幻想郷虚無異変

まったり

幻想郷虚無異変5話「記憶の扉」

コツコツコツコツ

静かな廊下に足音が響く。

ハヤテ「咲夜さん、質問いいですか?」

咲夜「なんでしょうか?」

ハヤテ「紅魔館に入って五分ほど歩きましたが、部屋の量多すぎませんか?ここって西館ですよね?外から見た感じだと10部屋くらいなはずなのになぜここまで多いんですか?」

紅魔館は3つの館が繋がって出来ている、本館は吹き抜けのエントランスのみで、1階の扉か2階の階段で西館と東館に行けるようになっている、西館は食堂や執務室や図書館行きの階段があり、東館は紅魔館組の自室や客人が泊まる部屋などのプライベートルームになっている。

咲夜「なるほど、確かに始めてここに来る人は不思議に思うでしょう、紅魔館にはパチュリー様という魔法使いがいます、パチュリー様の魔法で紅魔館内部の空間をいじってあります」

ハヤテ「なるほど、だから外の見た目と中の広さが違うんですね」

咲夜「その通りです、さて着きましたよ」

そう言って咲夜が止まった、俺たちの目の前には紅魔館の入り口に使われていた両開きの扉があった。

ギィー

扉は音を立てて開いていく。

ガコン!!

扉が開ききった先には階段があった。

咲夜「この先の地下は図書館です、あまり騒がずにお願いします」

ハヤテ、影狼「わかりました」

コツコツ

階段を降りていったその先には、また、両開きの扉があった。

キィ

先ほどの扉よりか静かな音を立てて扉が開いていった。

ハヤテ「うそん」

影狼「わぁ」

扉が開ききった先にあったのは天井まで届く本棚が大量にある図書館だった。

ハヤテ「これ、全部で何冊あるんだよ、、」

そんな事を独り言のように呟いた。

咲夜「1つの本棚に魔導書が250冊入ります、現在ある本棚の数は1万個ありますので250万冊程でございます、ただ、年を重ねるごとに増えております」

ハヤテ「250万ってえげつねぇ、多いってレベルじゃねぞ」

咲夜「パチュリー様の所へご案内いたします」

本棚の間を歩いていくと本を読むための長机がある場所についたその一番奥のデスクに人が座っていた、どうやらなにかの本を読んでいるようだ。

ハヤテ「誰だありゃ?」

影狼「あの、本を読んでる人が「動かない大図書館」って呼ばれているパチュリー・ノーレッジね、私も噂しか聞いたことがないんだけど喘息でろくに動けないから皆んなには「動けない大図書館」って呼ばれてる」

ハヤテ「動かない大図書館ね、、、」

咲夜「パチュリー様読書中に失礼いたします」

咲夜に言われてパチュリーと呼ばれた人は顔を上げた、髪は紫色で全体的に痩せてて、10代のような顔をしていた。

ハヤテ「なんか、魔法使いっていうからてっきりヨボヨボな人かと思ったら案外幼いな」

影狼「ハヤテ、、流石にそれはだめだよ、、、一応、女子なんだよ?」

ハヤテ「実際10代に見えるしな」

影狼「あーっと、あの見た目で100歳を超えてるらしいんだ」

ハヤテ「ま、まじかよ」

影狼「魔法使いは特殊で歳をとっても見た目が変わらないの」

ハヤテ「へぇー」

パチュリー「そこの2人うるさい、少し静かにして、それで?なんのようなの?咲夜」

咲夜「はい、読書中に失礼いたします、そこにいる2人が調べ物をしたいらしくて、この図書館の本を貸していただいてもよろしいでしょうか?」

パチュリー「構わないわよ、本を傷つけたり、図書館から持ち出しさえしなければ、まぁ、仮に持ち出しされても、自動でこちらに戻って来る魔法がかけてあるから問題はないのだけれどね」

ハヤテ、影狼「ありがとうございます」

パチュリー「あら?これは懐かしい人を連れてきたわね」

ハヤテ、影狼、咲夜「?」

3人は首を傾げた。

パチュリー「貴方のことよ、ハヤテ、いいえ、「無限の魔術師」のjokerと呼んだ方がいいかしら?」

ハヤテ「無限の魔術師?joker?なんつー痛々しい名前だよ」

パチュリー「そう、記憶がないのね、だったら、これを使いなさい」

そう言ってパチュリーはデスクの引き出しから鍵付き鎖がかかった本を取り出した。

ハヤテ「なんですか?これは?」

パチュリー「八雲紫が禁術に指定して回収した本よ」

ハヤテ「禁術ですか?しかしなんで回収された本がここに?」

パチュリー「八雲紫が持ってきたのよ」

ハヤテ「紫さんが?」

パチュリー「そう、あなたに出来る限り協力してほしいってね」 

ハヤテ「そうですか、それでこの本は?」
 
パチュリー「記憶を取り戻せる本よ」

ハヤテ「え?これを使えば記憶が戻るんですか?でも、ただ記憶が戻るだけならなんで禁術になんかに指定されてるんですか?」

パチュリー「戻るって保証はないはよ、この本はあくまでも記憶に干渉して思い出させるキッカケを与えるだけ、それにこれは本を使っている時は自分の心の闇と向き合うことになる」

