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うちの姉ちゃんはこわい

エルトベーレ

ハードトレーニング

おれは今、サリ姉の部屋にいる。
そしてあろうことか、サリ姉の背を椅子のようにして座っている。普段なら、間違いなくぶち殺される。
だけど今日は、サリ姉にお願い(脅迫)されてこうしているのだ。



ことの始まりは二十分前。


「おい、ハル。ちょっと来い」


何か怒られるようなことしたかな……。何されるんだろう……。
逆らうことなどできず、おれはサリ姉についていく。
サリ姉の部屋につくと、サリ姉はうつ伏せに床に寝そべった。


「上に乗れ」


一瞬、何を言ってるかわからなくてうろたえていると、足首をひっぱられて、その場に転ばされた。


「乗れって言ってんの。わかる?」


……怖い。言われた通りにしないと殴られるかもしれない。
おれは渋々サリ姉の背に馬乗りになった。
すると、サリ姉の背が持ち上がる。かと思いきや、すぐに下がる。そしてまた持ち上がる。その繰り返しだ。
おれは納得した。トレーニングの相手をさせられているのだと。



そして今に至る、というわけ。
まぁ、おれとしても、サリ姉の上に乗るなんてそうそうないし、ちょっと偉そうな感じするし、いいかなと思っていたりする。


「サリ姉、いつもこんなことしてんの?」
「うるさいな、悪い?」
「いや、すごいなぁって」
「当たり前でしょ。あたしを誰だと、思ってるの?」


サリ姉はあの駒越こまごえ高校のエースなのだ。
去年、二年生だったけどエースとして全国優勝。今年は二連覇を目指すんだそうだ。
このままいくと、マリ姉に続いて、サリ姉も女子プロ野球選手になるんだろうなぁ。すごいことだ。


「おい、一旦降りろ」


サリ姉の命令で降りると、サリ姉は起き上がって、もう一度おれを背に負ぶる。
そのまましゃがんだり、立ったりを繰り返す。今度はスクワットだ。
明るい茶色の髪は、今日はポニーテールにしていて、ちょっとくすぐったい。
おれも成長していると思っていたのに、サリ姉の背中はまだ大きく感じる。こうしていると、なんだか懐かしい気分になるな……。
と、突然、ドスンと落とされ、お尻を強く打った。
せっかくの気分が台無しだよ……。


「いってぇ~、何も落とさなくたっていいじゃんか!」


見ると、サリ姉はフローリングの床に汗をぼたぼたと垂らしながら、膝をついていた。息も荒い。
そんなになるまで……。
おれはサリ姉の部屋を飛び出すと、風呂場からタオルを、冷蔵庫からお茶を取って、サリ姉の部屋に戻った。

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