ファントムペイン

葉月 飛鳥

第4話


(ここが、用紙に書いてあった場所だ・・。)

駅から徒歩、数十分・・・。
50階はありそうな高層ビル。
今、その入口の前に立っている。
念の為、コンクリート製の柱に設置してある看板の会社名を確認する。

『国立現象科学株式会社』

この会社で間違いない。
それに周りを見渡すと、僕と同じように、この建物に入っている人達がぞろぞろいる
良くみてみると真新しスーツを着た男女がちらほら見える。

『国立現象科学株式会社』
世界中でまだ解明されていない現象の調査、また画期的な発明をこの世に出してきた大企業。
日本語だと堅苦しいように感じるが、インターネットでこの会社を検索するとフィノメノン ・サイエンス ・カンパニーという表記になる。
会社名をどっちで言えばいいのか、面接の時に聞けば良かったのかなと思ったが、失礼になりそうなので止めてしまった。
僕は横文字が苦手なので、国立現象科学株式会社と呼ぶようにしている。

「お前も新人?」
「はぃ?」

用紙に記載してある会場に向かっている最中、いきなり後ろからバンッと背中を叩かれ、痛いと思いながら振り向くと、僕と同じように真新し紺色のスーツを着た青年が立っていた。

「あー。急にごめんな。俺、用紙を忘れてよー。できれば連れてってほしいんだけど、だめか?」
「いいけど・・・。」
「えっ!まじ!やったー!!俺、磯山 宗二(いそやま そうじ)って言うんだ、お前は?」  
「望月 アオイ。」

同じ紺色のスーツを来ているのに、僕とは雰囲気が全然違う。
僕は、小学生から変わらないショートカットの髪型。
髪の色も真っ黒で、今まで染めたこともない。
それに凄く遠視で分厚いレンズの黒縁メガネをかけていて、いかにも典型的な地味な男だ。
反対にこの男は、サイドをツーブロックですっきりさせたベリーショート。
髪色も茶色に染めている感じだ。

「アオイねぇー。なぁ、アオイって呼んでいいか?俺のことは宗二って呼んでもいいからさ。なっ!なっ!」

そして、性格も少し強引。

「べ・・・別にいいけど」
「やっりぃ!じゃあ、早くいこうぜ!」

ーーーーグィ

「わっっ・・ちょっと。」

宗二に左腕を捕まれ、そのままグイグイと引っ張られながら、会場へと進んでいく。
急に引っ張られたせいで足が少しもたついて、転びそうになるが、なんとか持ちこたえた。
転けないで、良かった。
入社早々、泥だらけのスーツで迎えたくはない。

「ここだ、ここだ。って、スゲーなここも。」
(確かに・・・。)

宗二と2人で会場に入ると、何から何まで豪華としか言えなかった。
先ず、目にいったのは建物。
僕と同じ新入社員の数も多いのだが、それをこの一部屋で収まるほどの部屋が広いのだ。
それに、会場の中には入社式とは思えないと言うべきなのか、飲み物と食べ物が置かれている。
もうこれは、入社式ではない。
ちょっとしたパーティーだ。
本当にここで合ってきるのだろうか。

「えっと・・・・。」
「望月 アオイ様と磯山 宗二様でございますね。」
「・・はい。」
「・・・おう。」
「この度は、我が国立現象科学株式会社の入社おめでとうございます。わたくしは執事タイプNo,1と申します。まだ時間がありますので、ごゆるりとお待ちくださいませ。」
「ロ・・・ロボット??」
「いえ、アンドロイドです。」
「どー違うんだよ!お前!」
(人間じゃなかったのか・・・。)

でも、見た目は普通にホテルスタッフのような出で立ちだ。
テレビとかで見るような黒の燕尾服。
シミ1つない白いシャツ。
落ちついた灰色の色をしたネクタイ。
他にいるスタッフだって、そんなに変わらないし、これらがアンドロイドだなんて言われてなきゃわからないレベル。
表情だって僕よりも豊かだ。

「それよりもアオイ。」
「なに?」
「今年の新人って凄くね?ちょっと見てみろよ。」
「凄い人ばっかしなの??」
「ばっかしなのって・・・。はぁー。」
「???」

宗二がため息を吐きながら、ガックリと肩を落とした。
何故、ため息をつかれたのかわからない。
なにかしただろうか。
・・・うん、思い付かない。

「よし!わかった!」
(何がわかった??)

落ち込んだと思ったら、今度は急にやる気が満ちたような雰囲気になった。

ーーーービシッ

「アオイ!このオレサマが説明してやろう。とくと聞けよ!」
「・・・・・・はぁ。」

宗二のテンションの高さに、たじたじになってしまった。

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