姫騎士とペットなオレ
第3話 覚醒も突然に
「エルナ様!」
茂みから現れたのは、大きな黒いトカゲ。
いや、オレはこれに似た生き物を知っている。ティラノサウルスがもし生きていたら、たぶんこんな感じなんだろう。
「こいつはそこいらのモンスターとは格が違います! お逃げください!」
「そんな! カティアは?」
「私は大丈夫です。……すぐ、追いつきますから」
カティアさん、それ死亡フラグ……。
「嫌! カティアが死ぬなら、わたしもここで……!」
「なりません! 貴方様は、こんなところで果てていいお方ではありません。その子を連れて逃げなさい」
カティアは黒い竜に向けて剣を抜き、斬りかかる。が、その鎧のように頑丈そうな皮膚には傷一つつけられない。
オレには、何もできないのか……? オレだって、モンスターの端くれなんだろ? オレじゃ、主人を守ることもできないのか……?
そんなの嫌だ!
オレはグレーテの腕から飛び出し、カティアと彼女に獰猛な牙を向ける黒い竜との間に割って入る。
「コットン! 危ない!」
ごめん、グレーテ。出会えたばかりなのに。でも、君に会えて、オレはそれだけで幸せだったよ。オレの分まで、長生きしてくれ。
しかし、その牙はオレには届かなかった。
「えっ、どういうこと?!」
黒い竜はなおも、長い尾でオレを叩きつけようとするが、オレを傷つけることができない。
「あれは……障壁?」
どうやらオレの周りに張られてるバリアみたいなやつは、障壁というらしい。
「え、なんでコットンが魔術を……?」
「何にしても、助かりました。エルナ様、今のうちに逃げましょう」
しかし、グレーテはこれを拒んだ。
「ダメ。コットンを置いてけない」
ああ、やっぱりこの人に拾われてよかった。
オレはこの人のチカラになりたい。この人を守る盾に。この人を守る剣に。
オレの中に芽生えたイメージは、すぐに形になった。
突然、オレの身体が変化し、形を変えていく。人間に戻れるかと思ったが、予想を遥かに裏切る形で、オレは彼女のチカラとなった。
「コットン……、あなたは……」
グレーテはそう呟きながら、姿を変えたオレを手にする。
オレだって戸惑ってるさ。でも今は、あなたのチカラになりたいんだ。オレを使ってほしい。きっと、あいつを切り裂いてみせるから。
グレーテはオレを構えたまま、黒い竜の突撃を紙一重でかわしながら、奴の懐に潜り込む。そして、その強靭な皮膚にオレを突き立て、一振りに斬った。
黒い竜は苦しげな唸り声を上げながら、森の奥へと去っていった。
「エルナ様!」
「やったよ……! コットン、あなたのおかけで……」
オレは再びクラビーの姿に戻る。すると、グレーテに抱きしめられた。
「すごいねぇ! こんなことができるなんて、思わなかったよ〜」
オレ自身も、知らなかった。
ただ彼女を守りたくて、彼女のチカラになりたくて……。
オレには、それができるんだ。
しかし、カティアはそんなオレを歓迎していなかった。
「……エルナ様、そいつから離れてください」
剣を収めることなく、明らかな敵意とともに、オレに向けている。
「カティア! やめて!」
「魔術を扱うクラビーなど、聞いたことがありません。何者です?」
そう言われても……。
それに、魔術って……? さっきオレがやった変身とか、障壁とかがそうなのだろうか。でも、あれはたまたまっていうか。
まぁ、伝わるわけないんだけど。
「カティア、剣を収めなさい。これは命令です。二度と、コットンに手を上げないで」
「……はい」
……すごい。それだけ絶対的な主従の関係なんだろう。
「わたし達のこと、守ってくれようとしたんでしょ? あなたのことはゆっくり教えて。あなた自身もわからないなら、一緒に調べていきましょう?」
オレはその言葉に頷いてみせる。
「あら、人の言葉がわかるの? 賢いんだね〜。改めて、よろしくね」
こうして、オレは異世界で出会った少女、グレーテのペットになったのだった。
茂みから現れたのは、大きな黒いトカゲ。
いや、オレはこれに似た生き物を知っている。ティラノサウルスがもし生きていたら、たぶんこんな感じなんだろう。
「こいつはそこいらのモンスターとは格が違います! お逃げください!」
「そんな! カティアは?」
「私は大丈夫です。……すぐ、追いつきますから」
カティアさん、それ死亡フラグ……。
「嫌! カティアが死ぬなら、わたしもここで……!」
「なりません! 貴方様は、こんなところで果てていいお方ではありません。その子を連れて逃げなさい」
カティアは黒い竜に向けて剣を抜き、斬りかかる。が、その鎧のように頑丈そうな皮膚には傷一つつけられない。
オレには、何もできないのか……? オレだって、モンスターの端くれなんだろ? オレじゃ、主人を守ることもできないのか……?
