マルチな才能を発揮してますが、顔出しはNGで
顔を出すの? 出さないの? いえ両方です 2
「わりぃ! 遅れたか!?」
 委員長に別れを告げた後、ガップレの練習と話し合いのため、俺はミュージックハウス水戸のスタジオに来ていた。
「勇志くんお疲れー」
 義也がベースを持った手と反対の手で俺に大きく手を振る。
「今日は音出しが先だって言うから、勇志もギター準備頼む!」「了解」
 真純がドラム越しに俺のギターの位置をスティックを指して教えてくれる。
「今日も風紀委員の手伝いだったんでしょ? お疲れ様、勇志」
 歩美の横を通り過ぎるときに俺の方から声を掛けるつもりだったが、逆に歩美の方から声を掛けられる。
「大したことはしてないよ。所詮、補充要員だし」
『さ、お喋りはその位にして練習始めるわよー』
 スタジオのスピーカーから隣のミキサールームにいる水戸さんの声が聞こえてくる。
 ガラス越しに、真剣にミキサー卓を調整する水戸さんが見え、これから始まる練習にも気合いが入りそうだ。
 素早くエレキギターを取り出し、ケーブルを足元のエフェクターに繋ぐ。
 アンプに電源を入れ真空管に火を入れると、マイクの音量をチェックする。
「キタキタキタキタキターッ!!」「翔ちゃんうるさい、落ち着いて」
 真空管の音を聴くといきなりテンションが上がる翔ちゃんをマイクに声を通して嗜める。
「最初は『wake up in the new world』から準備はいいか?」
 真純がドラムのスティックでカウントを取り、俺はギターを掻き鳴らした。
…
……
…………
「皆んなお疲れ様、今日のはかなり良い感じだったわよ!」
 練習が終わると少し興奮した様子で水戸さんがブースに入ってくる。
 水戸さんの言う通り、今日は全体的に音のバランスが良かったと思う。演奏の回数を重ねる毎にシンクロ率が上がっていってる気がする。
「じゃあ、皆んな座ってー」
 水戸さんに言われた通り、それぞれ楽器を置き、隅のテーブルと椅子が並べてあるところまで移動し、席に座る。
「お待たせしました! Godly Placeの次のライブの予定が決まったので発表しまーす!」
「あれこの前、箱でライブしたばかりじゃないですかー?」
 義也が椅子に座りながら水戸さんに文句を言う。
 確かに最近ライブの回数が増えてきたけど、何か理由でもあるんだろうか?
「そうね、確かに最近ライブや、テレビ出演の回数は多いと思います。でも、それは逆に需要が増えているということなのよ!」
「「はぁ…?」」
 水戸さんのテンションがなかなかに高く、呼吸も荒い。何か良いことがあったんだろうか?
「みんな自分たちがどれだけ凄いか理解してる? ファーストアルバムは大きなライバルがいなかったとはいえ、ランキング1位、シングルを出せば上位トップ3は確実。今やGodly Placeを知らない人はいないと言えるくらいビックバンドなのよ!?」
「「はぁ… 」」
 確かに有名になったなような気がするけど、別に普段からお面被ってるわけじゃないから街中で声を掛けられる何てこともない。だから、別にそんなに有名になったという実感はないな。
「これは本当に凄いことなのよ!? もっと喜んでいいのよ!?」
「わーいわーい」
 義也が両手を挙げて喜ぶ仕草をするが、すごく嘘っぽい。わざとやってんなアイツ。
 まあでも、単純に俺たちの音楽、歩美の歌が世間に認められたということだ、もちろん嬉しい。
 そんなことを考えて視線を歩美の方へ向けると、歩美も俺の方を見ていて目が合う。
 何故か歩美のやつ慌てて視線を逸らして顔を赤くしてたが、ズボンのチャックでも開いてたか? 大丈夫だ、問題ない。
 水戸さんはああ言うけど、根本的に俺たちガップレメンバーには向上心がない。元々、売れたくて作ったバンドじゃなく、歩美の歌を最高の形で人々に届けるためのバンドだからだ。
 つまるところ、忙しいのは嫌なのです、個人的に。
 絶賛売り出し中だか何だかで忙しい日々を送っているが、個人的には3年に1度くらいのペースでアルバムをリリースして、後は1年に2、3回、ライブ出来ればいいんじゃないかと思ってるくらいだ。
 他のメンバーも俺ほどではないが、ここまで忙しなく活動するのを望んでないと思う。
  水戸さんとしてはガンガン売り込んで稼ぎたいんだろうけど、そこら辺はまた皆んなで話し合いをしなきゃな。
 そんな俺たちを見かねてか、水戸さんは溜息を吐いてから話を続ける。
「まあいいわ、ちなみに次のライブは六花大付属高校文化祭に決まりましたー!!」「「「えーーーッ!!!」」」
「あら、そういう反応も出来るんじゃない」
 水戸さんが意外そうな顔をして呟くが、これで驚かない方がおかしい。
「私達の学校でライブするんですか!?」
 皆を代表して歩美がもう一度聞き直す、ひょっとしたら聞き間違いかもしれない。
「そうよ?」「なッ!?」
 聞き間違いじゃなーい! なぜ?WHY?
