34歳気弱なサラリーマン、囚われの美少女お姫様始めました
第12話 月光の夜
湯浴みを済ませ、体の火照りを鎮めると、クロちゃんの皮膚の腫れも少しは良くなっていた。
ガチガチになっていた髪の毛も、色は赤茶けたまま戻らなかったが、すっかりサラサラになった。
バスローブのような服を借りてアレンの部屋に行く。
アレンは光る小刀を持って待っていた。
刃先がロウソクの炎に照らされて怪しく光る。
「ここにお座り」
アレンは椅子を勧めてくれて、クロちゃんの髪を切り始めた。
サクリ、サクリと心地の良い音がクロちゃんの耳をくすぐる。
(不思議な気分だなぁ。)
と、クロちゃんはしみじみ思う。
(突然変な世界に来て、女の子になってて、今はこうしてイケメンに髪を切られてるなんて…)
「クロちゃん、コナンの街までは馬車で3日ほどかかる。その間、もしかして危険なことがあるかもしれない。」
「危険なこと?」
クロちゃんはドキリとした。
「コナンの王子が黒髪の少女を探していることは噂で広がっている。
何故探しているのか?
それを探り、コナンの王子に対する切り札にしたい輩も数多いるのだ。
ということは、君の身は危険にさらされているということなんだよ。」
「そんなぁ…占い師が予言した女の子は、ボクじゃないかもしれないのに。」
「そう、国中の、黒髪の少女が危険に巻き込まれるだろうね。しかしこの辺りの国には、黒髪の女の子はほとんどいないんだ。
男の子の黒髪は、まれに生まれることはある。
だから、ガガが君の髪を染めてしまったのはある意味正解だったのかもしれない。
少なくとも王子の前に出るまでは安全だろうしね。
それに、髪が短くなったから道中は男の子の格好をするといい。
私の子供の頃の服を使いなさい。」
「…恐れ入ります…」
中身は34歳のおじさんで、外見は巨乳美少女で、しかし変装して男の子になるというややこしい状況になってしまった。
アレンは予想通り、クロちゃんの髪をとてもキレイに切ってくれた。
顔の腫れが引けば可愛い男の子に見えるだろう。
髪を切り終えて、アレンが少し部屋を出た間に、クロちゃんは椅子に座ったまま眠ってしまった。
ロウソクは消え、月明かりだけがクロちゃんを照らす。
飲み物を持ってきたアレンは、その様子を見て何故だか確信した。
クロちゃんには、何かある、と。
何か、は分からない。
アレンはクロちゃんをそっと抱き抱え、自分のベッドに寝かし、朝までその寝顔をずっと見ていた。
朝になり、男装させてもらったクロちゃんは馬車に乗り込む時、少し離れた所にハッキとガガが立っているのが見えた。
「ハッキ!ガガ!ありがとうー!きっとまた帰って来るからね!みんなによろしくね!」
クロちゃんは大きく手を振った。
ハッキとガガも大きく手を振り返す。
でも何故だか、そこにいる皆が、もう2度と会えないような気がしていた。
馬車は、まだ霧がかかる山の村を静かに出発した。
ガチガチになっていた髪の毛も、色は赤茶けたまま戻らなかったが、すっかりサラサラになった。
バスローブのような服を借りてアレンの部屋に行く。
アレンは光る小刀を持って待っていた。
刃先がロウソクの炎に照らされて怪しく光る。
「ここにお座り」
アレンは椅子を勧めてくれて、クロちゃんの髪を切り始めた。
サクリ、サクリと心地の良い音がクロちゃんの耳をくすぐる。
(不思議な気分だなぁ。)
と、クロちゃんはしみじみ思う。
(突然変な世界に来て、女の子になってて、今はこうしてイケメンに髪を切られてるなんて…)
「クロちゃん、コナンの街までは馬車で3日ほどかかる。その間、もしかして危険なことがあるかもしれない。」
「危険なこと?」
クロちゃんはドキリとした。
「コナンの王子が黒髪の少女を探していることは噂で広がっている。
何故探しているのか?
それを探り、コナンの王子に対する切り札にしたい輩も数多いるのだ。
ということは、君の身は危険にさらされているということなんだよ。」
「そんなぁ…占い師が予言した女の子は、ボクじゃないかもしれないのに。」
「そう、国中の、黒髪の少女が危険に巻き込まれるだろうね。しかしこの辺りの国には、黒髪の女の子はほとんどいないんだ。
男の子の黒髪は、まれに生まれることはある。
だから、ガガが君の髪を染めてしまったのはある意味正解だったのかもしれない。
少なくとも王子の前に出るまでは安全だろうしね。
それに、髪が短くなったから道中は男の子の格好をするといい。
私の子供の頃の服を使いなさい。」
「…恐れ入ります…」
中身は34歳のおじさんで、外見は巨乳美少女で、しかし変装して男の子になるというややこしい状況になってしまった。
アレンは予想通り、クロちゃんの髪をとてもキレイに切ってくれた。
顔の腫れが引けば可愛い男の子に見えるだろう。
髪を切り終えて、アレンが少し部屋を出た間に、クロちゃんは椅子に座ったまま眠ってしまった。
ロウソクは消え、月明かりだけがクロちゃんを照らす。
飲み物を持ってきたアレンは、その様子を見て何故だか確信した。
クロちゃんには、何かある、と。
何か、は分からない。
アレンはクロちゃんをそっと抱き抱え、自分のベッドに寝かし、朝までその寝顔をずっと見ていた。
朝になり、男装させてもらったクロちゃんは馬車に乗り込む時、少し離れた所にハッキとガガが立っているのが見えた。
「ハッキ!ガガ!ありがとうー!きっとまた帰って来るからね!みんなによろしくね!」
クロちゃんは大きく手を振った。
ハッキとガガも大きく手を振り返す。
でも何故だか、そこにいる皆が、もう2度と会えないような気がしていた。
馬車は、まだ霧がかかる山の村を静かに出発した。
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