無力のバーサーカー

POSTMAN

入学試験3

「道玄真さん。第2試合です」
…ついに2試合目だ。この試合で俺が学園に入れるかが決まる。この試合だけは落とす訳にはいかない。
「では、道玄さん。こちらに」
コロシアムに案内される。今俺は自分の運命を分ける重要な分岐点の前に立たされている。俺はなんとしてもこの試合に勝って明るい運命に進んでいかなければならない。そう決心してコロシアムに入る。
 俺と相手が入場したのは同時だった。相手は白髪の虚ろな目をした少年。俺よりも小柄で本当に戦えるのか不安になる。でも、その不安を吹き飛ばすほど彼は不気味だった。
「…君が道玄真?」
急に聞かれたので少し驚いた。
「あ、ああ。そうだけど」
「そっか、なら良かった…」
彼の言葉が言い終わる前に、試合開始の鐘が鳴った。彼は何か言っていたが鐘の音にかき消されてしまった。
 頭の中に相手が今俺が立っている位置に向かって魔術を放つ映像が流れる。❬見切りの目❭の未来予知だ。俺はすかさず右へ避ける………

しかし相手が魔術を放ったのは右へ避けた後の俺の位置だった。

もちろん魔術は俺に直撃する。
(なんで!?俺は見切ったはずだ!なぜ当たった!?)
「…なんで魔術が当たったのか困惑してる所かな?教えてあげようか?」
「ハッ!結構だ!」
俺は魔術を複数展開する。
「❬エアロバレット❭!」
❬エアロバレット❭は俺が使える魔術の中でかなりの速度を誇る魔術だ。それを複数放った。全てとは言わずとも一撃は当たるはずだ。だが、相手はそんな俺の考えを否定するかのように全て回避していく。
(なんでだ?俺の考えを読む才能なのか?それとも…)
「そろそろ僕の才能について考えている所かな?教えてあげるよ。僕の才能は……」
俺の声と相手の声が重なる。

「「❬未来予知❭」」

「…なんだ。分かってたのか。じゃあ……ここからは君に攻撃、ましてや反撃のチャンスはないよ?覚悟してね」
 そこからは一方的だった。相手の放つ魔術が全て直撃する。なんとか防御魔術で防いではいるが魔力切れも近いだろう。こんな危機的な状況なのに引っ掛かっている事があった。
「なあ、さっき…試合が始まる前になんていったんだ?」
「ん?ああ、『ぶっ殺してやるよ』って言ったんだよ」
その瞬間、小柄な彼の体から信じられないほどの殺気が放たれる。その殺気に一瞬怯む。
そこからさらに攻撃が激しくなった。
(本当に攻撃する隙がない……!)
と思っていた矢先だった。魔力が切れ、防御魔術が展開できなくなる。相手の魔術がいくつも当たる。
俺はその場に倒れた。ここまで彼は予知していたのだろう。俺に確実に止めを刺すために俺の魔力切れを待っていたに違いない。
「これで終わりだよ。最後に何か聞きたい事は?」
「1つだけ、聞きたい事がある。なんで俺をそんな憎むんだ…?」
「そんな事?いいよ、教えてあげる。それはね………」

「君が!君なんかが!❬運命の大魔導❭の弟子だからだよ!」

は?……理解が追い付かなかった。それほどの衝撃だったのだ。それで何故『ぶっ殺してやるよ』なんて台詞につながるのか。彼の言葉は続く。
「なんで僕みたいな、いや!僕じゃなくても君よりも魔術師としての才能が溢れる人材じゃなくて魔術師として三流の君なんかがあの人の弟子なんだ!?ふざけるな!僕はもっとつよくなれたはずなんだ!あの人の弟子になれたなら!」
俺は思った。何故俺が恨まれるのか、と。それを相手に言ってやれれば良かったのかもしれない。しかしそれをさせなかったのは他でもない、相手だった。
「だからさ、決めたんだ。まず君を学園に入れなくして、その後あの人…大魔導の娘を屈辱に染めてやるんだ!大魔導を、僕の才能を見出だせなかった愚か者にこれ以上ない苦痛を与えてやるんだ!」
……自分の耳を疑った。こいつはもはや魔術師になってはいけない人材だとすら思った。恨む対象を見失い、ただ感情の赴くまま行動をしているこいつは。
「…これで分かったかい?これが理由だよ。」
相手が魔術を展開する。きっとこの魔術を食らったら確実に気を失うだろう。
「じゃあね。❬ボルトカノン❭!」
………気を失う寸前、俺が抱いていたのは燐に対する罪悪感でもなく師匠に対する申し訳なさでもなく。ただただ怒りや憎しみだった。俺の大切な人を逆恨みで傷つけてやると宣言している本物の愚者への激しい怒りだった。
 




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