ハヤテ「心の闇?」

パチュリー「ええ、どんな人間にも必ず存在するのが心の闇ね」

ハヤテ「心の闇って人それぞれで違うんですか?」

パチュリー「違うわね、心の闇とは人が何かを憎んだり妬んだりする事を繰り返して行って蓄積されていくものだから、人それぞれに考えるこ事は違うでしょ?」

ハヤテ「それで、心の闇と向き合う事が何が危険なんですか?」

パチュリー「心の闇と向き合うという事は逆に闇に引き込まれてその人物の人格が消滅してしまう恐れがあるからね、昔はよく気に入らない奴に送って、そいつの人格を消す事が流行ったから禁術に指定されたのよ」

ハヤテ「なるほどね、、、しかし、なんでそんな危険な物まで使って俺の記憶を?紫さんなら能力で俺の記憶いじれるんじゃないんですか?」

パチュリー「あなたの能力は紫でも干渉が不可能みたいなの、そりゃそうよね、あんなチート能力だとね、、」

ハヤテ「そ、そんなにチートなんですか?俺の能力って」

パチュリー「ええ、咲夜はハヤテが幻想郷にいた頃は紅魔館にいなかったから知らないだろうから、ついでに聞いていってちょうだい」

咲夜「わかりました」

パチュリー「10年前に私達紅魔館組は幻想郷入りしたの、その時にレミィが幻想郷を支配しようとか言い出して、幻想郷の政策に不満を持ってる妖怪たちを配下に引き入れて異変を起こしたのよ」

咲夜「それが、あの先代巫女が亡くなった大異変ですか?」

パチュリー「ええ、そうよ、あの大異変で多くの人間や妖怪が犠牲になったのよ」

影狼「っ!!」

その言葉を聞いて影狼は顔をしかめた。

ハヤテ「どうしたんだ?影狼」

影狼「今パチュリーさんが言ったでしょ、多くの妖怪が犠牲になったって、その中に私の両親も含まれているの」

ハヤテ「え?」

パチュリー「正直、あの頃の私たちはどうかしてたと思う、人里が崩壊しかけて、人間達はもう駄目だと思ったと聞くは、そこにfhantomと名乗る4人組が現れてその能力で妖怪たちを殲滅して行った」

ハヤテ「fhantom(ファントム)ってどこぞの戦隊モノじゃないんだから」

影狼「ファントムって?」

ハヤテ「簡単に言えば、亡霊や幽霊っていう意味だな」

影狼「ぼ、亡霊か、私そういう系苦手だよ」

ハヤテ「俺もだよ」

パチュリー「話を進めてもいいかしら?」

ハヤテ「ん?ああ、すまん、続けてくれ」

パチュリー「当然ながら私達も妖怪を殲滅する人間に興味を抱いて戦いを挑んだは」

咲夜「結果はどうかったんですか?勝ったんですよね?」

パチュリー「結果は惨敗よ、4人の内の1人にもダメージを与える事が出来なかった、私達は全力で攻撃したのに彼にとってはどうとも思わなかったんでしょうね、その4人の内の1人があなたよ、ハヤテ」

ハヤテ「そう、ですか、、だから皆んな俺を知っていたのか」

パチュリー「ハヤテ本を開けるならこれを」 

そう言ってパチュリーが渡したのは銀色の鍵だった。

ハヤテ「なんですか?これ?」

パチュリー「この本の鍵よ、この本はこの鍵じゃなければ開閉できない、それにこの本は開けると本を開けた本人を本の世界に閉じ込めて心の闇を克服するまで出てこれないようになってるは」

ハヤテ「つまり、これを開けたら俺は自分の心と真っ向から向き合わなければならないってわけですね」

パチュリー「ええ、そうなるはね、そしてこの本は閉じ込めた本人が1日以内に出てこなった場合本の世界にその魂が強制的に永久封印されるは、だからタイムリミットは1日ね」

ハヤテ「闇を克服しなきゃ出れないプラス、時間制限もあるのかよ、これ、本当に記憶戻るの?」

パチュリー「あなたの記憶喪失は能力が失われた副作用によるもの、だから、能力が戻れば記憶も戻るはよ」

ハヤテ「あー、記憶と能力がリンクしてるって考えか」

パチュリー「そうね、さっきも言ったけど、これはあくまでも能力を思い出させるキッカケを与えるだけ、この本の試練をクリアしても能力が戻るわけじゃないわよ」

ハヤテ「そう、ですか」

影狼「ハヤテ、、、」

影狼が心配そうな顔で聞いた。

ハヤテ「んまぁ、気にしてもきりがないから、さっさと終わらせますかね」

と、どこか楽しそうに言った。

影狼「なん、で?」

ハヤテ「影狼?」

影狼「なんであなたはいつもそうなの!!」

ハヤテ「いや、意味がわからん」

正直俺は驚いた、あんなに感情を荒げる事はなかった影狼がここまで感情的になったのを初めてみたのだ。

影狼「あの時だって、そうだよ!!みんなあなたたちのおかげで助かったのに、そんな人を危険人物として追放するんだから!!なぜあなたはもっと自分のことを考えないの!!」

