異世界召喚に巻き込まれたんだが、勇者がかなり弱くて人生詰んだ。

ノベルバユーザー210019

020 牛丼屋よりやすい

ズラリと立ち並ぶ机に椅子……そして、この場に座る者の大半がランチタイムを謳歌している。とでも言えば俺達がどこにいるかはなんとなくわかるだろう。
この国どころか世界規模で有名な学園というくらいだ。かなり豪勢で堅苦しいブルジョワ感満載なレストランちっくな食堂をイメージしていたんだが、そんな事はなく俺達庶民さんでも違和感なく親しめるような普通の食堂という印象を受けた。まぁ、いくら親しみやすいと言えどその規模はなかなかのものでかなりの広さとメニューの豊富さを誇っている。
「ん…美味いな!これでいくらつった?」
「ケンジ様が頼まれたのはお昼限定のランチメニューですので、250テリルですね。」
テリル、話によればリンゴが100テリル前後で手に入るという事だから、少々の差異はあれど、そのまんま日本でいう円という捉え方で問題ないと思う。250円で昼食ってかなりお財布に優しい、しかも味も文句なしの一品ときた。このクソジジイが学園長という許されざる汚点を除けばかなりいい学園だな。
「でしょっ!なんてったってこの私のお気に入りだもの」
「どの私だよ、ナチュラルに同行してんなや」
自信満々に胸を逸らしながらドヤ顔を見せつける赤髪ツインテールの少女。非常に遺憾だが容姿だけで言えば美少女と言える。だが、しかし胸が貧相だが。
胸が貧s。
「えー、お爺様がいいって言ったもんっ!」
「かわええ孫娘を蔑ろになどできんよ」
「自分は部下にさえも蔑ろにされてんのになぁ」
「皆までいうな、泣きたくなるじゃろて」
このひんぬーツインテールのバカは、あろうことかラブコメのテンプレとも言える衝突エンカウントとかいう一番やっちゃいかん王道の展開をやりやがった。いやまぁ空から70キロで突っ込んでくるのは王道とはいえんがこの際もうそこには目を瞑ろう。
というか瞑らせて?
こいつと会って間もないが、もう既にこいつの人間性というか生態は理解しつつある。ーー完全におてんば娘のそれだよね。
「なんでもいいけど、俺の飯をとるなぁあ!」
「なによケチ、さっきぶつかってきたんだからご飯くらいくれてもいいでしょーっ!」
「だから俺はその時の記憶がないって言ってるだろうがぁあっ!俺はっ!飯をっ!今日食べてないんだってっ!今食べなきゃいつたべるんだよっ!」
「一食抜いたって死にやしないんだから、私に譲りなさいよーっ!悪い事は言わないからっ!」
「はあああんっ!?そりゃこっちのセリフだよ!その触角引っ張ってやろうかぁあ!」
「触角じゃないもんねー!ばーかばーか!」
ガキがじゃあるまいし、バカバカしい事で争いやがって。目をさましてからタクトとミラはずっとこんな感じだ。タクトが他人と言い合いになるのは珍しい事なんだがなぁ。
「それで、ミラさんは校庭で何を?」
「んっそうそう!新しい魔導具が出来たからそれの試運転をちょっと。ほらみて、今回はだいぶ軽量化できたんだから」
魔導具…今朝方魔導車の話をステラがしてた時から機械っぽいものは全部魔導関連なんだろうなとは思ってたがビンゴだったらしい。ミラの左手に握られている長方形の媒体のような物がその魔道具なんだろうが、板チョコ程度の薄さしかなく本当に動くのか疑問すら感じる。
「こうやってね、魔力を流してあげるとッ」
長方形の少し上から半透明のコンフィグが出てきた。これは驚いた、ホログラムのような物だろうがこんな薄いデバイスでそれを可能になるまで地球ならあと何年掛かるんだろうかと考えるだけで頭の痛い話だよ。
「一応ね、術者の音声を管理する機能もつけたかったんだけど今は直入力のみにしてるわ。現状は大まかな浮遊距離と、スピードの設定とGの軽減の為の逆算式のみ組み込んであるんだけれどね、なんだかレスポンスが遅くて咄嗟の対応が今はできないんだぁ」
「えっ、それお前が作ったの?」
「ええ、そうだけど。なんで?」
「い、いや頭悪そうだなぁとか思ってたから驚いたというか、ちょっと拍子抜けというか……あ、いや凄いとは思うけど」
「ミラさんは、最年少で一級魔道技師の資格を持つすごい方なんですよっ!魔力の規模は勿論、扱える魔術に関しても豊富で素晴らしい方です!」
「まぁ、わしの孫娘じゃもん!」
お前の孫娘かどうかは兎も角、確かに凄い奴なのはわかった。ただのおてんば娘じゃあないらしい。
胸は貧s……
「すぐに気絶するあんたとは違うんだから、べーっ!」
「一々突っかかって来んなよっむかつくなぁ!てかなんで俺ばっかっ!なんでっ!?」
「だって、そっちの人は結構賢そうだもの」
あら、それはどうも。ですけどね、これ悲しいじじつですけどね
「言っとくが、タクトの方が賢いぞ。」
「ふふケンジ様ったら。またまた、ご冗談を……」
ステラ、お前酷いな。タクト結構凹んでるぞ?
「まぁ……見た方が速いだろ。ミラって言ったか?タクトにその魔道具の弄り方教えてみ?」
「はぁ?……まぁ、いいけどぉ、これ難しいよ?」
「じゃなきゃ意味ねーだろ」
「むぅ……ほら、ちょっとこっち来て。ここにね魔力を流し込んで、ここを押すと内部プログラムの構築と回路の変更が出来るように仕組んでるの。……まぁ、わからないと思うけどー」
「ふんふん……魔力とかいうなんとも曖昧で不確かな要素があるから無理かと思ったけど、結構合理的にできたんだなぁ。……あ、さっきレスポンスがどうのいってたよな?あー、魔力を感知した時に動作する内容が悪いな、全過程をオールクリアしたら作動ってトリガーが遅延を起こしてんだって。後はここの回路が無駄だから省いて……これ魔力流しっぱなしにしてるのはナンセンスだなぁ。一度起動したら魔道具側から断続的に魔力を供給するように変えて……よし、こんなんでどうよ?」
「………何それ。何それ何それ!意味わかんない!」
「あ、それとだな。音声感応はいいんだけど、折角のホロデバイスコントロールなんだからさ、右手に丸いホロのコントローラーを形成してその傾きと上昇下降を制御できる形にしてやれば尚よろしいとおもうぞ」
「……〜〜〜!なにそれっ!むかつくっ!むかつくけどありがとうっ!!これでいいっ!?」
「何怒ってんだよ……」
まぁ、そりゃ頭悪いと思ってたやつが初めて触るもんを理解した上でより良い改良を加えやがったら腹も立つわな。まぁ礼を言えるのは偉いとおもう。いい奴なんだろ、一応。
「ケ、ケンジ様っ本当にアレはタクト様ですか!?」
「まぁ、うん。普段はかなりアホそうだが、あいつ理数系はめちゃ強い。腹経つけど理数系だけは学年1位キープしてやがったし、俺は根っからの文系だから賢いって話ならやっぱタクトの方が上だわ。」
「ふふん、褒めてもよろしくてよ?」
とりあえず一発ぶん殴っといた。





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