「ちなみに水戸さん、どうしてそうなったんですか…?」
「もちろん、あなたたちの学校に依頼されたのよ、 生徒会長の九条さんだったかしら? 彼女から直接連絡があってね」
 会長が直々に依頼して来たのか? 理由は? まさか… 俺がガップレのメンバーだってばれたのか!?
「大丈夫よ~、脅しとかそういうんじゃないから」
 水戸さんが俺の顔色を見て、フォローを入れてくれる。どうやら杞憂だったようだ。
「でも、どうして僕たちに依頼を?」
「それね、なんでも九条さん、ドラムのマシュの大ファンだそうよ。筋肉フェチなんですって」
「お前のせいかぁぁあッ、真純ぃいい!!」「え? いやー、参ったなー」
 右手で頭をポリポリ掻いて笑う真純が憎たらしい。女を惑わす無駄な筋肉め、滅びろ!! モテ男はみんな滅びてしまえ!!
「でも、どうして断らなかったんですか? 私達の身元がバレるリスクが大きいのに… 」
 歩美がごもっともな意見を水戸さんに尋ねる。考えればそうだ、水戸さんが依頼された時点で断れば取り越し苦労で済んだのに、なんでまたオッケーしたんだ?
「いやー、それが提示された額が目が飛び出そうなほどでつい… 」
「おい… 」
「流石、でっかい学校の理事長の娘ってだけはあるわよねー!」
 水戸さん、目が泳いでますよー、はあ…金か、やっぱり金か! 嫌だ嫌だ、こんな大人になりたくないよー。
 「やったね真純くん、逆玉じゃん」「え? いやー、参ったなー」
 おいおい、なーに呑気なこと言ってんだよ義也と真純は! もし学校の皆んなにバレたら大騒ぎだぞ!?
「義也… 」「何? 勇志くん」
「お前のブラックコネクションでこの件はなかったことに出来ないか?」
「えぇ!? 出来ない出来ない! いくら僕でも流石に九条先輩は無理だよー」
「そうか… 」
 会長以外だったら何とかなったみたいな口振りだな。義也のブラックネットワークはどれだけ広いんだ?
 いや、余計な詮索はするな! 消されるぞ?
「何か失礼なこと考えてない? 勇志くん」「べッ、別に何も… 」
 こうなれば、真純を直接会長の所にリボンでも付けて送りつけるか… それで学園祭ライブの話はなかったことにしてもらえないだろうか?
