姫騎士とペットなオレ
第2話 出会いも突然に
茂みから現れたのは、一人の少女だった。
オレは彼女と目が合う。
真っ黒な長い髪に、透き通るような水色の瞳。古めかしい洋服には、所々鎧のようなものが取り付けられている。腰には剣と思わしきものを提げているが、騎士と呼ぶには露出が多い気がする。
端的に言うと、可愛かった。
「か……かわいい〜っ!」
彼女も、オレを見るなり目を輝かせた。
すると、その後ろから彼女よりも年上そうな女性が現れた。彼女の方が装備は厚く、切れ長の目は、いかにも真面目そうな感じがする。
「エルナ様、いくら可愛くても、あれはモンスターです。油断なきよう」
「でも、あんなかわいいんだよ? 害なんてないでしょ?」
そうだよ、オレは無害だよ! っていうか人間だもん。人間襲わないよ!
「いえ、しかし……」
「ほ〜ら、おいで。怖くないよ〜」
エルナと呼ばれた少女は、オレの方へ向けて両腕を広げる。
彼女の腕の中に飛び込めば、オレはきっと、モンスターとして生きることになるだろう。人間としてのオレを捨てることになる。
だけど、彼女の無垢で真っ直ぐな瞳を見ていると、それも悪くないかと思えてしまう。
よし、決めた。オレが人間に戻った暁には、オレはこの子と結婚しよう。
オレは意を決して、彼女の腕の中に飛び込んだ。彼女はそんなオレを、ぎゅっと抱きしめてくれる。
「あ〜、ふわふわ、もふもふだぁ〜」
「それはクラビーですね」
「クラビー?」
「そのモンスターの種族名です」
「ふーん。ねぇ、この子、連れてっていいでしょ?」
こんなところにいても、野垂れ死ぬのがオチだ。この子のそばで、この子に守ってもらえるなら、こんな幸せなことはない。
「もはや私が止めても、お聞き入れなさらないでしょう。致し方ありません」
「じゃあ、名前を考えないとね〜。うーん……コットンにしよう! ふわふわもふもふだし」
そんな安直な……。オレには天城正景って名前があってだな。
しかし当然ながら、オレの言葉は伝わらない。
「あ、わたしはグレーテ。本当はエルナ・グレーテ・フォン・エッフェンベルクって長い名前だけど、グレーテって覚えてくれればいいよ。よろしくね〜。う〜ん、ふわふわ〜」
グレーテに頬ずりされる。
うん、悪くない。オレ、この姿で良かったかもしれない。
「エルナ様。モンスターであること、お忘れなきよう」
「もう、カティアってば、嫉妬してるの?」
「違います。貴方様に何かあっては……」
さっきから気になってたけど、グレーテの方が身分が高いのかな。
「あ、あっちはカティア。ちょっと頑固者だけど、悪い人じゃないよ」
と、グレーテはオレに彼女を紹介してくれた。
すると、おもむろにカティアがオレを抱き上げ、しげしげとオレの身体を眺め回す。
「オスですね」
……悪かったな、オスで。
「どっちだって関係ないよ。さ、行こう?」
グレーテはカティアからオレを取り上げ、その胸に抱いてくれる。
ちょっと慎ましいけれども、たしかに膨らみかけの柔らかさを感じる。
カティアの方は少し不満そうだが、グレーテは幸せそうな面持ちだった。まるで、初めてペットを買い与えてもらった子供みたいだ。
突然、脇の茂みから重々しい咆哮が響いた。
オレは彼女と目が合う。
真っ黒な長い髪に、透き通るような水色の瞳。古めかしい洋服には、所々鎧のようなものが取り付けられている。腰には剣と思わしきものを提げているが、騎士と呼ぶには露出が多い気がする。
端的に言うと、可愛かった。
「か……かわいい〜っ!」
彼女も、オレを見るなり目を輝かせた。
すると、その後ろから彼女よりも年上そうな女性が現れた。彼女の方が装備は厚く、切れ長の目は、いかにも真面目そうな感じがする。
「エルナ様、いくら可愛くても、あれはモンスターです。油断なきよう」
「でも、あんなかわいいんだよ? 害なんてないでしょ?」
そうだよ、オレは無害だよ! っていうか人間だもん。人間襲わないよ!
「いえ、しかし……」
「ほ〜ら、おいで。怖くないよ〜」
エルナと呼ばれた少女は、オレの方へ向けて両腕を広げる。
彼女の腕の中に飛び込めば、オレはきっと、モンスターとして生きることになるだろう。人間としてのオレを捨てることになる。
だけど、彼女の無垢で真っ直ぐな瞳を見ていると、それも悪くないかと思えてしまう。
よし、決めた。オレが人間に戻った暁には、オレはこの子と結婚しよう。
オレは意を決して、彼女の腕の中に飛び込んだ。彼女はそんなオレを、ぎゅっと抱きしめてくれる。
「あ〜、ふわふわ、もふもふだぁ〜」
「それはクラビーですね」
「クラビー?」
「そのモンスターの種族名です」
「ふーん。ねぇ、この子、連れてっていいでしょ?」
こんなところにいても、野垂れ死ぬのがオチだ。この子のそばで、この子に守ってもらえるなら、こんな幸せなことはない。
「もはや私が止めても、お聞き入れなさらないでしょう。致し方ありません」
「じゃあ、名前を考えないとね〜。うーん……コットンにしよう! ふわふわもふもふだし」
そんな安直な……。オレには天城正景って名前があってだな。
しかし当然ながら、オレの言葉は伝わらない。
「あ、わたしはグレーテ。本当はエルナ・グレーテ・フォン・エッフェンベルクって長い名前だけど、グレーテって覚えてくれればいいよ。よろしくね〜。う〜ん、ふわふわ〜」
グレーテに頬ずりされる。
うん、悪くない。オレ、この姿で良かったかもしれない。
「エルナ様。モンスターであること、お忘れなきよう」
「もう、カティアってば、嫉妬してるの?」
「違います。貴方様に何かあっては……」
さっきから気になってたけど、グレーテの方が身分が高いのかな。
「あ、あっちはカティア。ちょっと頑固者だけど、悪い人じゃないよ」
と、グレーテはオレに彼女を紹介してくれた。
すると、おもむろにカティアがオレを抱き上げ、しげしげとオレの身体を眺め回す。
「オスですね」
……悪かったな、オスで。
「どっちだって関係ないよ。さ、行こう?」
グレーテはカティアからオレを取り上げ、その胸に抱いてくれる。
ちょっと慎ましいけれども、たしかに膨らみかけの柔らかさを感じる。
カティアの方は少し不満そうだが、グレーテは幸せそうな面持ちだった。まるで、初めてペットを買い与えてもらった子供みたいだ。
突然、脇の茂みから重々しい咆哮が響いた。
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