人工知能な女の子

伊吹若葉

人工知能な女の子

君は人工知能って知ってる?
…そう!ゲームをしたり仕事を手伝ったりしてくれているアレのこと!今はまだサポートだったり、試験段階のものが多いけど、今から話すのはそれよりもう少し先の僕の思い出話。


  人工知能の研究は大きく進歩し、最初のプログラムさえ組んでしまえば後は自主的に学習し成長していくそんな段階まで進んでいった。いうなれば人間の成長と同じだ。


  そこである研究者は考えた。人間として生活させることはできないのか、と。
もちろん人工知能に肉体はないから人間を模した体を作ってそこに人工知能を埋め込んだ。柔らかい言い方をするとロボットというところだろうか。


今回の研究はもちろん実験段階だ。どうなるかは誰にもわからない。だから僕が呼ばれたわけだ。

「こいつに付き添って経過を見守ってくれ。と言ってもお前の家に住み込む訳でもないし、四六時中一緒にいろという訳でもない。心配はいらない、優秀な人工知能だ。」

そう言った研究者の隣には僕と同じくらいの年齢の女の子が立っていた。

「はじめましてナルセさん、センカです。」


正直驚いた。理由は僕の名前を知っていたからではない。名前を知っていたのは、きっとあらかじめ名前を伝えられていたからだ。驚いたのは容姿や話し方だ。どこからどうみても普通の女の子だし、話し方も機械的な雰囲気は一切ない。


「基本的な動きは学習済みだ。日常生活を送る上で周りを困らせることはない。気を張らずに友人のように接してやってくれ。」

彼女は無表情でペコリとお辞儀した。


その後僕は人工知能について軽い説明を受けた。前述の通り基本的な動きはできること、多くのことを効率的にこなせるようになっていること。


話を聞く限りでは本当に人が監視する必要があるのか考えてしまうほど完璧な作り込みだった。


  その後彼女と少し話をした。

「センカさんはこれからしてみたいこととかある?」

僕が尋ねると彼女は してみたいこと、と小さく呟いた。

「そう!娯楽だったり勉強だったり、魅力的なものが多いんじゃないかな。」

そう続けると

「いえ、特にありません。強いて言えば学習ですかね。娯楽なんて私には必要がありません。」

あと、と彼女は続ける 呼び捨てで構いませんよ。
相変わらず無表情のまま彼女は答えた。


この後しばらく話をしたが彼女の笑顔を一度も見ることなく会話は終わってしまった。
なんだか先が不安になるスタートだった。



こうして僕と人工知能の生活が始まった。

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