34歳気弱なサラリーマン、囚われの美少女お姫様始めました
第61話 ソニアとシルク(11)
シルクが呑気に口笛を吹いているころ、シルクの父親は一番乗りで娘を差し出す返事をしていた。
ソニアはシルクの父親への手紙をなるべく遅く出したりしたのだが全く無駄だった。
早く王に抱かれた姫がお妃になるとでも思ったのか、速い馬を昼夜休まず乗り継がせて、手紙をよこした。
内容は丁寧に書かれていたが、要するに、
「娘シルクは王のお好きになさって下さい。」である。
実は、シルクは今の父の兄の子で、実子ではなかった。まだ赤ちゃんの頃シルクの実の両親が亡くなり、叔父が引き取ったのだ。
衣食住に不自由はしない暮らしをさせてもらったが、あまり愛情を感じることがなかった。
叔父…今の父親にとって、シルクが王と結婚してくれたら超ラッキーだし、ダメで傷物になっても割とどうでもいいのである。
そんなわけで、王の御渡りはシルクが一番乗りと発表された。
ここにきて、ことの重大さに気づいてしまうシルク。
「お菓子用意するだけじゃないんですか?!」
まだ半信半疑だ。
「シルクさま、王が御渡りなさるということは…一夜を共にされるということです。お父様にもお許しを頂いてしまいました。
シルクさま、このようなご経験は…?」
「な、な、な、ないです!男となんてあるわけないです!」
「初めて…どういたしましょう、シルクさま。お妃候補のお一人として、拒否する権利はないかと思います。せめて、ご結婚がお決まりになった後であればおめでたいことかと思うのですが。
お父様も酷いことを。
私は護衛として、部屋にいなくてはなりません。」
「そんな…いやだ…いやだよソニアさん…」
大好きなソニアに、男に抱かれる自分なんて見せたくない。
それにしても、数年後の王妃を溺愛してきたデュラン王は素朴で良い人だった。
候補の姫を試しに抱いてみるなんて、そんなことをする人には見えなかった。
でももしかすると、王のお手つきとなって妊娠してしまい、お妃になったのかもしれない。
そして不幸な道を辿ってしまったのかも。
「ソニアさん、ボクと…お願い、ボクと一緒にどこかへ逃げて!」
シルクはソニアにすがりついて懇願した。
男に抱かれるのも本当に嫌だが、この先の未来を変えなければならない。
そもそも、デュラン王の息子、オルガ王子に、村人の虐殺を止めてくれと頼まれたのだから、王とシルクが結婚しないのが1番の解決策に思える。
しかし、そんなことより、
ソニアを好きになってしまったのだ。
自分が異世界から来たことも、
中身がクロちゃんだということも、
そのまた中身が34歳おっさんだということも、
全てどうでもいい、もうどの世界にも戻らなくてもいい、
今のソニアさんと一緒にいたい。
そしてもし、もし男に戻ることが出来たなら、ソニアさんを守って生きていきたい、と。
しかしソニアは、ミダにお金で買われた身。
もし逃げてしまったら、家族に害が及ぶかもしれない。
「王妃」となる姫を見定め、守るのがソニアの任務。
シルクのことをとても可愛く思っているが、もし別の姫が王妃となるのならば、その姫を守らなければならないだろう。
しかし、自分にしがみつく小さな柔らかい女の子のことを、夫になるはずだったゴードンとは違う感情で見ていることに気づく。
女の子だけど女の子っぽくはなく、ひどく弱々しいかと思えばそうでもない時もある。
抱きしめてしまえば分かるかもしれない。
ソニアはシルクを両腕で包み込んだ。
シルクはソニアからの反応を感じて心底嬉しくなる。
(ソニアさんが抱きしめてくれた…!)
