序に転移させられたらしいんだがキレていいか?

ヒラチカ

プロローグ(B)


「本日は時間をとって頂き本当にありがとうございました。」

若い女性記者はそう言うと一礼し、道場を出て行った。顧問の先生もそれに対するように軽く会釈してその姿を見送る。

場所は体育館の一室、剣道場。床一面、
ニスの塗られた板張りでそこを裸足で行き来する部員たちは見てるだけでこっちが寒くなる。今日の練習はもう既に終了し、生徒たちは各々の道着を片しながら適当に話している。

「今月でもう何回目の取材だ?流石全国優勝者は違うなー?」

部員の1人が記者を見送った後そう小突いてくる。それを意にも介していない素振りで朝井奏多は淡々と自分の荷造りを進める。

「…」

「なんだよ奏多ー、だんまりですかー?」

一向に答える気配がない奏多に部員のその1人は顔を覗き込みながら詰問する。せっせと荷造りする奏多と目が合った。

「…?、どうした?」

すると奏多は不思議そうにこちらに質問し返してきた。

「…おい、また別のこと考えてたろー」

半分呆れたように笑う。

「悪い。別のことを考えていた。」

悪びれることもなくクソ真面目に謝意を述べる。いつものことだ。

「いいよ別に。さっさと片付けて帰ろうぜ」

そう言ってその部員は残りの荷物をカバンの中に半ば無理矢理に押し込む。

「いや、ちょっと寄るところがある。悪いが先に帰っててくれ。」

そう言うと、一足先に荷物をまとめ終えた奏多はすっと立ち上がって、その大きなカバンをヒョイと肩にかけた。

「?、なんか用事か?珍しいな。」

「ああ、図書室に借りてた本を返しに行く。時間も時間だし、返せなかったら職員室まで寄るから遅くなるかもしれん。だから先帰っててくれ。」

そう言いつつ足は既に出口に向かう。部活終了と図書室の閉まる時間は同じである。急がないと間に合わない。

「おっけー、大人しく一人で帰るわ。お疲れー」

「ああ、、悪いな。」

その友の言葉を背に奏多は剣道場を後にした。

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