君なんてダイキライ!

那月 綾

知らない記憶

 私は夢の続きを見るかのように真っ暗な空間にいた。
 
  ザアアアアア…

雨が落ちる音…
そう…
あの日は、雨が降っていた。まるでテレビが壊れるような雑音だった。
 私はおばあちゃんに無理を言って雨の中、公園に行った。
「…おばあちゃん!早く早く!!アハハハハハッ!」
 私は夢中だった。…いや、夢中になりすぎた…。
「…お嬢ちゃん…さぁ、おじさんと一緒に行こう…」
 「…え…?」
私は、知らないおじさんに連れていかれた…どこへ行くのか分からないまま…
私はその頃は、何も分からなかった。感情なんてものは…
「春香をかえして!」
(…??おばあちゃん?…私、何かしたの?)
私がそう思った時、おじさんは、「邪魔だ!クソババア!」と言い、黒い何かを取り出した…。
取り出したのは拳銃だった。私は知らないまま、ただ、じっと、おばあちゃんの顔を見ていた。おばあちゃんは、どんな顔をしていたんだっけ?…あー、また、忘れちゃった…。

     バァンッ

「…お、ばあちゃん…?」
私の目の前で、おばあちゃんは倒れた…
血を……流しながら……。
私は、何もできなかった。いや、何が起こったかも分からなかった。
…おばあちゃんはピクリとも動かない。
まるで、人形になったかのように…
私は、おばあちゃんを撃った人の顔を覚えていない。
いや、自分から消したんだ…この、記憶ごと…

   でも、どうして、今になって…

そうだ…私は…おばあちゃんを殺したんだ…私があんなことを…わがままなお願いをしたせいだ…
あんなことを言わなければ…

あー、…私が殺したんだ…

    ごめんね…おばあちゃん…
ーーーーーーーーーーーーーーーー

「…あ、……ようやく起きたね…秋山さん」
 目の前には、知らない、人がいた。
「あ、の?」
「あれ?…覚えてない?…体育の時、君、倒れたんだよ?」
(そうだっけ?…)
姿、形を見るからにして、保健室の先生っぽい…
「…そう警戒しないで?…俺は保健室の先生をしている、青柳 瑛(あおやぎ あきら)…宜しくね?」
「…ど、どうも…」
 この人は、馴れ馴れしくて嫌いだ。
「…あ、…そう言えば、君、うなされてたけど…なんか、悪い夢を見てた?」

              ゾクッ

また、あの時みたいな…気持ち悪さが来る。この感情はなんだ?
(わ、…からない…………………………わからないわからない分からないっ!)
「はあはぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
私は思い出したくない事を思い出しそうで…嫌だった。そして、息が荒くなり自分でも分からない何かが来る…そんな私を先生は見ているが、話は続いた…
(どうして?…)
「…どんな夢を見たの?秋山さん?」
先生の顔を見ると、先生の目は暗く何を考えているのか分からない…
先生は私に近寄ってくる。私は後ずさりをする。まるで逃げるかのように…
「…ねえ、教えてよ…どんな、ユメを見たの?」

          ザアアアアア…

また、あの夢のように、雑音が聞こえる。
『…サァ、オイデ?』
「…ナニ?…」
私は、頭に出てくる映像がなんだか、分からず、よろめいた。
ガタッ
「っ…!」
『…オイデ?』

        ザアアアアア…

「…ナニ?これ?…知らない…こんな記憶………………私は……………知らない!!!」

         ザアアアアア…

わたしは頭が混乱し暴れた…。
「私は!わたしは!」
先生は暴れている私の両腕をとり、顔を近づけた。
「わたしは?……何?言ってご覧?本当の事を?」

  先生の顔はどこか楽しそうで…不気味な笑みをして、私の目を見た…
(私は……わたしは!!)
「なんで…生きてるの?」
私は、絶望しかなかった。こんな感情は初めてだ……この感情は…

                     恐怖…

私はそう思った時、突然、時が止まったかのように、少年の声が聞こえた。
『君は、この記憶を思い出すのには、まだ早い…』
私は、この声を知っている…でも思い出せない…
(きみは?…)
『だから、ごめんなさい…また眠ってね?』


待って…一つだけ…

君に言いたい…




  あなたは誰?







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