ハヤテ「うーん、その部分の記憶がないからなんとも言えないが多分自分は本当にやりたいことだったからやったんじゃないか?」

影狼「追放されるのが、やりたかった事なの?そんなの間違ってるよ!!」

ハヤテ「間違ってるか間違ってないかは人それぞれだから、わからないけど村人たちは自分が危険だと思ったから追放すればいいと考えた、それに対して自分は自分自身が危険だと分かっていたから追放されたとかそんな感じだろうな」

影狼「・・・・」

影狼(彼らが異変のうらみを全て引き受けてくれたことは自分でもわかっているよ、でも、なんで怒りがこみ上げてくるの?)

ハヤテ「まぁ、これ以上話していても時間の無駄だし、さっさと開けますかね」

ガッカッガッ

鍵を鍵穴にさして回しても開かずに鍵がどこかに引っかかったような抵抗感がうまれた。

ハヤテ「ありゃ、開かない」

パチュリー「言い忘れていたことがあったわね」

ハヤテ「へ?」

パチュリー「その本は使う者が1人で部屋にいないと開かないの」

ハヤテ「つまり?」

パチュリー「咲夜、影狼、図書館の外に出ましょう、あと咲夜」

咲夜「はい、なんでしょう?」

パチュリー「外でお茶がしたいは、影狼も一緒に来なさい」

咲夜「わかりました、すぐに用意をいたします」

影狼「ちょ、ちょっと待ってよ、私は、、、」

パチュリー「私達はこの状況じゃあ邪魔なだけなのよ、ここにいても彼は試練を挑戦できない、それにあなたとは少し話がしたいの」

影狼「わ、わかった」

そう言って3人は図書館から出て行った。

シーン

図書館が静寂に包まれた。

ハヤテ「んじゃ、始めますか」

銀色の鍵を本にさし左に回した。

ガチャ!!

鎖が外れた。

鎖が外れた本を開く。

ブワッ!!

本を開いたら本から闇が溢れ出てきた。

ハヤテ「うぉ!!」

図書館が本から溢れ出てきた闇に包まれた。

〜紅魔館テラス〜

咲夜「おまたせしました、ハーブティーとマカロンでございます」

そう言って咲夜は2人の前にマカロンがのせられた大皿とティーカップを置いた。

影狼「あ、ありがとうございます」

パチュリー「ありがとう」

カチャ

紅茶のカップが傾く音が静かなテラスに響いた。

カチャ

パチュリーはカップの中の紅茶を半分ほど飲んでから本題を切り出した。

パチュリー「それで、影狼あなた過去に何があったの?」

影狼「・・・・」

パチュリー「今更だけど、あなたに謝っておくわよ、でも、謝っても許されることじゃないわね、一人の命ならともかく私達は多くの妖怪を先導して多くの命を殺めた罪は消えることはない、だけど、私達は先に進むはどれだけ言われようともね」

影狼「別に今更ですよ、、特に気にはしてません、人にはそれぞれ考え方があるんですから、あなたたちはその時に自分たちが正しいと思ったことをやっただけですよ」

パチュリー「そう、ありがとう」

影狼「別に謝られることじゃないですから」

パチュリー(強いわね、あなたは、私達じゃ無理だもの自分の家族を間接的にとはいえ殺した人を許すなんて)

影狼「それに私の過去を話そうにも10年前の事なのにまだ、自分の中で整理できていないんです、パチュリーさん、すみませんが私の過去はいずれ話すという事でいいですか?」

パチュリー「ええ、構わないわよ、整理がついてもいない過去を無理矢理話せとは言えないから、気持ちの整理がついたら話してくれればいいわ」

影狼「ありがとうございます」

ドゴーン!!

地下で爆発音が響いた。

影狼「な、なに!!」

パチュリー「咲夜」

咲夜「はい、なんでしょう?」

パチュリー「地下の様子を能力を使って見て来てくれる?」

咲夜「かしこまりました」

影狼が瞬きをしたら咲夜の姿が消えていた。

パチュリー「彼女には時を止めて図書館の様子を見に行ってもらったは、あと、5秒くらいで戻って来るでしょう」

5秒後

咲夜「ただいま、戻りました」

パチュリー「図書館の様子はどうだった?」

咲夜「そ、それが、、」

パチュリー「なにかあったの?」

咲夜「妹様が図書館で新しい玩具を見つけたと言ってハヤテに弾幕を打ってました」

パチュリー、影狼「「は?」」

2人そろって間抜けな声を出した、、、、、


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