34歳気弱なサラリーマン、囚われの美少女お姫様始めました
第70話 ソニアとシルク(20)
「・・・お前だったのか・・・」
大きいシータはさらに不貞腐れた顔をした。
「オレはお前を抱くのに邪魔者がいないところに行こうと、”過去の花畑”に来た・・・。
過去の花畑に来る時は、時間は選べない。偶然昔のオレがいる時間に来てしまった。
ここで会って、アンチマジックの魔法をかけてやったのがお前だったとはな。
ったく、何の冗談だよ・・・」
「え・・・と・・・。ボクにとっては小さいシータさんと話したことはさっきのことだけど、シータさんにとっては過去のことなんだね・・・?」
「そうだ。過去にお前に会っていたとはな。」
「ん?もしかしてボクにアンチマジックの魔法が掛かったってことは、背中の魔法陣も無効ってこと?」
「・・・・・」
シータが否定しないということは、肯定ということだろう。
「やった!じゃあ、ソニアさんも大丈夫だよね?!ねえ、早くソニアさんのところに連れてって!安心させてあげたいよ!」
「自分で行け。」
シータは花畑の真ん中を指差した。いつの間にか扉が立っている。
「あそこだね?早く行こ!」
シルクはシータの手を取り扉に急いだ。
「え?」
シータは、その柔らかい手の暖かさに驚く。
シルクは小さなシータを見たせいで彼をほっとけなくなっていた。
シータは親を知らないが、ブルーライオンのソードに愛情を持って大切に育てられた。
彼が大人になってからはソードの許しも出て、魔法で変身して街に行き、女を抱いて肌のぬくもりも知っている。
飢えていたわけじゃない。
でも手をつなぐことはなかったとその時気付いた。
とても寒い夜に、暖かいお茶を飲んで内臓から温まるような感覚だと思う。
シルクが扉を開けると、そこはもといた魔女の家の廊下で、ソードとソニアが心配そうに立っていた。
「シルク様!ご無事ですか!」
「わあ、ソニアさん、家の中に入ってきてくれたの?ボクは大丈夫だよ!」
「外の・・・扉の前でお待ちしようと思ったのですが、中からライオンの雄たけびが聞こえてきたのでいてもたってもいられなくなり・・・。ああ・・・お怪我はないですか?」
ソニアは小さなシルクの身体をあちこち確かめる。
シルクはくすぐったくて、あははと笑った。
「ねえ、ソニアさん。ボク思ったんだけど、今すぐ一緒にお城に帰ろう。ボクが今夜いないとソニアさん困るんでしょ?
あ、背中の魔法陣のことなら大丈夫だからね。」
「シルク様・・・しかし・・・」
「王様の事なら心配しないで。ボク、色々正直に話してみようと思うんだ。とても大事な事をしなくちゃいけないから、逃げてる場合じゃないって。」
「大事な事?」
「ソニアさんには最初から詳しく説明したいとこなんだけど、時間がないんでしょ?王様は今夜来るって言ってたし。早く行こう!」
「ええ、でももう間に合わないでしょう。ここからだとお城まで数時間はかかってしまいます。」
「それならば問題ない。」
ソードは突っ立っているシータを見た。
「ダメだ。魔法で移動はさせてやれない。オレは昔・・・というか今コイツに、アンチマジックをかけたからな。」
「アンチマジックを?!」
さすがのソードも驚きを隠さなかった。
「そうか・・・ううむ、なるほど。よろしい、では、シルクとソニアよ、私の背中に乗りなさい。
夜の道であれば城までそれほどかかるまい。」
「ブルーライオンんが人間を背に乗せるとは!」
今度はソニアが驚く番だった。誇り高き青の獣は、城で兵士として人間と暮らしている者でさえ決してその背に乗せることはなかったのだ。
「早くしろ」
能天気なシルクはちょっとはしゃいでソードにまたがった。ソニアも恐縮しながら後に続く。
「あ、そうだ、森の入口の小屋にいるハンスさんも連れて帰りたいからちょっと寄って下さい!」
シルクの言葉にシータが思わず噴き出した。
獣の王、銀のブルーライオンであるソードに乗ったばかりか、馬車のように使おうとするとは。
「シルク様・・・」ソニアの顔にも緊張が走る。
しかし、一瞬の沈黙の後ソードは高らかに笑った。
「よかろう!小さき世界を救う小さき姫の頼みとあらば、何なりと。」
まるで突風のようにソードは森を駆け抜ける。
