異世界召喚に巻き込まれたんだが、勇者がかなり弱くて人生詰んだ。

ノベルバユーザー210019

00 プロローグ

やぁやぁこんにちは皆さん。今日は俺たちの為にどうも集まってくれて本当にありがとう、感謝感激雨霰だね。
早速本題に入りましょうね。
まず君たちにはちょっとした紙芝居でも見てもらおうかなぁ、なんて俺は思うんだ。俺が作ったんじゃないぜ?寧ろ俺は出演者犠牲者やでな。
関西人?ちゃうでおまんがな!ごめんなさい。
今回お送りする紙芝居は、とんでもファンタジーなとある勇者の英雄譚茶番劇
いやはや格好いいものだよね勇者というのは。
男の子なら一度は憧れる御伽噺の世界の主人公だ。絶対的な正義を行使するその力、まさに敵なし……それだけじゃないよね、女の子の格好の的だぜ?モテモテだねぇ?なぁ、憧れるだろ?
悪いけどさ、そのカッコいい勇者っていう幻の偶像は今ここで早急に捨てちまおう。いや、悪い事は言わんから捨ててくれ。
よーし、前置きはこのくらいにしようじゃないか。
それではキャストを紹介していこう。
この英雄譚茶番劇の主軸、着火剤であり起爆剤。異世界に召喚されし《不完全ディフェクティブ》な勇者イケニエである
峰岸ミネギシ 托斗タクト
そして勇者を召喚した張本人、事の発端であり末端。国の安寧を願う民の《代弁者プロフェット》ことプリンセス。
第三公女『ステラ・ユーグストス・エレオノーラ』
そして語り部であり《予定外イレギュラー》。不幸にも勇者召喚なんていうクソみたいな脚本シナリオに巻き込まれたこの俺こと
飯島イイジマ 賢治ケンジ
まぁ、今はこのくらいにしておこうかのぉ。
それじゃ、このくそったれで超絶シニカルな御伽噺クソバナシ前日譚プロローグといこうじゃないか。はじまり、はじまり。
ーーーーー