ソニアはシルクの少し黒くなったフワフワの髪を優しく撫でた。
中身がクロちゃんになってから、胸が巨大化したほか、髪の色も茶色から黒っぼくなってきたり、顔立ちもクロちゃんっぼくなってきたり、シルクの外見にも影響を与えているようだった。
シルクを助けてやりたい、と思うと同時に、どうしても母親と兄弟たちの顔を思い出してしまうソニア。
シルクをそっと体から引き離した。
「シルク様、今日はもうお休みになりませんと、明日の夜には王が参られますので…。」
ソニアはシルクの父親への手紙をなるべく遅く出したりしたのだが全く無駄だった。
早く王に抱かれた姫がお妃になるとでも思ったのか、速い馬を昼夜休まず乗り継がせて、手紙をよこした。
内容は丁寧に書かれていたが、要するに、
「娘シルクは王のお好きになさって下さい。」である。
実は、シルクは今の父の兄の子で、実子ではなかった。まだ赤ちゃんの頃シルクの実の両親が亡くなり、叔父が引き取ったのだ。
衣食住に不自由はしない暮らしをさせてもらったが、あまり愛情を感じることがなかった。
叔父…今の父親にとって、シルクが王と結婚してくれたら超ラッキーだし、ダメで傷物になっても割とどうでもいいのである。
そんなわけで、王の御渡りはシルクが一番乗りと発表された。
ここにきて、ことの重大さに気づいてしまうシルク。
「お菓子用意するだけじゃないんですか?!」
まだ半信半疑だ。
「シルクさま、王が御渡りなさるということは…一夜を共にされるということです。お父様にもお許しを頂いてしまいました。
シルクさま、このようなご経験は…?」
「な、な、な、ないです!男となんてあるわけないです!」
「初めて…どういたしましょう、シルクさま。お妃候補のお一人として、拒否する権利はないかと思います。せめて、ご結婚がお決まりになった後であればおめでたいことかと思うのですが。
お父様も酷いことを。
私は護衛として、部屋にいなくてはなりません。」
「そんな…いやだ…いやだよソニアさん…」
大好きなソニアに、男に抱かれる自分なんて見せたくない。
それにしても、数年後の王妃を溺愛してきたデュラン王は素朴で良い人だった。
候補の姫を試しに抱いてみるなんて、そんなことをする人には見えなかった。
でももしかすると、王のお手つきとなって妊娠してしまい、お妃になったのかもしれない。
そして不幸な道を辿ってしまったのかも。
「ソニアさん、ボクと…お願い、ボクと一緒にどこかへ逃げて!」
シルクはソニアにすがりついて懇願した。
男に抱かれるのも本当に嫌だが、この先の未来を変えなければならない。
そもそも、デュラン王の息子、オルガ王子に、村人の虐殺を止めてくれと頼まれたのだから、王とシルクが結婚しないのが1番の解決策に思える。
しかし、そんなことより、
ソニアを好きになってしまったのだ。
自分が異世界から来たことも、
中身がクロちゃんだということも、
そのまた中身が34歳おっさんだということも、
全てどうでもいい、もうどの世界にも戻らなくてもいい、
今のソニアさんと一緒にいたい。
そしてもし、もし男に戻ることが出来たなら、ソニアさんを守って生きていきたい、と。
しかしソニアは、ミダにお金で買われた身。
もし逃げてしまったら、家族に害が及ぶかもしれない。
「王妃」となる姫を見定め、守るのがソニアの任務。
シルクのことをとても可愛く思っているが、もし別の姫が王妃となるのならば、その姫を守らなければならないだろう。
しかし、自分にしがみつく小さな柔らかい女の子のことを、夫になるはずだったゴードンとは違う感情で見ていることに気づく。
女の子だけど女の子っぽくはなく、ひどく弱々しいかと思えばそうでもない時もある。
抱きしめてしまえば分かるかもしれない。
ソニアはシルクを両腕で包み込んだ。
シルクはソニアからの反応を感じて心底嬉しくなる。
(ソニアさんが抱きしめてくれた…!)
ソニアはシルクの少し黒くなったフワフワの髪を優しく撫でた。
中身がクロちゃんになってから、胸が巨大化したほか、髪の色も茶色から黒っぼくなってきたり、顔立ちもクロちゃんっぼくなってきたり、シルクの外見にも影響を与えているようだった。
シルクを助けてやりたい、と思うと同時に、どうしても母親と兄弟たちの顔を思い出してしまうソニア。
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