姫騎士とペットなオレ
第8話 エルナ・グレーテ・フォン・エッフェンベルク
「あ、国境が見えてきた。すごい、あっという間だね!」
「うう……やっとですか」
空の旅ではしゃぐグレーテと対照的に、カティアは半ば放心状態だ。
『この先の森に降りる。しっかり掴まっていろ』
すると、アズールはスピードを緩め、段々と高度も落としていく。そしていい具合に広場を見つけると、そこ目がけて急降下した。
『ありがとう、アズール』
『礼には及ばん。では、さらばだ』
グレーテとカティアの二人も降りたのを確認すると、アズールは再び翼をはためかせて飛び上がった。
「ありがとね~!」
グレーテが手を振って見送る。
「さて、これで家出大作戦は成功したけど、これからどうする?」
「エルナ様、まさか、何もお考えでないのですか……?」
「うん、まぁ……」
とりあえず家を出たかっただけで、こんなとこまで来るかよ……。
「ひとまず、今夜の宿を探しましょうか」
今夜の宿は、ちょうどいい岩場があったので、そこに決まった。
「では、私は食材を探してきます。エルナ様はここでお待ちください」
「はーい。じゃあコットン、わたしとお話ししましょう?」
オレは右前足を上げる。イエスの返事だ。
「……わたしね、本当はエッフェンベルク王国の王女なの。第二王女、だけどね」
グレーテはオレに、自分の身の上を話し出した。
どこか寂しい目をしてる気がするけど、楽しげでもあった。話を聞いてほしいのだろう。
「でもお父様が、わたしを同盟相手のところへ無理やり嫁がせようとしたの。だから、お城を抜け出したんだ」
政略結婚ってやつか……。本当にあるんだな。
「今まではほとんどお城の外に出してもらったことなかったから、すごく新鮮なんだ。あなたみたいなモンスターがいるっていうのも、知らなかったし」
思い返せば、グレーテは何にも物怖じしなかったな。むしろ、モンスターが本当は恐ろしいものだってわかってるカティアの反応の方が自然だよな。グレーテがあまりにも当然にオレを受け入れてくれるもんだから、すっかり気が付かなかったよ。
「わたしの知識によると、あなたは魔術が使えるモンスター、魔術体質って言うらしいの。障壁や、剣の姿に変身できるのは、たぶんそのせい。人の言葉がわかるのも、もしかしてそのせいかな」
人の言葉がわかるのは、オレが元は人間だからだよ。って、伝えるすべはないんだよな……。こっちから伝えられるのはイエスかノーだけ。もどかしいな……。
オレは間近にあるグレーテの頭に手を伸ばしてみる。ダメだ、届かない。精一杯身体を伸ばしても、少し垂れている前髪に触れることしかできない。
「ん? なぁに、どうしたの?」
魔術体質のこと、もっと知りたい。グレーテの話をもっと聞きたい。
「コットンはいつもわたしを守ってくれるよね。ありがとう。コットンはさ……わたしのこと、好き?」
唐突な質問に、オレは咄嗟に右前足を上げた。
「本当!? わたしも好きだよ~!」
グレーテに頬ずりされる。柔らかい。温かい。毛皮越しでもわかる。
「ねぇ、コットンってさ、実は人間だったり……なんてことはない、かな……?」
え……どうしてそれを? いや、別に気づかれて困ることは……なくはないけど。裸とか見ちゃってるし。
「獣の姿に変えられた王子様は、お姫様のキスで元の姿に戻れたりするよね。もしかして、コットンも……」
グレーテが逃がさないと言わんばかりに両手でオレを捕まえ、まだあどけなさの残るくちびるを寄せてくる。
これ、本当に元に戻ったら……嬉しいような、もったいないような……。
「うう……やっとですか」
空の旅ではしゃぐグレーテと対照的に、カティアは半ば放心状態だ。
『この先の森に降りる。しっかり掴まっていろ』
すると、アズールはスピードを緩め、段々と高度も落としていく。そしていい具合に広場を見つけると、そこ目がけて急降下した。
『ありがとう、アズール』
『礼には及ばん。では、さらばだ』
グレーテとカティアの二人も降りたのを確認すると、アズールは再び翼をはためかせて飛び上がった。
「ありがとね~!」
グレーテが手を振って見送る。
「さて、これで家出大作戦は成功したけど、これからどうする?」
「エルナ様、まさか、何もお考えでないのですか……?」
