異世界召喚に巻き込まれたんだが、勇者がかなり弱くて人生詰んだ。

ノベルバユーザー210019

番外編 もう一人の幼馴染と猿 03

目覚めの朝ってのは本当気持ちの良いもんだ。身体はスッキリ、心は晴れやか。 窓から射し込む陽の光が今日も良い天気だという事を語りに語り尽くしているわけなんだ。
ーー自力で起きた場合に限るんですけど。  
『…い……きなさい……起きなさいってば』
「委員長、痛い」 顔面に硬いものがガスガスと当たる感触がする。こりゃあれだな、踵だわ。間違いねーや。
ダボダボのパジャマを着た愛梨が目の前に、いや愛梨の足が完全に俺の顔を踏みにじっている訳なんだが、一部層には含まれん俺からしたらご褒美でもなんでもない。
「……ウチまで乗せてって」
「なんでこんな人っ子一人もいねぇような時間に行くんだぁって…あと5分まって…」
何時だと思ってやがらぁ、まだ6時前じゃねーか。
「見られたくないから早起きしてるんでしょっ!」
「ちょっ痛い!ふぐぉっ!あがぁっ!?」
誰かこいつに踵の危険性をご教授してやってくれ。
ーーーーー
「そもそもおめさんがうちに泊まったんは俺のせいじゃあないだろうがよ、んあんあんあ?」
「ムカつくからそれやめて。良いからさっさと後ろに乗せなさいってば、悪い事は言わないわ、従うの。ね?」
俺別にお前に弱味なんて握られてねぇんだけれどどうしてそんなに強気なんでせうか?
とりあえず俺は今やっちゃいかん二ケツを強いられている訳なんだけれど、それは基本的に俺のオカンのせいで俺のせいじゃない。
あのおばはんが、愛梨のことを死んでも離さないと駄々をこね始めたせいで愛梨も泊まる羽目になり俺のパジャマは剥奪される始末。
そして今日は平日の月曜日です。僕たち私たちは元気いっぱい現役高校生。そしてこのちっこい女のゲフンゲフン……なんとも麗しい女性ですので睨むのはやめてくださいお願いします。
まぁ、ほら女子ってのは色々用意が必要ですやん?ほんでもって制服も鞄も全部家に置いとる訳で、帰らんとならんのですわ。
「お前んちの10m手前くらいで降ろして良い?」
「理由による」
「お前と同じ轍は踏みたくねぇから」
玄関まで行ってみなさいよ、それはもう蟻地獄よ。
「……まぁ仕方ないか、許してあげる。」
昨日は託斗と二人で徒歩で行った訳なんだが、近いとは言っても徒歩なら10分弱かかる。昨日みたいに時間に余裕がある訳でもましてや暇でもないから自転車に頼るのは必然的ってものだろう。
今日は月曜日なのだから。
「ねぇ……ねぇってば!」
「今全神経をポリカーがこねぇかどうかの瀬戸際に注ぎ込んでるんだから邪魔すんないや」
朝からポリちゃんのお世話になるとかマジ勘弁。
「ふーん、折角期末テストの対策してあげようかと思ったのになぁ。そっかごめんね集中していいよ」
「待て、待っておくんなまし、待ってつかあさい。聞く、聞くから耳かっぽじってジッポーだから」
愛梨はかなり頭がいい、そして俺は頭がよくない。あやかるに越したことはない。
「今日の放課後ほんとにいくの?」
「そりゃ勿論。俺は有言不実行が一番嫌いだもの」
「……はぁ。でも、きっとあの柄の悪い人達だって血眼になってあの学生の事探してるはずよ?」
そりゃそうだろうな、纏めてボコられてはい終わりなんてそんなに物分りいい奴がヤンキーなんてしちゃいないと俺だって思ってる。
「んー、じゃあ愛梨は留守番な」「嫌よ」
「い、嫌ってなん「嫌なものは嫌」…はい。」
「そうじゃなくて……もういい。そろそろ降ろしていいよ、じゃまた後でね」
「ういお」
俺はさぁ、その程度の危険は犯してでもその猿に会う価値はあると思ってんだよなぁ。
まぁ、なんとなくなんですけどね!

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