姫騎士とペットなオレ

エルトベーレ

第13話 無限回廊

やがて袋から出されたオレは、怪しい殺風景な部屋に連れられ、イスに縛り付けられる。


「久しぶりだな、試作体。私が与えたそれ・・も、上手く使えているようじゃないか」
すると、白衣の男は一本のナイフを取り出した。鍔のない、手術用のメスのようなナイフ。
それを、オレの腹に押し当てようとする。が、障壁が邪魔をして、切ることができない。


「ふふふ、無駄だ。これは魔術を打ち破る特殊な素材でできている。確かにお前の魔力は強力だが、障壁が破られるのも時間の問題だぞ?」
その実、刃先は徐々に障壁を裂いて、オレの腹に近づいている。
そしてついに、障壁が完全に破られてしまった。


「よし今だ、麻酔を刺せ」
注射器を刺されたオレは、そこで意識を失った。


次に目が覚めたときは、別の部屋に移されていた。今度はもっと頑丈そうな部屋。
縛り付けられていないのに、動けない。


すると、天井から強い光を浴びせられる。
何だこれ、身体が……、勝手にチカラを引き出そうと……。
身体の内からチカラが放出されていくのがわかる。そう、アズールに魔力を分け与えたときのような、あの感覚だ。
止められない。苦しい。
このままだと、オレ、死ぬ……!


突然、爆音とともに部屋の壁が破壊された。
土煙の中、現れたのは、紺碧の竜。


『我の鱗に魔力を感じたのでな。助けに来たぞ』
やっぱり、もらっといてよかった……。
『さぁ、乗れ』
オレは何とかアズールの差し出す手に乗る。


「何事だ!」
「博士! ドラゴンです!」
白衣の男たちが慌てふためく中、アズールはその長い尾を振り回し、翼で強風を起こして施設をめちゃくちゃに破壊する。


『ここはモンスターの実験場だ。許される行いではない』
『……あんた、もしかして知ってたのか? オレが実験動物だって』


アズールはオレを連れて飛び立ち、話の続きを始める。
『確証はなかったがな。お前の魔力は天然のものより上質だった。そして、その身体に見合わない量。導き出される答えは一つだった。だが、そんなものは伝説上のものでしかない、そう思ってもいたのだ』
導き出される答えは一つって、オレはわからないんだけど……。


『……オレの身体はどうなってるんだ?』
『お前の体内にあるのは恐らく、“無限回廊”』
『無限回廊……?』
『魔力生成の永久機関だ。どんな技術で再現したのかはわからないが、間違いないだろう』
なら、オレの身体からは魔力が湯水のように湧いてくるってことか? それって、あらゆる魔術を使うことができるとも言い換えられないか?


『魔術って、どうやって使うんだ? 例えば、空を飛びたいって思ったら、空を飛ぶ魔術はどうやって使う?』
『そう強く念じれば使えるさ。己の思念を具現化するものだからな、魔術は』
思念を具現化……。もし、オレが人間に戻りたいと願えば、叶うってことか。


そうこうしてるうちに、アズールは町外れの広場に降り立った。
『この町にお前の仲間がいるはずだ』
『ありがとう』
『礼には及ばない。約束だからな』
それだけ言って、アズールは再び飛び立った。


本当にありがとう、アズール。
鱗の約束は一度きり。もう会えないんだろうな。

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