人類滅亡と水の国

結城成藍

魚達はいつも、聞いてもいないことを話してはふっと姿を消していく。聞きたいことを聞きもしないままに。

「いやね、キミはいつも、空ばかり見ているだろう? 空に行ってみたいのかと思って」

 頷くと、魚は、その場をぐるぐると回った。

「僕は行きたいとは思わないね。だって鳥がいるだろ。前に仲間が水面に近付いた時に食べられたんだ。僕は命からがら逃れたけどさ、あんなのもう二度と経験したくないね」

 鳥に食べられる、なんてこと、自分の身に置き換えては考えられない。例え大きな鳥に狙われることが万が一あったとして、なんて、そんなかもしれないを恐れるよりも、今目の前に酸素がないことの方が怖い。


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