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エルトベーレ

2-6 真白の心

「それで、佑馬くん。ちゃんと説明してくれるんだよね?」
いつもはオレの隣にいてくれるはずの真白は、この時だけはオレの向かいに座っていた。先輩は図書室の方で貸出返却業務をしている。気を遣ってくれたのかもしれない。
真白は少し疲れた様子で、少し申し訳なくなる。
「事件は無事に解決して、犯人も警察に引き渡したってさ」
「……え、終わり?」
真白はもっと詳しく聞きたかったのだろうが、そういうわけにもいかない。ショックを受けないように、真白には、制服を取られる前に捕まえたと言っておいたのだ。
「あ、えっと、手伝ってくれてありがとうな。結構恥ずかしい役回りだったと思うけど」
「いいの。おかげで犯人も捕まったし、……それに、佑馬くんの力になれたから」
彼女のその表情から、オレは彼女の心を汲み取れない。喜んでいるようにも見えれば、悲しんでいるようにも見える。どんな問題を解くよりも、女心の方がよっぽど難解だ。


そうして、オレと真白の間にぎこちない沈黙が訪れる。静寂は心地よいが、沈黙は居心地が悪い。
「あ、あの、さ。嫌だったら言ってくれていいんだぞ? だいぶ無理させてるような気がするし、怒られても仕方ないようなことばっかしてると思うから」
オレが無理に沈黙を破ろうとしたら、真白はいつになく真剣な表情で、静かに呟いた。
「……佑馬くん。私とあなたの関係は、なんですか……?」
まったく予想もしていなかった言葉が、彼女の口から発せられた。しかも、かなり重い話。
「……仮初めの恋人、じゃ、ないのか?」
彼女が目を伏せたのを見て、オレは答えを間違ったのだと気づいた。これは、彼女の望む答えじゃない。
「そっか……。そうだよね。ごめん、変なこと聞いて」
彼女は目を伏せたまま、消え入りそうな声を絞り出す。
「真白……、あの……」
オレが言いかけたとき、彼女の眼下に、雫が落ちた。それを見て初めて、オレは自分のしてしまった過ちの大きさに気が付いた。
「ごめん……なさい。今日はもう、帰ります……」
そう言って立ち上がった彼女を、オレは引き留めることができなかった。


彼女、松岡真白は隣のクラスの女子生徒だ。オレの恋人になんて、なるはずなかった女の子なんだ。だから、これでいいのかもしれない。オレたちは、本来の関係に戻るべきなのかもしれない。

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