「勇志くん? そろそろ私、怒るわよ?」「はい、ごめんなさい! 諦めますッ!」
「よろしい、詳しいタイムスケジュールはまた送ってくれるそうだから、クラスとか部活の出し物がある人はその時間抜けれるようにしておいてね?」
「「「はーい」」」
「翔さんは学園祭はどうしてるんですか?」
 歩美が隣で話の最初からずっと携帯ゲーム機で遊んでいる翔ちゃんがに声をかける。
「そうですな、メイド喫茶とかコスプレ喫茶たる出し物を見に行き、そこで時間を潰しますな。流石に本場には劣りますが、見れないこともないですし、何より席代やチャージ料が取られませんですからな。まぁ僕レベルくらいになりますと足りない部分は脳内で二次元に変換すれば問題ないのですぞ」
「そッ、そうなんですか… 」
 歩美ー、顔引きつってるぞー。
 それにしても、うちの学校の学園祭でライブか… 何事もなく終わればいいけど。
「じゃあ今日はここまで! 気を付けて帰るのよ~!」「「「はーい」」」
 水戸さんの締めの言葉で、今日の練習もお開きになったのだった。
 委員長に別れを告げた後、ガップレの練習と話し合いのため、俺はミュージックハウス水戸のスタジオに来ていた。
「勇志くんお疲れー」
 義也がベースを持った手と反対の手で俺に大きく手を振る。
「今日は音出しが先だって言うから、勇志もギター準備頼む!」「了解」
 真純がドラム越しに俺のギターの位置をスティックを指して教えてくれる。
「今日も風紀委員の手伝いだったんでしょ? お疲れ様、勇志」
 歩美の横を通り過ぎるときに俺の方から声を掛けるつもりだったが、逆に歩美の方から声を掛けられる。
「大したことはしてないよ。所詮、補充要員だし」
『さ、お喋りはその位にして練習始めるわよー』
 スタジオのスピーカーから隣のミキサールームにいる水戸さんの声が聞こえてくる。
 ガラス越しに、真剣にミキサー卓を調整する水戸さんが見え、これから始まる練習にも気合いが入りそうだ。
 素早くエレキギターを取り出し、ケーブルを足元のエフェクターに繋ぐ。
 アンプに電源を入れ真空管に火を入れると、マイクの音量をチェックする。
「キタキタキタキタキターッ!!」「翔ちゃんうるさい、落ち着いて」
 真空管の音を聴くといきなりテンションが上がる翔ちゃんをマイクに声を通して嗜める。
「最初は『wake up in the new world』から準備はいいか?」
 真純がドラムのスティックでカウントを取り、俺はギターを掻き鳴らした。
…
……
…………
「皆んなお疲れ様、今日のはかなり良い感じだったわよ!」
 練習が終わると少し興奮した様子で水戸さんがブースに入ってくる。
 水戸さんの言う通り、今日は全体的に音のバランスが良かったと思う。演奏の回数を重ねる毎にシンクロ率が上がっていってる気がする。
「じゃあ、皆んな座ってー」
 水戸さんに言われた通り、それぞれ楽器を置き、隅のテーブルと椅子が並べてあるところまで移動し、席に座る。
「お待たせしました! Godly Placeの次のライブの予定が決まったので発表しまーす!」
「あれこの前、箱でライブしたばかりじゃないですかー?」
 義也が椅子に座りながら水戸さんに文句を言う。
 確かに最近ライブの回数が増えてきたけど、何か理由でもあるんだろうか?
「そうね、確かに最近ライブや、テレビ出演の回数は多いと思います。でも、それは逆に需要が増えているということなのよ!」
「「はぁ…?」」
 水戸さんのテンションがなかなかに高く、呼吸も荒い。何か良いことがあったんだろうか?
「みんな自分たちがどれだけ凄いか理解してる? ファーストアルバムは大きなライバルがいなかったとはいえ、ランキング1位、シングルを出せば上位トップ3は確実。今やGodly Placeを知らない人はいないと言えるくらいビックバンドなのよ!?」
「「はぁ… 」」
 確かに有名になったなような気がするけど、別に普段からお面被ってるわけじゃないから街中で声を掛けられる何てこともない。だから、別にそんなに有名になったという実感はないな。
「これは本当に凄いことなのよ!? もっと喜んでいいのよ!?」
「わーいわーい」
 義也が両手を挙げて喜ぶ仕草をするが、すごく嘘っぽい。わざとやってんなアイツ。
 まあでも、単純に俺たちの音楽、歩美の歌が世間に認められたということだ、もちろん嬉しい。
 そんなことを考えて視線を歩美の方へ向けると、歩美も俺の方を見ていて目が合う。
 何故か歩美のやつ慌てて視線を逸らして顔を赤くしてたが、ズボンのチャックでも開いてたか? 大丈夫だ、問題ない。
 水戸さんはああ言うけど、根本的に俺たちガップレメンバーには向上心がない。元々、売れたくて作ったバンドじゃなく、歩美の歌を最高の形で人々に届けるためのバンドだからだ。
 つまるところ、忙しいのは嫌なのです、個人的に。
 絶賛売り出し中だか何だかで忙しい日々を送っているが、個人的には3年に1度くらいのペースでアルバムをリリースして、後は1年に2、3回、ライブ出来ればいいんじゃないかと思ってるくらいだ。
 他のメンバーも俺ほどではないが、ここまで忙しなく活動するのを望んでないと思う。
  水戸さんとしてはガンガン売り込んで稼ぎたいんだろうけど、そこら辺はまた皆んなで話し合いをしなきゃな。
 そんな俺たちを見かねてか、水戸さんは溜息を吐いてから話を続ける。
「まあいいわ、ちなみに次のライブは六花大付属高校文化祭に決まりましたー!!」「「「えーーーッ!!!」」」
「あら、そういう反応も出来るんじゃない」
 水戸さんが意外そうな顔をして呟くが、これで驚かない方がおかしい。
「私達の学校でライブするんですか!?」
 皆を代表して歩美がもう一度聞き直す、ひょっとしたら聞き間違いかもしれない。
「そうよ?」「なッ!?」
 聞き間違いじゃなーい! なぜ?WHY?
