姫騎士とペットなオレ
第9話 新たな出逢い
そっと、グレーテのくちびるがオレの額に触れた。
オレとグレーテは沈黙の中、お互いに見つめ合う。
……何も、起こらなかった。嬉しいような、少しがっかりしたような。
「あはは、そうだよね。そんなわけないよね。ごめんごめん」
グレーテも、少し期待していたんだろう。だからか、その声は少し上擦って聞こえた。
「ふわぁ〜、なんか眠くなってきちゃった。コットン、見張り頼んでいい?」
オレは右前足を上げる。
「ありがとう。じゃあわたし、少し仮眠取るね。何かあったら……起こして……」
最後まで言ったか言わないかわからないうちに、グレーテは岩に背中を預けて眠りについた。
よっぽど疲れがたまっていたのかな。
こんなオレでも頼りにしてくれるんだ。その期待に応えなきゃ。
しばらくして、近くの茂みが揺れた。
カティアが帰ってきたのかな。そんなことを思ったが、茂みから出てきたのは、小さなモンスター。
今のオレと同じくらいの大きさ。オレと同じで少しぽっちゃりしていて、ウサギのような長い耳を持つ。それでいて尻尾はネコのように細く長い。体毛の色はオレと違い、キレイな雪白色だ。何よりも、宝石のようなそのピンクのつぶらな瞳が印象的だった。
クラビーだ。しかもメスの。何故性別がわかるかは本能的なものだと思う。人間だって、見れば大体は男か女かわかるだろう。そんな感じだ。
彼女は周囲を警戒しつつ、ひょこひょこと短い四肢で飛び跳ねながらオレの方へ向かってくる。
すぐそばで見ると、尚のことその毛並みの美しさに見惚れてしまう。野生だと思うけど、誰かに手入れされているかのように整っている。
『あ、あの……』
彼女が絞り出すように言葉を発する。
『……素敵、です』
開口一番、そんなことを言われた。
真っ先に浮かんだ感情は驚きだ。まさか、モンスターにそんなことを言われるなんて、思いもしなかった。
うるうるした瞳は光を浴びて輝きを増している。本物の宝石みたいだ。なんとなく、頬も赤いような気がする。
『キミは……?』
『あ、えっと、レイミィと言います……』
『オレは……コットンだ』
今のオレはこっちの名前がふさわしい。今のオレは、彼女と同じモンスターなんだから。
お互いに名乗った後は、会話もなく、視線を合わせるでもなく、ただ沈黙が続く。少し居たたまれない。
『あの……、レイミィはこんなところで何を?』
仕方なく、オレの方から話題を振ってみる。
『私……、相手がいなくて……』
『相手……?』
オレのように、主人がってことか?
『はい……。だから、誰にも相手にされなくて、群れから追い出されちゃったんです……』
群れからってことは、飼い主とは違うな。相手……か。
『そうなんだ。レイミィ、可愛いのにね』
あれ、なんでオレ、可愛いなんて……。相手はモンスターなのに。まさかオレ、心までモンスターになりかけてるんじゃ……。
『か、可愛いだなんて……っ』
照れたようにしながらも、彼女はオレに身体を擦り付けてくる。
……あ、わかった。もしかして……発情期?
オレとグレーテは沈黙の中、お互いに見つめ合う。
……何も、起こらなかった。嬉しいような、少しがっかりしたような。
「あはは、そうだよね。そんなわけないよね。ごめんごめん」
グレーテも、少し期待していたんだろう。だからか、その声は少し上擦って聞こえた。
「ふわぁ〜、なんか眠くなってきちゃった。コットン、見張り頼んでいい?」
オレは右前足を上げる。
「ありがとう。じゃあわたし、少し仮眠取るね。何かあったら……起こして……」
最後まで言ったか言わないかわからないうちに、グレーテは岩に背中を預けて眠りについた。
よっぽど疲れがたまっていたのかな。
こんなオレでも頼りにしてくれるんだ。その期待に応えなきゃ。
しばらくして、近くの茂みが揺れた。
カティアが帰ってきたのかな。そんなことを思ったが、茂みから出てきたのは、小さなモンスター。
今のオレと同じくらいの大きさ。オレと同じで少しぽっちゃりしていて、ウサギのような長い耳を持つ。それでいて尻尾はネコのように細く長い。体毛の色はオレと違い、キレイな雪白色だ。何よりも、宝石のようなそのピンクのつぶらな瞳が印象的だった。
クラビーだ。しかもメスの。何故性別がわかるかは本能的なものだと思う。人間だって、見れば大体は男か女かわかるだろう。そんな感じだ。
彼女は周囲を警戒しつつ、ひょこひょこと短い四肢で飛び跳ねながらオレの方へ向かってくる。
すぐそばで見ると、尚のことその毛並みの美しさに見惚れてしまう。野生だと思うけど、誰かに手入れされているかのように整っている。
『あ、あの……』
彼女が絞り出すように言葉を発する。
『……素敵、です』
開口一番、そんなことを言われた。
真っ先に浮かんだ感情は驚きだ。まさか、モンスターにそんなことを言われるなんて、思いもしなかった。
うるうるした瞳は光を浴びて輝きを増している。本物の宝石みたいだ。なんとなく、頬も赤いような気がする。
『キミは……?』
『あ、えっと、レイミィと言います……』
『オレは……コットンだ』
今のオレはこっちの名前がふさわしい。今のオレは、彼女と同じモンスターなんだから。
お互いに名乗った後は、会話もなく、視線を合わせるでもなく、ただ沈黙が続く。少し居たたまれない。
『あの……、レイミィはこんなところで何を?』
仕方なく、オレの方から話題を振ってみる。
『私……、相手がいなくて……』
『相手……?』
オレのように、主人がってことか?
『はい……。だから、誰にも相手にされなくて、群れから追い出されちゃったんです……』
群れからってことは、飼い主とは違うな。相手……か。
『そうなんだ。レイミィ、可愛いのにね』
あれ、なんでオレ、可愛いなんて……。相手はモンスターなのに。まさかオレ、心までモンスターになりかけてるんじゃ……。
『か、可愛いだなんて……っ』
照れたようにしながらも、彼女はオレに身体を擦り付けてくる。
……あ、わかった。もしかして……発情期?
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