【WHO】ワールド・ハイド・オンライン

霧ヶ峰

第2話


「あーあー。繋がってるか?」

 電気の付いた部屋の中で、ベットに寝転がりながら、青年はスマートフォンに声を投げる。

『ん〜………ダイジョブ』
『こっちも同じく』
『大丈夫でーす」
『あっはい!大丈夫です』
『んー?んん?…ん!ダイジョブ』

 スマートフォンから返ってくるのは、男2人女3人の声。………と、ガチャガチャと何かを動かす音。


「良し。じゃあ確認とるけど、そっちにはもう【WHO】届いてる?」
 青年の言葉からわかる通り、先日この青年が10時間以上もかけて受け取りに言ったゲーム【WHO】は、この5人が予約したものだった。

『おー!届いたぜ!いやぁ〜マジ助かったわ』
「クソゥ!不眠不休で並んだ甲斐があったわ!」
 悪びれもせずにそう返ってくる言葉に、思わずそう声を上げてしまう。

『ま、その分の報酬は支払ったんだからいいでしょ?』
『そーだそーだ!クラン作ったら入ってあげることになったからいいじゃん!』
『フフッ………みなさんそんな約束なくたって入ったでしょうに』

「む…そんな感じに言われるとちょっと照れるんだけどなぁ。ま、届いてるなら良いや。みんなのことだから[オープンスキル]とか[クローズドスキル]とか、【ジョブスキル】とかのことも調べついてるんでしょ?」
『えーっと、[オープンスキル]が【剣術】とか【火魔法】とか………あーあと、物作ったりするときのスキルだっけ?』
「そう。んで、[クローズドスキル]は、それをサポートするスキル群だと思って良いよ。まぁ、それだけじゃないけどね。じゃあ【ジョブスキル】は?」
『そのまんま。仕事………職業を表すスキル』
「うん、正解。僕はスキル構成大体決めてるけど、みんなはどうなの?」

 青年の言葉に、スマートフォンの向こうからの声がピタリと止む。

「まさか………まだ決めてない?」
『いやー………ちょっと決めかねてるんだよなぁ』
『良さげな【ジョブスキル】は見つけてあるんだけど、それに合わせるやつに迷ってるんだよ』
「んー…一応聞いとくけど、それぞれどんな【ジョブスキル】にするつもり?」
『俺は【傭兵】』
『俺は【狩人】』
『私は、三属性使いたいから【ドライマジシャン】?』
『私は【吟遊詩人】かな』
『【クラフトマスター】…生産こそ至高』

 それぞれがそれぞれのやりたい事に沿った【ジョブスキル】なのだが、【傭兵】は二次職・三次職で【騎士】になる可能性があるため、それにしたのだろうし、【狩人】の成長先には【狙撃手】や【賞金稼ぎ】などがβ時代に確認されている。【ドライマジシャン】にいたっては、【魔道士】とかだった気がする。【吟遊詩人】と【クラフトマスター】はβ版にはなかった職業なので、どう進化していくのか青年にもわからない。

「ま、好きなようにやれば良いと思うけど、【隠密】とか【鷹の目】とかはそれぞれ持っておいた方が良いかもよ?………あ、もうこんな時間か。じゃあ、後はあっちで話そっか」
『『りょーかい』』
『『わかりました!』』
『ん』

 青年は、スマートフォンからそれぞれの返事が返ってきたのを確認すると、通話アプリを操作し、ついでに電源を切る。

 そして、ベッドの横に置いてあったヘルメット型のハードウェア【リンクギア】を装着し、電源を付けた。



「さーて…どれだけ変わってるのかな?」

【ワールド・ハイド・オンライン】のβ版経験者で、長年のコアゲーマーである青年ーーー武部 岳斗たけべ がくとーーーは、ゲームの開始時間ぴったしに、仮想世界へと旅立つのだった。

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