そして、小屋の前で月を見ていたハンスを驚く暇を与えない早さで背に乗せ、カナンの城に向かった。
大きいシータはさらに不貞腐れた顔をした。
「オレはお前を抱くのに邪魔者がいないところに行こうと、”過去の花畑”に来た・・・。
過去の花畑に来る時は、時間は選べない。偶然昔のオレがいる時間に来てしまった。
ここで会って、アンチマジックの魔法をかけてやったのがお前だったとはな。
ったく、何の冗談だよ・・・」
「え・・・と・・・。ボクにとっては小さいシータさんと話したことはさっきのことだけど、シータさんにとっては過去のことなんだね・・・?」
「そうだ。過去にお前に会っていたとはな。」
「ん?もしかしてボクにアンチマジックの魔法が掛かったってことは、背中の魔法陣も無効ってこと?」
「・・・・・」
シータが否定しないということは、肯定ということだろう。
「やった!じゃあ、ソニアさんも大丈夫だよね?!ねえ、早くソニアさんのところに連れてって!安心させてあげたいよ!」
「自分で行け。」
シータは花畑の真ん中を指差した。いつの間にか扉が立っている。
「あそこだね?早く行こ!」
シルクはシータの手を取り扉に急いだ。
「え?」
シータは、その柔らかい手の暖かさに驚く。
シルクは小さなシータを見たせいで彼をほっとけなくなっていた。
シータは親を知らないが、ブルーライオンのソードに愛情を持って大切に育てられた。
彼が大人になってからはソードの許しも出て、魔法で変身して街に行き、女を抱いて肌のぬくもりも知っている。
飢えていたわけじゃない。
でも手をつなぐことはなかったとその時気付いた。
とても寒い夜に、暖かいお茶を飲んで内臓から温まるような感覚だと思う。
シルクが扉を開けると、そこはもといた魔女の家の廊下で、ソードとソニアが心配そうに立っていた。
「シルク様!ご無事ですか!」
「わあ、ソニアさん、家の中に入ってきてくれたの?ボクは大丈夫だよ!」
「外の・・・扉の前でお待ちしようと思ったのですが、中からライオンの雄たけびが聞こえてきたのでいてもたってもいられなくなり・・・。ああ・・・お怪我はないですか?」
ソニアは小さなシルクの身体をあちこち確かめる。
シルクはくすぐったくて、あははと笑った。
「ねえ、ソニアさん。ボク思ったんだけど、今すぐ一緒にお城に帰ろう。ボクが今夜いないとソニアさん困るんでしょ?
あ、背中の魔法陣のことなら大丈夫だからね。」
「シルク様・・・しかし・・・」
「王様の事なら心配しないで。ボク、色々正直に話してみようと思うんだ。とても大事な事をしなくちゃいけないから、逃げてる場合じゃないって。」
「大事な事?」
「ソニアさんには最初から詳しく説明したいとこなんだけど、時間がないんでしょ?王様は今夜来るって言ってたし。早く行こう!」
「ええ、でももう間に合わないでしょう。ここからだとお城まで数時間はかかってしまいます。」
「それならば問題ない。」
ソードは突っ立っているシータを見た。
「ダメだ。魔法で移動はさせてやれない。オレは昔・・・というか今コイツに、アンチマジックをかけたからな。」
「アンチマジックを?!」
さすがのソードも驚きを隠さなかった。
「そうか・・・ううむ、なるほど。よろしい、では、シルクとソニアよ、私の背中に乗りなさい。
夜の道であれば城までそれほどかかるまい。」
「ブルーライオンんが人間を背に乗せるとは!」
今度はソニアが驚く番だった。誇り高き青の獣は、城で兵士として人間と暮らしている者でさえ決してその背に乗せることはなかったのだ。
「早くしろ」
能天気なシルクはちょっとはしゃいでソードにまたがった。ソニアも恐縮しながら後に続く。
「あ、そうだ、森の入口の小屋にいるハンスさんも連れて帰りたいからちょっと寄って下さい!」
シルクの言葉にシータが思わず噴き出した。
獣の王、銀のブルーライオンであるソードに乗ったばかりか、馬車のように使おうとするとは。
「シルク様・・・」ソニアの顔にも緊張が走る。
しかし、一瞬の沈黙の後ソードは高らかに笑った。
「よかろう!小さき世界を救う小さき姫の頼みとあらば、何なりと。」
まるで突風のようにソードは森を駆け抜ける。
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