そんなの嫌だ!
オレはグレーテの腕から飛び出し、カティアと彼女に獰猛な牙を向ける黒い竜との間に割って入る。
「コットン! 危ない!」
ごめん、グレーテ。出会えたばかりなのに。でも、君に会えて、オレはそれだけで幸せだったよ。オレの分まで、長生きしてくれ。
しかし、その牙はオレには届かなかった。
「えっ、どういうこと?!」
黒い竜はなおも、長い尾でオレを叩きつけようとするが、オレを傷つけることができない。
「あれは……障壁?」
どうやらオレの周りに張られてるバリアみたいなやつは、障壁というらしい。
「え、なんでコットンが魔術を……?」
「何にしても、助かりました。エルナ様、今のうちに逃げましょう」
しかし、グレーテはこれを拒んだ。
「ダメ。コットンを置いてけない」
ああ、やっぱりこの人に拾われてよかった。
オレはこの人のチカラになりたい。この人を守る盾に。この人を守る剣に。
オレの中に芽生えたイメージは、すぐに形になった。
突然、オレの身体が変化し、形を変えていく。人間に戻れるかと思ったが、予想を遥かに裏切る形で、オレは彼女のチカラとなった。
「コットン……、あなたは……」
グレーテはそう呟きながら、姿を変えたオレを手にする。
オレだって戸惑ってるさ。でも今は、あなたのチカラになりたいんだ。オレを使ってほしい。きっと、あいつを切り裂いてみせるから。
グレーテはオレを構えたまま、黒い竜の突撃を紙一重でかわしながら、奴の懐に潜り込む。そして、その強靭な皮膚にオレを突き立て、一振りに斬った。
黒い竜は苦しげな唸り声を上げながら、森の奥へと去っていった。
「エルナ様!」
「やったよ……! コットン、あなたのおかけで……」
オレは再びクラビーの姿に戻る。すると、グレーテに抱きしめられた。
「すごいねぇ! こんなことができるなんて、思わなかったよ〜」
オレ自身も、知らなかった。
ただ彼女を守りたくて、彼女のチカラになりたくて……。
オレには、それができるんだ。
しかし、カティアはそんなオレを歓迎していなかった。
「……エルナ様、そいつから離れてください」
剣を収めることなく、明らかな敵意とともに、オレに向けている。
「カティア! やめて!」
「魔術を扱うクラビーなど、聞いたことがありません。何者です?」
そう言われても……。
それに、魔術って……? さっきオレがやった変身とか、障壁とかがそうなのだろうか。でも、あれはたまたまっていうか。
まぁ、伝わるわけないんだけど。
「カティア、剣を収めなさい。これは命令です。二度と、コットンに手を上げないで」
「……はい」
……すごい。それだけ絶対的な主従の関係なんだろう。
「わたし達のこと、守ってくれようとしたんでしょ? あなたのことはゆっくり教えて。あなた自身もわからないなら、一緒に調べていきましょう?」
オレはその言葉に頷いてみせる。
「あら、人の言葉がわかるの? 賢いんだね〜。改めて、よろしくね」
こうして、オレは異世界で出会った少女、グレーテのペットになったのだった。
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