初めての恋

神寺雅文

告白の先に見えたあの日の約束04

「あ、あたしも悪かったとは思う。でも、みやび忘れたあんたが一番悪いんだからね。忘れてた分、しっかり春香のことも幼馴染として大事にしなさいよね」「そうだな、そうだ。僕らは幼馴染なんだ! また、昔みたいに三人で仲良くしよう」「うん、言うのは怖かったんだけど、拓哉君のために、サッカー部の為に自分を犠牲にしてまで頑張るみやちゃんってやっぱりかっこいいなって思っちゃってね、そしてたら……また、昔みたいに一緒に遊びたい。わたしのこと思い出してもらいたいって強く思っちゃったんだ」
 春香の頬から大粒の涙が伝う。ああ、なるほど、僕が時たま感じていた春香への違和感の正体はこれだったのか。
 四月のころ、奈緒にだけやたらと親しみを抱いていたのも、急に泣き出してどこかに行ってしまったときも、奈緒のことをただの幼馴染と言い切った時も、僕の好きな飲み物を知っていたのも、昔のことを思い出してのことだったのか。これなら全て合点がいく。
「だから、もう一度私のこと幼馴染にしてほしいな」「うん、こちらこそ、こんな僕だけどはるちゃんの幼馴染にしてよ」「もちろん、私たち三人はいつまでも大切な幼馴染だよ」
 サッカー部の問題に続き、僕らの関係も大きく進展した。ってことでいいんだよな?
 改めて握手をしてお互いの気持ちを確かめ合う僕と春香。奈緒も奈緒で満足そうに微笑んでいる。そして、急に手を叩いた。
「よし、これで万事解決! 本当にみんなお疲れさまでした」
 奈緒の柏手一発で一瞬にしてこの話題は終了となる。まるでそれは、これ以上の詮索を僕にさせないためにしたような場の転換の仕方であった。その証拠にそそくさと荷物をまとめ半ば強引に春香を連れて玄関へと向かってしまう。
「みやっち、本当にありがとうな。俺達、頑張って優勝するからさ、決勝戦、絶対に二人を連れて応援きてくれよ?」「うん、拓哉がいなくてもみんななら大丈夫だと思う。ケガ、早く治して本当のエースになってほしいよ」「おう、任せてくれ!」
 寺嶋が代表して僕に手を差し伸べてきたので力いっぱいに握り締める。その上に三バカが手を重ねて眼だけで決意を表明してきている。どこまでも熱い男達であろうか。
 頼もしい限りだ。もう僕が何かをすることはないし、協力しなくても彼らははるか高見に自分たちの力だけで登ることが出来る。そう思ったのは拓哉も同じようで、奈緒&春香に別れの挨拶をしてから得意げな顔をして口を開いた。
「俺も負けてらんないな~」「拓哉、何かするつもりか?」「それは秘密~、もしかしたらサッカー部よりも人気になるかもな~」
 人差し指を口に当ててにやける。イケメンがするからいいものの、僕がやったらキモイと一蹴されてしまいかねない。一体何をするつもりなのだろうか。
「まあ、拓哉のやることだ、期待して待ってるぜ」
 そう言い寺嶋は拓哉に拳を突き付けると拓哉もそれに答えて拳をぶつける。

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