姫騎士とペットなオレ
第5話 人の言葉がわかる?
気が付くとオレは、狭くて暗い場所に閉じ込められていた。
何だ、ここ。布の中にでも押し込められてるのか? それにしては、この温かい壁は何だ?
「ひゃっ」
頭上から聞こえたのはグレーテの声。
よく見ると、上から光が漏れている。オレはそこから顔を出してみると、すぐそこにグレーテの顔があった。
「もう、隠れててよ」
オレが閉じ込められていたと思ったのは、グレーテの服の中だった。壁だと思ったものは彼女の背中。どうしてこんなことに……?
グレーテの言うとおり、とりあえずオレは再び顔を引っ込める。
一瞬見えた景色は、教科書で見た昔のヨーロッパの町みたいだった。オレが寝ている間に、昨日言っていた街まで着いたんだ。
ああ、そうか。オレは今、モンスターなんだ。さすがに堂々と連れ歩けたりはしないか。
しばらくして、グレーテの首元が緩められる。
「もう出てきていいよ」
その言葉を聞くと、オレは恐る恐る顔を出す。どうやら宿屋の一室のようだ。
「お嬢様はここにいてください。私が変装して情報を集めてきます」
「うん、お願い」
変装と言っても、着替えて髪型を変え、眼鏡をかけただけだ。見る人が見れば、すぐわかるだろう。それでもそう簡単に気づかせないためか。
カティアが出ていくと、グレーテは鎧を脱いで、白いワンピース姿に着替えた。
「ふぅ、やっぱこの方が落ち着くなぁ。ね、コットン。あなたは人の言葉がわかるの?」
オレと向き合うようにベッドに横になりながら、グレーテが尋ねてくる。その瞳は、好奇心旺盛な子どもそのものだ。
オレはふんふんと頷いてみせる。
「じゃあ、はい、ならこっちの手」
グレーテがオレの右前足に触れ、続けて左前足にも触れる。
「いいえ、ならこっちの手を上げてね」
オレはその言葉に頷いた。
「わたしはグレーテ?」
右前足を上げてみる。すると、彼女は目を輝かせて頬ずりしてきた。
「すご~い! そう、わたしはグレーテだよ。はい、ご褒美」
差し出されたのは、昨夜食べた赤い木の実。オレはそれを前足でうまく受け取り、口に運ぶ。
「よしよし。じゃあ、わたしはカティア?」
今度は左前足を上げる。
「そう! すごいね~! はい、またご褒美だよ~」
またまたあの赤い木の実をもらった。なるほど、こうやれば意思疎通もできるな。人間の言葉もモンスターの言葉も理解できるって、オレ、なかなか珍しい存在じゃないか?
「じゃあ……」
グレーテは起き上がって、ベッドに座る。
「わたしの肩まで登ってみて?」
そんなの朝飯前だ。
グレーテの腕を伝って、オレは彼女の小さな肩に登った。
「本当にわたしの言葉がわかるのね! じゃあ、ときどきわたしとお話ししましょう?」
グレーテは寂しかったのかな。カティアとは気楽に話せそうでもないし、話し相手ができて、余計に嬉しいのかもしれない。
オレは小さく頷いて、彼女の頬をペロペロと舐めた。……美少女のほっぺたを舐めるのも、この姿だからできることだよな。
「うふふっ、くすぐったいよ~」
そこへ、カティアが戻ってきた。
「お嬢様、またそのような格好を……。不用意に肌を晒すのはお慎みください」
「カティアは怒ってる?」
グレーテがこちらに視線を向けて言うので、オレは右前足を上げた。
「ううん。あれは怒ってないんだよ」
カティアは怪訝そうな顔で、その様子を見ていた。
何だ、ここ。布の中にでも押し込められてるのか? それにしては、この温かい壁は何だ?
「ひゃっ」
頭上から聞こえたのはグレーテの声。
よく見ると、上から光が漏れている。オレはそこから顔を出してみると、すぐそこにグレーテの顔があった。
「もう、隠れててよ」
オレが閉じ込められていたと思ったのは、グレーテの服の中だった。壁だと思ったものは彼女の背中。どうしてこんなことに……?
グレーテの言うとおり、とりあえずオレは再び顔を引っ込める。
一瞬見えた景色は、教科書で見た昔のヨーロッパの町みたいだった。オレが寝ている間に、昨日言っていた街まで着いたんだ。
ああ、そうか。オレは今、モンスターなんだ。さすがに堂々と連れ歩けたりはしないか。
しばらくして、グレーテの首元が緩められる。
「もう出てきていいよ」
その言葉を聞くと、オレは恐る恐る顔を出す。どうやら宿屋の一室のようだ。
「お嬢様はここにいてください。私が変装して情報を集めてきます」
「うん、お願い」
変装と言っても、着替えて髪型を変え、眼鏡をかけただけだ。見る人が見れば、すぐわかるだろう。それでもそう簡単に気づかせないためか。
カティアが出ていくと、グレーテは鎧を脱いで、白いワンピース姿に着替えた。
「ふぅ、やっぱこの方が落ち着くなぁ。ね、コットン。あなたは人の言葉がわかるの?」
オレと向き合うようにベッドに横になりながら、グレーテが尋ねてくる。その瞳は、好奇心旺盛な子どもそのものだ。
オレはふんふんと頷いてみせる。
「じゃあ、はい、ならこっちの手」
グレーテがオレの右前足に触れ、続けて左前足にも触れる。
「いいえ、ならこっちの手を上げてね」
オレはその言葉に頷いた。
「わたしはグレーテ?」
右前足を上げてみる。すると、彼女は目を輝かせて頬ずりしてきた。
「すご~い! そう、わたしはグレーテだよ。はい、ご褒美」
差し出されたのは、昨夜食べた赤い木の実。オレはそれを前足でうまく受け取り、口に運ぶ。
「よしよし。じゃあ、わたしはカティア?」
今度は左前足を上げる。
「そう! すごいね~! はい、またご褒美だよ~」
またまたあの赤い木の実をもらった。なるほど、こうやれば意思疎通もできるな。人間の言葉もモンスターの言葉も理解できるって、オレ、なかなか珍しい存在じゃないか?
「じゃあ……」
グレーテは起き上がって、ベッドに座る。
「わたしの肩まで登ってみて?」
そんなの朝飯前だ。
グレーテの腕を伝って、オレは彼女の小さな肩に登った。
「本当にわたしの言葉がわかるのね! じゃあ、ときどきわたしとお話ししましょう?」
グレーテは寂しかったのかな。カティアとは気楽に話せそうでもないし、話し相手ができて、余計に嬉しいのかもしれない。
オレは小さく頷いて、彼女の頬をペロペロと舐めた。……美少女のほっぺたを舐めるのも、この姿だからできることだよな。
「うふふっ、くすぐったいよ~」
そこへ、カティアが戻ってきた。
「お嬢様、またそのような格好を……。不用意に肌を晒すのはお慎みください」
「カティアは怒ってる?」
グレーテがこちらに視線を向けて言うので、オレは右前足を上げた。
「ううん。あれは怒ってないんだよ」
カティアは怪訝そうな顔で、その様子を見ていた。
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