34歳気弱なサラリーマン、囚われの美少女お姫様始めました
第32話 ブルーライオンと青年
ロックの短剣はクロちゃんの背中をかすめる。
ロックがとっさに、前に出てきたクロちゃんに気付いて剣を引き気味にしたので致命傷は避けられたが、深さ5ミリ、幅20センチほどの切り傷が出来ていた。
クロちゃんは「死んだー!!」と一瞬思った。
〝あの子は何の取り柄もないですが、動物が好きな優しい子です。〝
幼稚園から高校まで、母親が学校の先生に言っていた言葉が走馬灯のように思い出される。
犬を飼いたかったが、母親がアレルギーなので飼えなかった。
ハムスターは何匹か飼えた。でも数年で死ぬのが悲しくて、4匹目で最後にした。
一人暮らしを始めると、動物を飼う余裕なんてなくて、それより彼女は出来たか結婚はどうするんだ孫が見たいという一連の攻撃を受け流すのが大変だった…
とかいう、どうでもいいことばかり考えて草の上に倒れるクロちゃん。
「大丈夫か!クロ!」
ロックはブルーライオンたちを牽制しながらクロちゃんに近付き、怪我の様子を探る。
命には別状なさそうだなと判断してホッとした。
しかし、目の前には全部で五頭のブルーライオンが牙を剥いて唸っている。
クロちゃんはズキズキする背中を押さえて言った。
「ロックさん、さっきのライオンさんは大丈夫…?!」
「バカかお前は!こんな時にライオンなんか心配してる場合か!」
「あの、ふと思ったんだけど、ボクハーリーさんの怪我を治せたでしょ?だからあのライオンそんの怪我も治せるんじゃないかなって…」
「だから!!バカかお前はっつってんの!!」
「怪我が治せるの?」
前方の木の後ろから、1人の青年が現れた。17歳ぐらいだろうか。
高そうな服を着て綺麗な顔立ちをしているが、ひどくやせ細って不健康に見える青年。
「この子の怪我を、君は治せるの?」
青年は怪我をしたブルーライオンを指差した。
「あの…自信はないけど、もしかしたら出来るかもしれない。」
クロちゃんは答える。
「じゃあやってみて。ブルーライオンはとても貴重なんだ。もう生き残っているのはこの子たち5頭だけで、生まれてくる子供は彼等の希望なんだ。
もし怪我を治してくれたら命は助ける。
出来なければエサにする。」
「エサ…」
クロちゃんはヒヤヒヤしながらも、ワンチャンス出来たことに安心した。
「よし、仕方ない、やってみろクロ!俺の命もかかってんだからしくじるなよ…。
と、その前に、お前の背中…」
ロックがクロちゃんの背中の傷の応急処置をしようとして見てみると、もう血が止まり傷が塞がりかけていた。
「お前…すごいな…」
クロちゃんはとりあえず、腹を切られた母ライオンの側による。
母ライオンは苦しそうだったが、凛々しい瞳でじっとクロちゃんを見た。
ライオンのお腹の辺りにさっき見えた光は、ひどく弱々しくなっている。
「かわいそうに…」
どうすればいいか分からなかったが、ハーリーを治した時体を密着させた事を思い出し、クロちゃんはそっと母ライオンを抱きしめた。
ミーミーミー
赤ちゃんライオンの鳴き声が聞こえる気がする。
とても暖かい何かを、周りの全てから感じた。
それは風、木、草、土、水…全てのものから流れ込んでくる感覚。
3つの命が、母ライオンのお腹の中に戻ってきた。
クロちゃんは目の前に優しい、赤い光を見た。
それはお腹の中から見た風景なのかもしれない。
一瞬だが永遠のような不思議な時間の後、母ライオンは静かに立ち上がった。
傷はすっかり塞がっている。
「クロ…!お前すごいやつだな!」
ロックが興奮して、駆け寄って来て抱きしめる。
「キミ、確かに凄いね。本当に治しちゃった。
約束だから助けてあげる、付いて来て。」
青年は湖の向こう、コナンの城の方を指した。
