アフ◎トリ(after trip)~廻るカルマの転生譚

アルト

第5章『夕焼けのカレイドスコープ』

「気合い入れすぎて、買いすぎたな……」

 パンパンに詰まったビニール袋を両手に持ち信号が青に変わるのを待つ。

 日が沈みかけ、幻想的に焼けた空が広がっていく。信号といい染まっていく紅に自分も加わりたいとさえ思える。




「ん、いやな空……」

 部屋に残った飛鳥はなにかを感じ取り、窓を開け小さく呟いた。
 
 巣へと帰るカラスを眺めながらーー




「なんだ? 眩しいな」

 下を見ると、光を反射させ、まるでレーザーポインターのように灯夜を照らす金属片が落ちていた。 

 なぜか興味をそそられ駆け寄りしゃがんで見る。

「これ、ネックレス……か?」

 人差し指ほどの小さな剣をチェーンで結んでいるただのネックレス。けど、普通のそれには見えない。

 特にこの十字にも見える黄金の剣。細部までの造りが細かすぎておもちゃではないと一瞬で分かった。

 手に取ってみるとけっこう重量があーー

『ーー見つけたです』

 ピカーンと光が溢れ出す。

 灯夜は焦って手に取ってた物を離す。も、空中で停止しいる。

 そして気づいた。

 道路の真ん中にいることを。

(視野狭すぎだろ、子供がきかよ俺)

 とにかく急いで歩道に戻ろうと立ち上がったその時、

 ブッブー!!!

 呻くようにエンジンの響きを上げ灯夜に迫ってくる。

(あ、動けねぇ……こう見るとトラック怖すぎ)

 死ぬんだと理解した。

 全身を照らすヘッドライトに目を閉じる。

 すると暗い瞼の中で色が生まれ、形を形成しだす。

 ガキの灯夜と若い頃の母さん。そして親父。

 それは灯夜の思い出だった。

(これが走馬灯そうまとうてやつか……)




「みてみて! これ作った!」

「おお! すごいじゃないかとうや」

 6歳の俺は粘土で作った父さんを嬉しそうに見せる。

 いびつな形をしておりお世辞にも似てるとは言えないが、それでも父さんは喜んでくれた。横で母さんも笑っている。

 幸せな光景。


「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。。。かえってきッ」

 背後から鳴き声が聞こえた。

(これは、親父の葬式……)

 父さんは川に溺れた少女を助け亡くなった。
 
 もともと泳げるような人ではなかった。でもなんとか助けたいと飛び込み、河川敷まで少女を運ぶも力尽きた。

 葬式の途中、感情に任せ泣いている俺を母さんは抱き締める。
 
 俺を離さないようにと強く抱くその手は震えていた。俺が疲れて眠るまでずっとーー

 夜中に目が覚め隣を見る。

「うぅっ くっくっ ううっ うっうっ」

 こらえるように。でもこらえきれないんだと思う。それを見て決めた……

(そうだ。俺は決めたんだーー母さんを泣かせないと!)

(ここで死ぬわけにはいかねー!!)

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