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エルトベーレ

4-5 名探偵・真白

結局オレは、考えても何も思いつかず、調査をしてみても全くと言っていいほど実にならなかった。
ヤバいな……本格的に役立たずだ。犬も歩けば棒に当たるというけど、オレは歩いてもかすりもしない。



そして木曜日の放課後、真白から連絡があった。
どうやらトリックを暴いたらしく、教室で待っているとのことだった。……マジかよ。


「佑馬くん。お待たせ」
何に対してのお待たせなのかわからなかったが、今日の彼女は、やはりいつもと雰囲気が違う。
いつもより、暗い。何かあったのだろうか。


「佑馬くん、もし、私が同じクラスだったとして、赤点を回避できそうになくて、どうしようもないって状況になったら、佑馬くんはどうする?」
唐突に、彼女はそんなことを言い出した。
何を考えてるんだ? トリックに関係があるのか?
「どうするも何も、もう一回一年生頑張れって言うだけだけど?」
「……薄情者。ばーかばーか」
拗ねたようにして返してくる。
子どもじゃねぇか。
「悪かったよ。そうだな……オレは一回くらい取っても大丈夫だろうから、オレが真白の答案を偽装するよ。こっそりサイン送っても、逆にそれがわからなかったりしそうだし」
あ、後半のは心の中で言うつもりだったのに、口に出してしまった。
「もうっ! 私を何だと思ってるのよっ」
「ごめんって。真白はオレのかわいい彼女だろ?」
「こういうときばっかりそうやって……。まぁ、いいけどさ……」
ちょっと口角が上がっている。
真白さんこんなにチョロくって、逆にオレ、心配だよ……。


「でね、それが答えなんだよ」
「え……?」
どれが答えだって……?
「答案を偽装するって言ってもね、出席番号順に並んでるから、離れてるとできないんだよ。だから、佑馬くんだと私の答案は偽装できないよ」
倉田と、松岡……たしかにそうか。
「ってことは、同じ列か。そこに協力者が……」
「そういうこと」
得意そうな顔をする真白。こういう顔見れるのは貴重だな。ケータイのホーム画面にしたい。
「もう、協力者も見つけてあるよ」
ここで、不意に真白の声のトーンが下がる。
そうか、その協力者探しで、何かあったんだな。
「久連山先輩と同じ列で、先輩より成績のいい人は一人だけだった。川瀬かわせ健介けんすけ先輩。その人のところに行って、話を聞いてきたんだけど……」
そこで彼女は言葉に詰まった。
彼女は言うべきかどうか、いや、言ってもいいのか迷っているように見えた。
「真白、言いたくないことがあれば、無理に言わなくていいぞ?」
しかし、真白は首を横に振った。
「ちゃんと言うよ。あのね……」


真白が川瀬先輩に美珠先輩の話題を出すと、“知りたければ教えてやる。ただし、俺と一回ヤらせろ”と言ってきたという。
真白はそこですかさず、“久連山先輩にもそう言って協力を持ちかけたんですか? 最低です”と言い返したそうだ。
すごいな、堀本先輩相手にびくびくしてた頃が懐かしいぞ。
すると川瀬先輩は、こう返したらしい。“違う、あいつが自分から……あっ”。口を滑らされたんだな。真白なんかに。哀れな奴……。


これは決定的な証拠だな。残念だけど。
「よくやったな、真白。……その後、何もされなかったか?」
「うん。奈菜先輩が通りかかったから、声かけたの」
それじゃあ会長も、もうこのことは知ってるんだろう。


「本当によくやったよ。だけど、もう無茶はしないでくれよ? 真白に何かあったら、オレは……」
そっと彼女を抱き寄せ、ぎゅっと抱きしめる。
「ちょっ、ちょっと、佑馬くん。苦しいって」
思いのほか力が入ってしまったらしい。少し力を緩めると、今度は彼女の方から身体を預けてきた。
「真白……」
「佑馬くん……私、頑張ったよね?」
「そうだな。頑張ったよ」
「だからさ……ご褒美、ほしいな」
真白は一旦身体を放し、顔を真っ赤にしながらオレを真っ直ぐ見つめる。
「何がほしいんだ?」
「……そんなの、自分で考えたら?」
めんどくさいな、女の子っていうのは。これで選択肢間違えたら怒られるぞ、きっと。最初からはっきり言ってくれればいいのに。
「じゃあ……期末テストの時も、勉強教えてやるよ」
「それは、彼氏として当然の義務ですぅ」
何がほしいんだよ……。
じっと彼女を見つめていると、彼女は不意に目を閉じた。
いや、おい、まさか……。
急に暴れ出す鼓動。まだ早いとオレに言い聞かせているみたいだ。でも、オレはそれを振り切って、彼女の唇に自分の唇を重ねた。
目を開ければ、満足そうな彼女の微笑みがあった。
「ありがと、佑馬くん」

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