ロックがとっさに、前に出てきたクロちゃんに気付いて剣を引き気味にしたので致命傷は避けられたが、深さ5ミリ、幅20センチほどの切り傷が出来ていた。
クロちゃんは「死んだー!!」と一瞬思った。
〝あの子は何の取り柄もないですが、動物が好きな優しい子です。〝
幼稚園から高校まで、母親が学校の先生に言っていた言葉が走馬灯のように思い出される。
犬を飼いたかったが、母親がアレルギーなので飼えなかった。
ハムスターは何匹か飼えた。でも数年で死ぬのが悲しくて、4匹目で最後にした。
一人暮らしを始めると、動物を飼う余裕なんてなくて、それより彼女は出来たか結婚はどうするんだ孫が見たいという一連の攻撃を受け流すのが大変だった…
とかいう、どうでもいいことばかり考えて草の上に倒れるクロちゃん。
「大丈夫か!クロ!」
ロックはブルーライオンたちを牽制しながらクロちゃんに近付き、怪我の様子を探る。
命には別状なさそうだなと判断してホッとした。
しかし、目の前には全部で五頭のブルーライオンが牙を剥いて唸っている。
クロちゃんはズキズキする背中を押さえて言った。
「ロックさん、さっきのライオンさんは大丈夫…?!」
「バカかお前は!こんな時にライオンなんか心配してる場合か!」
「あの、ふと思ったんだけど、ボクハーリーさんの怪我を治せたでしょ?だからあのライオンそんの怪我も治せるんじゃないかなって…」
「だから!!バカかお前はっつってんの!!」
「怪我が治せるの?」
前方の木の後ろから、1人の青年が現れた。17歳ぐらいだろうか。
高そうな服を着て綺麗な顔立ちをしているが、ひどくやせ細って不健康に見える青年。
「この子の怪我を、君は治せるの?」
青年は怪我をしたブルーライオンを指差した。
「あの…自信はないけど、もしかしたら出来るかもしれない。」
クロちゃんは答える。
「じゃあやってみて。ブルーライオンはとても貴重なんだ。もう生き残っているのはこの子たち5頭だけで、生まれてくる子供は彼等の希望なんだ。
もし怪我を治してくれたら命は助ける。
出来なければエサにする。」
「エサ…」
クロちゃんはヒヤヒヤしながらも、ワンチャンス出来たことに安心した。
「よし、仕方ない、やってみろクロ!俺の命もかかってんだからしくじるなよ…。
と、その前に、お前の背中…」
ロックがクロちゃんの背中の傷の応急処置をしようとして見てみると、もう血が止まり傷が塞がりかけていた。
「お前…すごいな…」
クロちゃんはとりあえず、腹を切られた母ライオンの側による。
母ライオンは苦しそうだったが、凛々しい瞳でじっとクロちゃんを見た。
ライオンのお腹の辺りにさっき見えた光は、ひどく弱々しくなっている。
「かわいそうに…」
どうすればいいか分からなかったが、ハーリーを治した時体を密着させた事を思い出し、クロちゃんはそっと母ライオンを抱きしめた。
ミーミーミー
赤ちゃんライオンの鳴き声が聞こえる気がする。
とても暖かい何かを、周りの全てから感じた。
それは風、木、草、土、水…全てのものから流れ込んでくる感覚。
3つの命が、母ライオンのお腹の中に戻ってきた。
クロちゃんは目の前に優しい、赤い光を見た。
それはお腹の中から見た風景なのかもしれない。
一瞬だが永遠のような不思議な時間の後、母ライオンは静かに立ち上がった。
傷はすっかり塞がっている。
「クロ…!お前すごいやつだな!」
ロックが興奮して、駆け寄って来て抱きしめる。
「キミ、確かに凄いね。本当に治しちゃった。
約束だから助けてあげる、付いて来て。」
青年は湖の向こう、コナンの城の方を指した。
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