8つ子の最後の一年

MINON

Story5.相棒、その後。

「ご飯だって言ってるでしょ!」急に、紫音が入って来た。
「あっ、あのさ紫音…。」部屋の中の状況を見て、紫音はただ事ではないことに気づく。「…ちょっと、冬也兄さん泣かせたの誰?」冬也兄さんが自分から泣くわけないと分かっている辺り、やっぱり紫音だ。「あ…俺っス。」春也兄さんが自白した。「全く…冬也兄さん泣かせたら本当はこんなことじゃ済まないんだよ!」
少し部屋が静まり返ってから、「もうご飯だから、降りてきなよ」と紫音が言った。流石。
紫音は、末っ子だけど面倒見が良くて、伯父さんが居ない間の家事を任されてる。今は俺、光也の相棒だが、昔は、冬也兄さんの相棒だった。だから、冬也兄さんが自分から泣くわけないと分かっている。
「さてと…紫音に怒られるから、もうそろそろ行こうかな」今まで喋らなかった冷也兄さんが言った。「…俺も」冬也兄さんと気まずそうにしていた春也兄さんも、冷也兄さんと一緒に降りていった。
残ったのは俺と冬也兄さんだけ。冬也兄さんは、俺としては、一緒にいる分には大丈夫だが、少し苦手だ。兄さんの、表情が読めない。
「…はぁ」俺がため息を吐くと、冬也兄さんが、「最近さ、紫音、無理してる様に見えない?」と言い出した。「俺は、そう見える。」まさか、冬也兄さんが同じ考えだとは思ってなかった。「うん…俺も。なんか、紫音ってさ、責任感強いから、何でもすぐ背負っちゃうんだよね。」今、微かだが、冬也兄さんが笑ったのを見た。



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