マルチな才能を発揮してますが、顔出しはNGで
顔出しNGなのにどうしてモテるのか 8
「ごめんなさい! 深く反省しております!」
 ライブが終わり控え室に戻った俺は、そこで待ち構えていた鬼の形相をした水戸さんに冷たい床の上で正座をさせられ、ただひたすら怒られている最中だった。
 「どうして最後の曲の後にもう1曲演奏するのよ! しかも、やったこともない新しい曲だし? 裏で私もスタッフさんも、皆んな大慌てだったのよ!?」
「本当にご迷惑をおかけして申し訳ございません!」
「他のメンバーも聞いてなかったようだし、すぐに皆んなが上手いことユウに合わせてくれたから良かったけど、もし失敗していたらどうするつもりだったのよ!?」
 「ごめんなさい、本当にごめんなさーいッ!!」
 鬼に変身した水戸さんを前に小細工は効かない! 俺の全身全霊を込めた土下座で鬼の怒りをこれ以上爆発させないようにすることぐらいしか出来ることはない。
「水戸さん! 勇志も反省してますし、これくらいで許してくれませんか…?」
 俺と水戸さんとの間に歩美が割り込み、俺のフォローをしてくれている。
 今の俺には歩美が天使のように見える…ありがたやー、ありがたやー。
 フーッと大きな溜息をついた後、俺と歩美を交互に見ながら呆れた様子で口を開いた。
「わかったわ… 今回はこの辺で許してあげましょう」「ありがとうございまーすッ!!」「で! も! 次やったらどうなるか… わかってるでしょうね…!?」「…はい」
 ギロリと鋭い眼に睨まれて、まるで全身の毛が逆立つような恐怖に震え上がった。
 水戸さん、超恐いよ… マジやべーよ…
「それにしても最後のあの曲、すごく良かったな。よく咄嗟にあんな曲歌えたよな」「私もびっくりした! 勇志、曲が終わったらそのまま歌い出すんだもん」
  真純と歩美が『限りない蒼の世界』の後に歌った曲を褒めてくれる。
 「あれは『限りない蒼の世界』のアンサーソングですな?」
 と、翔ちゃんがドヤ顔で話してくる。
「まあ、そうなるのかな… 何か、あの曲を歌ってたら、自然と思い浮かんだというか… 」
「このままあの曲を埋もれさせてしまうのは勿体無いわね… 」
  水戸さんが自分の口元に手を置き、真剣な顔で話している。
「それなら次のスタジオ練習で仮録音したらどうかな?」
 義也も水戸さんと同じ意見なのか、サクッと解決案を提示する。
「じゃあ各自、次の練習までに自分のパート考えておこうか」
「私、あの曲は勇志のボーカルとピアノメインのアレンジがいいと思う!」
「じゃあ僕はウッドベースとか弾いてみようかなー」
「流石にあの曲に僕の超絶早弾きギターは合わないですな、何か違うアプローチでいくのですぞ」
 当の本人を置き去りにして、メンバーの間で新曲の話がどんどん先に進んでいるが、まあいいだろう。
 最近はライブ続きで新曲なんて考える余裕もなかったから、久々にこうしてメンバー同士、お互い意見を言い合ってより良い曲を作り上げようとする雰囲気が少し懐かしい気がした。
「それで新曲のタイトルはどうするの?」
 そう歩美に聞かれるまで、曲のタイトルのことなどすっぽり頭から抜け落ちていた。
「えーと、じゃあー… 『IN』っていうのはどうかな?」
 まあ自分なりの解釈で、あのアニメでお馴染みの蒼い世界は、主人公たちの心の中の世界だ。
 そこで自分自身の心と対話し、重荷を委ね、そして成長する。
 だいたいのアニメだと、その世界へ行った後に潜在能力が覚醒して滅茶苦茶強くなると相場が決まっているのだ。
「… いいんじゃないか?」「異議なし」「僕もですぞ」
「じゃあ新曲のタイトルは『IN』で決定!!」
 おお! 珍しくすんなり決まったぞ。そういう時もあるんだなー…
「はいはい! では、話もまとまったところで、この後すぐサイン会よ! 皆んな準備してー!」
 水戸さんに言われて、メンバーが一斉に準備を始める。
 俺も身支度を整えていると、何か大事なことを忘れている気がして手が止まる。
 「あッ!」
 しまった、立花のことをすっかり忘れてた!!
