普通を極めた私が美少女に転生ってそれなんて生き地獄!?

ノベルバユーザー210019

1000PV記念 僕の従姉妹はかなりヤバい。

「いーやぁああっ!──もうっ!我慢できないっ!」
腰の辺りまで伸ばしたきめ細やかで陽の光に照らされ煌めく金髪を激しく揺らして逃げ回る女の子。
彼女は20匹もの魔物に絶賛追われ、囲まれ、襲われ中なんだけれど僕は助けに行くどころか心配さえしていない。
──あの程度の魔物なら心配するだけ無駄だもの。
「もういいっ!ぶっ飛ばすっ!!」
彼女がそう叫ぶと、その声に呼応したかのように周囲の草木がざわめくように揺れ始める。
魔素。
この世界に充満し、僕達の生活を支えてくれている魔法の源。学者達はマナと呼ぶことが多いけど僕達は普通に魔素と呼んでいる不可視のモノ。
その魔素は生物が生まれた時点で体内に生成しはじめる生命力の一種、魔力に反応して色をもったオーラとして見えるモノに変化する。
それは、魔力を放出した人間を中心に立ち込めるようにして輝きを放つんだけど、魔力の量が多ければ多いほどその輝きは途轍もない輝きを見せるんだ。
今僕の目の前でブチ切れている従姉妹の周りは目がおかしくなりそうな程の黄色い輝きに満ち溢れているんです。
「私は普通に生きていただけの可哀想な女の子……そんな私をこんな所に連れてきたんだから、このくらいの願いは聞き受けなさいよ馬神様っ!」
いつ聞いても、詠唱になってない詠唱を彼女が唱え始めてる。神々しい輝きの中で、数多の魔法陣が標的を絞りその真下へ座標を固定されていき、最後に彼女を中心にして半径5メートルの巨大な魔法陣が形成されていく。
「はぁああっ!いんでぃぐねぇええしょんっ!ふるっぼるてぇええじっ!!」
──シュゴッ……ビジャァァィンッッ!!
彼女を囲んでいたおよそ20匹の魔物の群れに突如として上空から極大の雷の雨が降り注ぐ。およそ20秒、その間延々と雷の落ちる怒号を僕はただひたすらに眺めるだけ。
雷の最上級殲滅魔法インディグネイション。
しかも、彼女のオリジナルふるぼるてーじは元来の5倍の威力を誇るという非凡を地で行く禁止級魔法。
「ねぇリリィ……?いくら蜘蛛が嫌いだからって、普通インディグネイションとか使う?」
「だって!だって気持ち悪いんだもんっ!女の子が蜘蛛を怖がるのは普通の事だからセーフだもん!セーフ!」
普通にアウトだと思うよ………

ーーーーーー

はぁ……そもそも、何の為にクエストを受けたと思っているんだろうか。
アリシアさんの誕生日プレゼントを買う為にお小遣いを稼ぎに蜘蛛型の魔物、ロックスパイダーの糸の納品を受けたと僕達が受けたというのに、リリィのバカ。
考えなしに禁止級魔法なんか使うから糸どころか亡骸の一つも残ってなかったお陰で見事にクエスト失敗でむしろ逆にお金が減っちゃったし………
はぁ、これじゃあ本末転倒じゃないかー!新しいクエストを探すべきかそれとも……んー……あぁああ……
「……ーてぃーっ!おーいっ!るぅてぃーっ!もうっ貴方は昔っからぼーっとし始めたら全然戻ってこないんだもん。ノット普通も良いところだよ全くっ!変わったところといえば口閉じるようになったくらいじゃない?」
「ばっ…!いつの話をしてるのさっ!」
「0歳から3歳までの話に決まってるじゃん」
「そんなの覚えてるわけないじゃんか……それに別にぼーっとしてるわけじゃないし!それに……嫌なんでもない。」
もうこの子は普通の対極にでもいるんじゃないかと最近考えている君の存在よりかは幾分と普通だとおもうけど、この子は昔から普通じゃないって言うとブチ切れたり人生に絶望して大泣きしたりするからもう言わない。
──あやすの面倒くさいし。
「普通にこれからの事考えてたんだよ……というか、誰のせいでクエスト失敗した思ってらっしゃるので?」
「うぐっ……だ、だってぇー!私ロックスパイダーだけは嫌だって言ったもんっ!」
「……まぁそうだけど、インディグネイションはないよ。インディグネイションだけは。」
「うぐぅ……ごめんなさい。」
「別に怒ってないよ。ほら新しいの探しにいこ?」
そう言って僕はリリィに手を差し出す。
半ば無理やりにクエストを受けたのは僕だから君だけのせいとは僕だって思っちゃいない。
それに……
「───うんっ!」
僕はもう15年も君の隣にいるんだ。君が沈んだ顔だと僕としても居心地が悪いからね。


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