「うん、まぁ……」
とりあえず家を出たかっただけで、こんなとこまで来るかよ……。
「ひとまず、今夜の宿を探しましょうか」
今夜の宿は、ちょうどいい岩場があったので、そこに決まった。
「では、私は食材を探してきます。エルナ様はここでお待ちください」
「はーい。じゃあコットン、わたしとお話ししましょう?」
オレは右前足を上げる。イエスの返事だ。
「……わたしね、本当はエッフェンベルク王国の王女なの。第二王女、だけどね」
グレーテはオレに、自分の身の上を話し出した。
どこか寂しい目をしてる気がするけど、楽しげでもあった。話を聞いてほしいのだろう。
「でもお父様が、わたしを同盟相手のところへ無理やり嫁がせようとしたの。だから、お城を抜け出したんだ」
政略結婚ってやつか……。本当にあるんだな。
「今まではほとんどお城の外に出してもらったことなかったから、すごく新鮮なんだ。あなたみたいなモンスターがいるっていうのも、知らなかったし」
思い返せば、グレーテは何にも物怖じしなかったな。むしろ、モンスターが本当は恐ろしいものだってわかってるカティアの反応の方が自然だよな。グレーテがあまりにも当然にオレを受け入れてくれるもんだから、すっかり気が付かなかったよ。
「わたしの知識によると、あなたは魔術が使えるモンスター、魔術体質って言うらしいの。障壁や、剣の姿に変身できるのは、たぶんそのせい。人の言葉がわかるのも、もしかしてそのせいかな」
人の言葉がわかるのは、オレが元は人間だからだよ。って、伝えるすべはないんだよな……。こっちから伝えられるのはイエスかノーだけ。もどかしいな……。
オレは間近にあるグレーテの頭に手を伸ばしてみる。ダメだ、届かない。精一杯身体を伸ばしても、少し垂れている前髪に触れることしかできない。
「ん? なぁに、どうしたの?」
魔術体質のこと、もっと知りたい。グレーテの話をもっと聞きたい。
「コットンはいつもわたしを守ってくれるよね。ありがとう。コットンはさ……わたしのこと、好き?」
唐突な質問に、オレは咄嗟に右前足を上げた。
「本当!? わたしも好きだよ~!」
グレーテに頬ずりされる。柔らかい。温かい。毛皮越しでもわかる。
「ねぇ、コットンってさ、実は人間だったり……なんてことはない、かな……?」
え……どうしてそれを? いや、別に気づかれて困ることは……なくはないけど。裸とか見ちゃってるし。
「獣の姿に変えられた王子様は、お姫様のキスで元の姿に戻れたりするよね。もしかして、コットンも……」
グレーテが逃がさないと言わんばかりに両手でオレを捕まえ、まだあどけなさの残るくちびるを寄せてくる。
これ、本当に元に戻ったら……嬉しいような、もったいないような……。
「姫騎士とペットなオレ」を読んでいる人はこの作品も読んでいます
-
最強剣士の息子は最強魔法師を目指す模様です
-
8
-
-
(旧)こっそり守る苦労人
-
1
-
-
異世界でひたすらコンティニュー!
-
4
-
-
日常のち冒険~俺は世界を超えて幼馴染を救う~
-
4
-
-
The hater
-
4
-
-
居候人は冒険者で店員さん
-
1
-
-
異世界転移で無双したいっ!
-
5
-
-
ティーガー戦車異世界戦記 ~小さな希望を紡ぐ姫と鋼鉄の王虎を駆る勇者~
-
3
-
-
夏の仮睡
-
4
-
-
異世界クロスロード ゆっくり強く、逞しく
-
7
-
-
苦労して魔王を倒したと思ったら勇者パーティーを追い出された件
-
2
-
-
僕のお姫様
-
3
-
-
タイムカプセル・パラドックス
-
2
-
-
犬が吠える
-
1
-
-
世界の真実を知るためには生贄が必要と言われ、問答無用で殺された俺と聖女 〜実はこっちが真の道!? 荷物運びと馬鹿にされた【空間魔法】で真の最強へ至る〜
-
3
-
-
地球で独身貴族を貫いたお爺さん(元ラノベ作家)は異世界転移して賢者になるそうですよ
-
5
-
-
【ジョブチェンジ】のやり方を、《無職》の俺だけが知っている
-
4
-
-
彼の名はドラキュラ~ルーマニア戦記~改訂版
-
10
-
-
勇者はなぜチーレムなのか?~剣と魔法の異世界白書~
-
5
-
-
銀の魔眼は楽園を夢見る
-
3
-
コメント