りんご

蜘蛛星

協奏

「なんで逃げるんですか!」
「いやあああああ!こないでえええ!」
「僕はこんなに愛しているのに!」
「私は愛していないわ!それに私たちは敵国の者同士、絶対に結ばれてはいけないのです!」
「っていう冗談はいいですからほんと止まってくださいって!」

体力のない先輩なら余裕で撒けるだろうと考えていたが、予想以上にこの状況が楽しくなってしまった。走り疲れて歩き始めた先輩を待つ始末。

「なんで、逃げたん、ですか、?」
先輩が辛そうなので、公園に来てみた。私も体力がある方ではないので、少し息が上がってしまった。先輩は乱れた息を整えながらベンチに倒れ込む。すぐ横の自販機でコーヒーを買って渡してあげた。
「つめた〜い、はあ。」
本格的に横になった先輩は、コーヒーの缶を首元に当てて涼を取っている。ぬるくなるな、あれ。
「ユキさん。」
「はい。」
「もう一度聞きます、なんで逃げたんですか?」
寝そべりながら、赤みが残る顔を立ったままの私に向けてくる。
「とりあえず座らせてくれません?」

私はソーダを飲みながら、拙い言葉で思いを告げた。どうしてあの時あんなに怒ったのかわからないこと、その後どうしていいか分からなくなったこと、考えるのを放棄したくて今回逃げたこと。
「ほんと、すみません。部活も休んでしまって。」
先輩は少しぬるくなったコーヒーを飲みほして、突然立ち上がった。

「全部許します。が、どうして怒ったのかはユキさんが自分で知る必要がありますね。」

投げた空き缶はゴミ箱の角に当たり、相変わらず格好悪い先輩はそれを拾いに行った。

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