人類滅亡と水の国

結城成藍

 飼っている犬が、こちらを見て言った犬が喋るなんて……いや、先程まで海で魚と会話をしていたのだが。これは、夢か。

「夢ではありませんよ! これはボクがあなたを慕っている証拠です。ボクには、あなたが求めているものを差し上げることができますからね」

 理解のできないことばかりを言う犬に首をかしげて外へ出た。めちゃくちゃ呼び止められたが、これ以上犬と話していては夢が醒めない。

「あぁ、こちらの息子さんですか。つい最近越してきた要崎と言います。しばらく留守にされていたようで。よろしくお願いします」

 隣の家から出てきた見知らぬおじさんが話しかけてきた。名前を言って挨拶をするとにっこりとした柔らかい表情で「どうもどうも」と言った。
 
 しばらく街を歩いて家に帰ると、犬がワンッと出迎えた。やはり動物の声が聞こえるなどということは夢だったのだ。
 そう思うと、魚を、つい先程まで話していた物を口に入れても何も思わなかった。それどころか久しぶりに海藻類以外の物を食べたことに感動を覚えた。
 

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