!」
ここに来た時、カイトは協力などしないと言っていた。それが新街で会ったあいつ。
ロキと対峙した事でカイトの中で協力しなければ勝てないのではという『思考』を導いたのだろうか。
カイトが何を思い、何を元に行動をしているのかは分からない。しかし、協力してくれると言うならそれを無下にする理由はない。
「『黄金の剣』!『黄金の盾』!」
アルマは右手に大きな魔法の剣を、左手の魔法の盾を修復する。
そして盾を前にマルクへ突撃。
「うおぉぉぉぉ!!!」
「しつこいぞ!『嵐風槍』!」
マルクも近づけまいと魔法を放つ。風の槍は真っ直ぐアルマへ。
アルマは黄金の盾で受け止める。
物凄い圧力だった。まるで暴風の中で山を登るように、風の槍を受け止めながら進む。
一歩踏み出す度、足が地面に埋まる。黄金の盾が削られる毎に修復を繰り返す。
集中力と根性を試されているような気さえする。
「くっ!『水龍弾』!」
水色の魔法陣より、水で出来た竜の顔。それがアルマへと放たれる。
そして『嵐風槍』に巻き込まれ、風の勢いに流され黄金の盾に直撃する。
元々、かなりの威力を誇る『嵐風槍』に水の重さが加わり、アルマは押し返される。
「こ、んのぉぉぉおお!!」
アルマは右手を振り上げ、斜めに振り下ろす。
巨大な魔力の剣は、黄金の盾と嵐風槍を挟み撃ちにする。
そして、そこに発生した全ての魔法が砕け散る。
「何だと!?俺の魔法と相殺したのか!?」
驚くのもつかの間、マルクは視界の端でこちらに飛んでくるものを確認した。
咄嗟に左に飛びかわす。飛んできた『アイシクルランス』はマルクの右後ろの地面に刺さる。
「余所見すんなよ!!」
マルクは目を前に向ける。何も妨害する物がなくなったアルマは全力でこちらへ向かってきていた。
「馬鹿か!この距離で避けられると思うなよ。『嵐風槍』!!」
あと2m程のところでマルクは風の槍を放つ。近距離で放たれたアルマはまともに喰らってしまう。

────しかし、アルマの姿は『嵐風槍』に触れた瞬間掻き消える。

そして、直後消えたアルマのすぐ横にアルマが出現する。
「『ミラー・ファントム』は光を屈折させる!」
「小癪な!距離を取らなければ・・・。」
そう思い、足に力を込めるが・・・。
動かない。マルクの足は動かなかった。マルクは自分の足元を見る。

凍っていた。足の関節まで完全に凍っていた。
「まさか!さっきの槍は!」
振り返る時間はないが確信した。さっき投擲された『アイシクルランス』を中心にマルクの足元は完全に固まっていた。
「行くぜ!『ディヴァインストライク』!!」
アルマの拳が光り始める。マルクは察した。その拳には相当な魔力が込められている。
これをくらっては行けない。
「『ダークシールド』!」
マルクの目の前に黒い霧のような、しかし確かに触れることの出来る壁が出現する。
闇がその光を吸収し、魔力の壁が拳を防ぐ・・・。
そのうちに足の氷を砕き、嵐風槍を放つ!それで俺の勝ちだ!
マルクは安心していた。既に氷を砕くための魔法を使おうとしていた。
「うおらァ!!」
アルマは思い切り、何の躊躇いもなくその壁を殴る。

その『ダークシールド』は何の抵抗も見せず砕ける。
マルクがそれに気づくよりも早く、アルマの拳がマルクの顔を捉える。

この拳を受けて、
マルクは血を吹きながら吹っ飛んでいった。

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