高校二年生の冬。 
校舎の中では、何処からともなく管楽器や打楽器やらの音がごった混ぜに響き渡り、外の空気に晒されて結露している窓の外からは運動部の活気のある掛け声が絶え間なく聞こえている。
部活動に勤しむ若者たちは、最後の晴れ舞台に備え、より力を入れ始める時期である。
何も部活動をしているものだけが忙しいわけでもない。それ以外の人間だって別の問題にぶつかる時期、何を隠そう進路問題だ。
これまた苦しい事に明日進路希望調査の提出がある、現に俺たちは今教室にて絶賛進路模索中なわけだ。
今まで何も考えてこなかったツケが回ってきてガチで進路について考え始めなければいけなくなり、心無しか皆ナイーブになる季節、それが冬。
それは俺の目の前にいる馬鹿も例外ではないようで。
「なぁ、ケンジ?俺さ、このまんまじゃダメだと思うんだ。俺にしかできない大切な事がきっとあるはずなんだ。」
もう取り返しのつかないレベルまで追い詰められているようであったが、わざわざ構ってやる必要はないだろう。
「シャラッ!クソして寝ろタコナスビィ」
「真剣なんだ、お前にも真剣にかんがえて欲しいんだ。俺にもお前にも自分にしかやれない大切な事がきっとある……あるはずなんだぁっ!」
なんだこいつ超めんどくさいな。
さらっと俺を巻き込んでくるあたりが非常に憎たらしいんだが、ここはクールにいこうじゃないか。
「タクト、あのな。お前の言いたい事はよーくわかる。だがな、俺たちには今一番優先しなきゃいけない事が他にあるだろう?そう、進路だ。俺たちは大学を決めないといけない、そうだろ?大学に行けばお前の探しているソレも見つかるかもしれない、いやきっと見つかるさ。」
「違う、違うんだよ。俺さ、何か感じるんだ。ここ最近ずっと感じているんだ。もうビンビンなんだよ……誰かが、誰かが俺を呼んでいるんだよ。いやっ俺たちを必要としているんだ!」
Hu〜こいつは思ったより重症だ。
もうちょっと言葉選べよエロガッパ。幻聴?HAHAHAこいつはやばいな、さながらマリファナ小僧といったところか。一体全体こいつは何処でナニをキめてきたんだ?
幼稚園来の幼馴染がこんなとこでヤク中にジョブチェンジするだなんてさすがの俺も考えやしなかったが、まぁ致し方ない事だろう。人生山あり谷あり、いや穴ありだな、もうそっとしてやる事にした。
あー早く委員長こねーかな、まじで。
「ああ、うん。強く生きろ、な?」
その時だった、まさにその時であった。
俺が完全にこのバカを見捨てたその瞬間、なんだかバカの足元が超絶光ってるじゃないか。俺はその時に危機感を覚えるべきだったんだ。
そうしなければいけなかった。
その瞬間に教室から一人逃げていれば俺は絶対にこんなクソッタレな御伽噺に巻き込まれることなんてなかったんだ。全く、この時の自分を本当に呪ってやりたい。
何を考えていたと思う?
『あーえぇっと……ヤク中ってもしかして発光できる感じ?』
はははっ!そんなわけねーだろっ!
そんな頭おかしい事考えていたら、タクトに思っきし腕掴まれてんのよ俺。
「やっぱり呼ばれてたんだ、行くぞっ!俺に、俺たちにしかできない事やってやろうぜっ」
「はっ!?いや待てっ!はっなせっ!これダメなやつだってっ!ちょっ!?おいぃいいくぁwせdrftgyふじこlp……」
もう完全に手遅れだった。
光が膨張していく。
前が見えない、しかし腕は掴まれたまま。意識が遠のいていく。最後に目に映った景色は、光の中僅かに見えたのはどうみたって、御伽噺万歳なイカしたれた魔法陣だった。
そして俺たちはその日、元の世界から消失した。
ーーーー
ストンっ…何処かへ降りついたような感覚。やばい、目を開けたくない。開けたら色々終わってしまう気がする。何がやばいって先程まで己の体を襲ってきた底冷えのする冬特有の寒冷って奴がまったく感じられない事実ゾッとした。
ああ、開くな目よ。
ああっ!ああああ…
「は?…はっ!?うわうわうわっ!やっぱあれだっ!こいつは俺の人生の中でもダントツで最低最悪最恐な展開だぞ…おいおいっまじかよっ……勘弁してくれよ」   
どこをどうみたってそこは教室なんかじゃない。床を見てみろ、なんて美しい大理石だってんだ。ついでに俺らを囲んでいるこいつらの風貌を見りゃどんな馬鹿でも一瞬で理解するだろう。
まずここは日本・・じゃない。
ははっこいつはいい、いやよくない。すこぶる良くないね、最強に酔狂な展開じゃないか。
もう説明する必要はないだろう?俺たち、いや違う。タクトは勇者としてこの世界に呼び出されたんだ。
大方この俺たちを囲む異世界人達が召喚の儀とやらでもやったんだろう、そこのいた無駄に容姿の整っている麗しき御令嬢さんを筆頭に。
俺はもちろん巻き込まれ要員ってやつだよ。
そう、予定外イレギュラー
驚くのはまだはやいぜ? その時、俺と俺たちを囲んでいた異世界人達は驚愕に恐怖を重ね、叫喚していたんだ。
「おい、タクトッ!!?お前マジでやってくれたな……!いつまで寝てんだばかっ!起きろっ!はぁ?………ちょっ、おい托斗…?おいおい待て!托斗………おいマジかよ」
これまた綺麗サッパリ、あと腐れなく拓人、いや元拓人なソレが情けなく転がっていた。
きれいな顔してるだろ?死んでるんだぜ、それで。
なんて冗談言えるほど俺の神経は図太くない。この時の俺は完全に気が動転しちまってた。そら目の前で幼馴染が死んでるんだぜ、笑止だよまったく。

ほんととんでもない茶番に巻き込まれたもんだ。一体全体どうしてこうも人生ってのは穴だらけなんだ?
はは、笑っちまうよな神様ほんとバカじゃねーの?

そしてこの後すぐにこのクソッタレな御伽噺は怒涛の急展開を迎えるわけである。





コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品