人類滅亡と水の国

結城成藍

IV

「お前の言うことも分かるがね。このニンゲンって生き物は、サメなんかにでも合わない限り何かに食べられることはないんだよ。お前はもう少し勉強しないといけない。ニンゲンは我々と違って捕食者だ」

 そう言って魚に説教をするのは、ここら辺では一番の物知りの海老である。
 ここへ来てはじめに溺れかけた時、酸素の吸い方を教えてくれたのはこの海老だ。

「でもさ、このヒトは僕らを食べないよ」

 お腹が空いた時、口にするのは海藻類だ。生き物は喋る。同じ言葉を喋るものはどうにも食べる気にならなかった。
 そんなことよりも、魚や海老に水面の場所を聞きたかった。
 
 水面を探せばきっと酸素を吸うことが出来るが、水面を探す暇などなかったからだ。
 水中の酸素は少ない。生きていくためには、必死に探し続けなければならない。酸素をタンクに詰めてみても、それではほとんど無いのと同じであった。

「文学」の人気作品

コメント

コメントを書く