 その後、急いで客席に向かったが、立花は既にサイン会の会場に移動した後だった。
 ライブが終わり控え室に戻った俺は、そこで待ち構えていた鬼の形相をした水戸さんに冷たい床の上で正座をさせられ、ただひたすら怒られている最中だった。
 「どうして最後の曲の後にもう1曲演奏するのよ! しかも、やったこともない新しい曲だし? 裏で私もスタッフさんも、皆んな大慌てだったのよ!?」
「本当にご迷惑をおかけして申し訳ございません!」
「他のメンバーも聞いてなかったようだし、すぐに皆んなが上手いことユウに合わせてくれたから良かったけど、もし失敗していたらどうするつもりだったのよ!?」
 「ごめんなさい、本当にごめんなさーいッ!!」
 鬼に変身した水戸さんを前に小細工は効かない! 俺の全身全霊を込めた土下座で鬼の怒りをこれ以上爆発させないようにすることぐらいしか出来ることはない。
「水戸さん! 勇志も反省してますし、これくらいで許してくれませんか…?」
 俺と水戸さんとの間に歩美が割り込み、俺のフォローをしてくれている。
 今の俺には歩美が天使のように見える…ありがたやー、ありがたやー。
 フーッと大きな溜息をついた後、俺と歩美を交互に見ながら呆れた様子で口を開いた。
「わかったわ… 今回はこの辺で許してあげましょう」「ありがとうございまーすッ!!」「で! も! 次やったらどうなるか… わかってるでしょうね…!?」「…はい」
 ギロリと鋭い眼に睨まれて、まるで全身の毛が逆立つような恐怖に震え上がった。
 水戸さん、超恐いよ… マジやべーよ…
「それにしても最後のあの曲、すごく良かったな。よく咄嗟にあんな曲歌えたよな」「私もびっくりした! 勇志、曲が終わったらそのまま歌い出すんだもん」
  真純と歩美が『限りない蒼の世界』の後に歌った曲を褒めてくれる。
 「あれは『限りない蒼の世界』のアンサーソングですな?」
 と、翔ちゃんがドヤ顔で話してくる。
「まあ、そうなるのかな… 何か、あの曲を歌ってたら、自然と思い浮かんだというか… 」
「このままあの曲を埋もれさせてしまうのは勿体無いわね… 」
  水戸さんが自分の口元に手を置き、真剣な顔で話している。
「それなら次のスタジオ練習で仮録音したらどうかな?」
 義也も水戸さんと同じ意見なのか、サクッと解決案を提示する。
「じゃあ各自、次の練習までに自分のパート考えておこうか」
「私、あの曲は勇志のボーカルとピアノメインのアレンジがいいと思う!」
「じゃあ僕はウッドベースとか弾いてみようかなー」
「流石にあの曲に僕の超絶早弾きギターは合わないですな、何か違うアプローチでいくのですぞ」
 当の本人を置き去りにして、メンバーの間で新曲の話がどんどん先に進んでいるが、まあいいだろう。
 最近はライブ続きで新曲なんて考える余裕もなかったから、久々にこうしてメンバー同士、お互い意見を言い合ってより良い曲を作り上げようとする雰囲気が少し懐かしい気がした。
「それで新曲のタイトルはどうするの?」
 そう歩美に聞かれるまで、曲のタイトルのことなどすっぽり頭から抜け落ちていた。
「えーと、じゃあー… 『IN』っていうのはどうかな?」
 まあ自分なりの解釈で、あのアニメでお馴染みの蒼い世界は、主人公たちの心の中の世界だ。
 そこで自分自身の心と対話し、重荷を委ね、そして成長する。
 だいたいのアニメだと、その世界へ行った後に潜在能力が覚醒して滅茶苦茶強くなると相場が決まっているのだ。
「… いいんじゃないか?」「異議なし」「僕もですぞ」
「じゃあ新曲のタイトルは『IN』で決定!!」
 おお! 珍しくすんなり決まったぞ。そういう時もあるんだなー…
「はいはい! では、話もまとまったところで、この後すぐサイン会よ! 皆んな準備してー!」
 水戸さんに言われて、メンバーが一斉に準備を始める。
 俺も身支度を整えていると、何か大事なことを忘れている気がして手が止まる。
 「あッ!」
 しまった、立花のことをすっかり忘れてた!!
 その後、急いで客席に向かったが、立花は既にサイン会の会場に移動した後だった。
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