にゃんでも俺は魔王だそうで

和琉河人

3話 同志

 俺は今、最高に怒っていた。
あの自称神のク○ジジイの声をまた聞くことになったからだ。
「そんなに怒鳴ることはないと思う
 んじゃがなぁ」
「俺はお前のせいで2回も死にかけ
 たんだぞ!」
「生きているのじゃから問題なかろ
 う。まったく、平均の100倍の
 善行を成し遂げたお主の優しさは
 どこにいったのじゃ?」
「だからお前のせいだって言ってる
 だろうが!」
 するとジジイはため息を1つついて、話を切り替えてきやがった。
ため息をつきたいのはこっちだ。
「お主は、今わしとお主の会話を中
 継しているこの本のことが気にな
 らんのかのー?」
 ・・・確かに気になる、だがそこからジジイの声が聞こえてきた時点で、思考の中からこの不思議な本のことは消えていた。
それに加え、俺の中でのこの本の評価は、今のところ最悪だと言ってもいい。
話を聞いたところで、ジジイのすることだからなぁ。
またとんでもないことをして来そうで怖い。
「ふむ、それでは説明してやろう」
 この数秒の沈黙を同意と受け取りやがった。
はぁ、もう何でもいいや。
「と言っても、実際に説明するのは
 わしではないぞ」
「へ?」
 今までは本のページにはっきりと現れていた魔法陣のようなものが、少しずつ薄くなり始める。
「後は、よろしく頼むぞ。それじ
 ゃ、上手くやるんじゃぞー」
「お、おい!ちょっと待てって!」
 魔法陣のようなものが完全に消える。
それと同時に、ブツンと何かが切れた音がした。
そして次の瞬間、
〔ここから先は私がお話し致しま
 す、転生者様〕
「ギャー!本が喋った〜!」
 ジジイではない声が、俺に喋りかけてきた。
〔そんなに驚かないでください。少
 し悲しくなってしまいます〕
 その言葉を聞いて、俺はいくらか冷静さを取り戻す。
「お、お前は誰だ?」
〔私は今あなた様の目の前で浮かん
 でいる本です〕
「お、おぉ。そうなのか」
 正直聞きたいのはそこじゃないんだが、どうやらそういうことらしい。
オーケー、理解した。
〔頭が良くてとても助かります。私
 を創り出したあの神様とは、会話
 するのも一苦労だったので〕
「・・・何だか君とは仲良くなれる
 気がするな」
〔そう言って頂けて嬉しいです〕
「なら俺達は『同志』だな!」
〔『同志』、ですか。何だかとても
 良い響きです〕
勢いでつい言ってしまったのだが、どうやら受け入れられたようだ。
どうしよう、嬉しい、凄く嬉しい。
『同志』というのはこんなにも素晴らしいものだったのか。
さっきは評価は最悪だとか言ってごめんな。
君は最高の本だよ。

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