姫騎士とペットなオレ

エルトベーレ

第1話 旅立ちは突然に

 目が覚めて、飛び起きた。
 今、何時だ?
 時計を探す。あれ、確かこの辺に……あれ?
 ベッドから出てみると、何かを蹴飛ばした。嫌な予感がして視線を向ければ、それは紛れもなく目覚まし時計だった。時刻は七時を指したまま止まっている。
 つまり、犯行時刻は七時というわけだ。って、そんな場合じゃない。本当は今何時だ?

 オレは部屋を出てリビングに向かう。リビングの時計は既に十時を回っていた。
 机の上には、ラップのかけられた朝食と、一枚のメモ用紙。
『今日こそは遅刻しないで行きなさいよ。母より』
 何で起こしてくれなかったんだよぉぉぉ! 入学式から遅刻とかありえねぇよ。まだ間に合うとかそんな時間でもねぇ。
 でも、行かないよりは……。

 オレは大急ぎで準備して、家を飛び出した。と、家のドアを出ていきなり派手にすっ転んだ。
 くっそ、最悪だ。せっかくの制服も汚れちまうし……。踏んだり蹴ったりじゃないか。

 そこで気づいた。
 ここ、どこだ……?

 見回してみれば、どこもかしこも、木。森といった方が適切か。当たり前だが、オレの家は森の中にあったりなんかしない。
 それに、やけにデカい。樹齢何年かも知れない巨木だらけだ。

 もしかして、オレ、死んだのか……?
 最近流行りの異世界転生ってやつ? 家を飛び出した時にトラックにひかれて……あれ、でも女神様に会ってないな。
 でも間違いない。ここは異世界だ。だってそうだろ。オレの知っている世界に、あんなもの・・・・・はいない。
 見たこともない生き物。羽の生えた巨大なカバみたいなやつや、ネコくらいの大きさのリス。シカとウマとウシが混ざったような生き物もいる。

「お前、見ない顔だな」
 そのしわがれた野太い声に驚いて振り向けば、そこにいたのは小さなワニのようで、でも脚が六本もある生き物。
 えっと……、こいつが喋ったのか?
「名前は? どこから来た?」
 間違いない。こいつが喋っている。まぁ、異世界転生の特典としてモンスター語がわかるってのも悪くないな。
「オレは天城正景あまぎまさかげ。日本ってとこから来たんだけど、ここは?」
 ああ、地球って言った方が良かったかもしれない。
「アマギ……マサカゲ? 変な名前だな。俺様はジェイム。ここは見ての通り、森だ。人間たちはジョウカの森って呼んでるらしいが」
「人間? オレの他にも人間がいるのか?」
「はぁ? お前が人間?」
 そう言うと、ジェイムと名乗ったモンスターは笑い転げた。
「そこに湖がある。そこで自分の姿をよく見てみるんだな。自分が人間だと思ってやがるバカは、初めてだぜ」
 オレはその言葉に苛立ちを覚えながらも、言われた通り、水面に映った自分の姿を見てみた。
 全体的にウサギのような特徴を持ちながらも、どことなくイヌっぽくもネコっぽくもある。いや、ハムスターか? 全身は淡いクリーム色の毛で覆われている。
 これが、オレ……?
 改めて、自分の手足を眺め回してみる。
……ああ、やっぱりそうだ。オレ、モンスターになっちまったんだ。

「せいぜい人間に狩られないようにな。それより、他の奴に食われる方が先か?」
 なんて言いながら、ジェイムは茂みの奥へと去っていった。
 何だ、ムカつく奴だな。いいさ。オレはモンスターとしてやっていくさ。それで、人間に戻る方法と、元の世界に帰る方法を見つけてやる。

 そんな時、後ろの茂みが揺れた。

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