「ちなみに水戸さん、どうしてそうなったんですか…?」
「もちろん、あなたたちの学校に依頼されたのよ、 生徒会長の九条さんだったかしら? 彼女から直接連絡があってね」
 会長が直々に依頼して来たのか? 理由は? まさか… 俺がガップレのメンバーだってばれたのか!?
「大丈夫よ~、脅しとかそういうんじゃないから」
 水戸さんが俺の顔色を見て、フォローを入れてくれる。どうやら杞憂だったようだ。
「でも、どうして僕たちに依頼を?」
「それね、なんでも九条さん、ドラムのマシュの大ファンだそうよ。筋肉フェチなんですって」
「お前のせいかぁぁあッ、真純ぃいい!!」「え? いやー、参ったなー」
 右手で頭をポリポリ掻いて笑う真純が憎たらしい。女を惑わす無駄な筋肉め、滅びろ!! モテ男はみんな滅びてしまえ!!
「でも、どうして断らなかったんですか? 私達の身元がバレるリスクが大きいのに… 」
 歩美がごもっともな意見を水戸さんに尋ねる。考えればそうだ、水戸さんが依頼された時点で断れば取り越し苦労で済んだのに、なんでまたオッケーしたんだ?
「いやー、それが提示された額が目が飛び出そうなほどでつい… 」
「おい… 」
「流石、でっかい学校の理事長の娘ってだけはあるわよねー!」
 水戸さん、目が泳いでますよー、はあ…金か、やっぱり金か! 嫌だ嫌だ、こんな大人になりたくないよー。
 「やったね真純くん、逆玉じゃん」「え? いやー、参ったなー」
 おいおい、なーに呑気なこと言ってんだよ義也と真純は! もし学校の皆んなにバレたら大騒ぎだぞ!?
「義也… 」「何? 勇志くん」
「お前のブラックコネクションでこの件はなかったことに出来ないか?」
「えぇ!? 出来ない出来ない! いくら僕でも流石に九条先輩は無理だよー」
「そうか… 」
 会長以外だったら何とかなったみたいな口振りだな。義也のブラックネットワークはどれだけ広いんだ?
 いや、余計な詮索はするな! 消されるぞ?
「何か失礼なこと考えてない? 勇志くん」「べッ、別に何も… 」
 こうなれば、真純を直接会長の所にリボンでも付けて送りつけるか… それで学園祭ライブの話はなかったことにしてもらえないだろうか?
「勇志くん? そろそろ私、怒るわよ?」「はい、ごめんなさい! 諦めますッ!」
「よろしい、詳しいタイムスケジュールはまた送ってくれるそうだから、クラスとか部活の出し物がある人はその時間抜けれるようにしておいてね?」
「「「はーい」」」
「翔さんは学園祭はどうしてるんですか?」
 歩美が隣で話の最初からずっと携帯ゲーム機で遊んでいる翔ちゃんがに声をかける。
「そうですな、メイド喫茶とかコスプレ喫茶たる出し物を見に行き、そこで時間を潰しますな。流石に本場には劣りますが、見れないこともないですし、何より席代やチャージ料が取られませんですからな。まぁ僕レベルくらいになりますと足りない部分は脳内で二次元に変換すれば問題ないのですぞ」
「そッ、そうなんですか… 」
 歩美ー、顔引きつってるぞー。
 それにしても、うちの学校の学園祭でライブか… 何事もなく終わればいいけど。
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