創造神で破壊神な俺がケモミミを救う

てん

第52話

 
犬斗達に住民の保護を依頼して一週間が経った頃の早朝。周辺の住民の保護に向かっていた犬斗達がペンタゴンに戻って来ていた。

犬斗達の話では大地の予想通りマルタの様な惨状になっていたとのこと。

しかし小さな村ではさほど大きな被害にはなっていなかった為、主に被害の大きかった街にいた住民を保護して来たらしい。

この様子ではまだ回れていない村や街も酷い状態になっているかもしれない。

大地は出来る限り早く保護に動けるように、レイや獣士団にも協力してもらいながら、まずは犬斗達が連れてきた住民達の誘導を開始する。

しかし大型バスから続々と降りて来る住民達は目の前のペンタゴンの城壁や中に建てられた建造物を目の当たりにすると、必ずといって良い程その場で固まってしまい、中々スムーズに誘導することが出来ない。

保護した住民の誘導が終わる頃には既に日が暮れる頃になっていた。

大地が疲れた様子で夕日を眺めていると、夕日の真ん中に影が浮かび上がってきていることに気付く。

獣士団が警戒態勢を敷くが、影の正体に気付いた大地が声を掛けその警備を解かせると、その陰を迎えにいくようにレイに指示を出した。

段々と近づいてきたその影の正体は馬車だった。

馬車にはトームの家紋が入っており、位の高い者が乗っていることを表していた。

ペンタゴン前に止まった馬車から出てきたのはノルヴェス領主のヘイデンだった。

馬車から降りて早々にペンタゴンの大きさに度肝を抜かれるヘイデン。

思わず尻餅を着きそうになるが、迎えに来ていたレイが支えたことでなんとかヘイデンの臀部が守られた。

老人に支えられている事に気付いたヘイデンは恥ずかしそうにレイにお礼を伝えると、大地の方へ歩み寄ってきた。

「こんな時にわざわざこんな所まで来るなんてノルヴェスは大丈夫なのか?」

「そうだなあまりよろしくはないが、緊急で話し合いたい事があってな。」

相当急いできたのだろう、馬車を引いていた馬はペンタゴンに着くなり折れたように足を曲げるとその場で激しい呼吸を繰り返している。

「そうか。じゃあここで立ち話もなんだし、座って話せる場所に移動しよう。」

大地はヘイデンとその従者を中央にある会議室へと案内しようと車庫から車を持ってくるように獣士団員に指示を出す。

徒歩で行くとばかりに思っていたヘイデンは不思議そうな顔をしながらも待っていると、獣士団員が運転する車がヘイデンの目の前まで迫ってきた。

「あれは何だ!?」

驚いたヘイデンは突撃されると勘違いして腰を抜かすとまたしても尻餅を着きそうになるが、今度は隣にいる大地に支えられたことで臀部の危機を回避する。

大地は後部座席の扉を開きヘイデンを誘導して座らせると、自分は助手席へと座った。

その後ヘイデンの従者を用意したもう一台の車に乗せると王宮へと発進する。

王宮へと向かう道中、車窓から建造物が見えるたびに百面相のように表情を変えていくヘイデン。

王宮に着く頃には表情を変えすぎたせいか、顔が強張った状態で車から降りて来ていた。

大地は他の領主と違い、威厳というものを無理に表さないヘイデンに不思議と親近感が沸いてきていた。

ヘイデンは大地に会議室へと案内され席に着くと、ふぅ~っと大きく息を吐いた後、大地に疑問をぶつける。

「大地殿この都市はどうなっているんだ!? 見た事のない乗り物に見た事ない建物。ここだけ別世界にあるようだ!」

「まぁそこら辺の話は無事戦争を乗り越えてからにしよう。」

大地はまずヘイデンが緊急で話し合いたいといっていた内容について話を移す。

興奮気味に話していたヘイデンも大地に話を振られると我に返ったように真剣な顔つきになる。

「そうだな。まずはその話をしなければ。どうやら東側に戦争準備の動きがあったそうだ。多分近々戦争が始まる。それを伝えておこうと思ってな。」

その後西側と東側の軍の動きやおおよその戦力についてヘイデンが話を始める。

現在西側にはガルム達がかき集めた兵で構成した西トーム連合軍を作っており、西トーム連合軍は兵ではない冒険者達や野盗等も巻き込んで現在約四十万にまで膨れ上がっているそうだ。

多分だが領主の首を取った者には領地を与えるなどと公言して戦力を集めたのだろう。

それに対して東側は推定約三十万程度。

こちらは領地から全ての兵を連れてきているわけではなく、領地の統治を乱さない為に半分程度の兵力は領地に残しているらしい。

こうして見ると東側の領主達の方がよっぽどまともな判断が出来る人達だということがわかる。

これまでお互いに大きな動きもなく、睨み合いが続いていたのだが、東側に陣形を組む動きが見られたことから、西側もそれに対応するように軍の陣形を組みだしたそうだ。

ヘイデンは一通りの説明を大地にすると、小さくため息をついた。

大地はヘイデンからの報告を聞きながら感じた小さな疑問をヘイデンにぶつける。

「それだけなら手紙でのやり取りでも良かっただろ?」

大地の質問に思わず顔が曇らせるヘイデン。

大地はヘイデンの表情からわざわざここまで領主であるヘイデンが来た理由を察する。

「戦争が始まる前に俺達に応援要請をしに来たってことか。」

「・・・・大地殿言う通りだ。戦争が始まる前にノルヴェス領地の守りに人員を割いてもらえないか打診に来たのだ。帝国が介入してくる以上ガルム達が勝てるとは到底思えん。ガルム達が敗れたとなればノルヴェスにも敵が迫ってくる。とてもじゃないが私達だけでは防ぎようがない。なんとか大地殿のところの兵をお借り出来ないだろうか?」

ヘイデンは席から立ち、大地の前まで行くと深々と頭を下げてお願いをする。

一時の静寂が会議室を包んだ後大地が口を開きだした。

「いやそれは出来ない。」

「そうか。やはり厳しいか。」

ヘイデンは暗い表情を見せると、そのまま大地に一礼し会議室から出て行こうとドアノブに手を掛けようとする。

その時ヘイデンの後ろで大地がボソッと提案するような形で呟き出した。

「でももし・・・ヘイデン達がこっちに来るのであれば、こちらは直ぐにでも住民達全員の受け入れの準備をしよう。」

「それは・・・まことか?」

ドアノブに手をかけたまま、大地の方を向き、信じられないといった表情を見せるヘイデン。

「会談の時に出来る限り協力するって言っただろ?」

「ありがたい。全て大地殿に頼る形になってしまいすまない。いつか必ずこの恩には報いさせてもらいたい。」

「今はそんな事より、住民の移動が先だろ?」

「そうだな。では早速ノルヴェスの民の移動を開始せねばならん。私は急いでイフに戻らねば。」

しかし馬車は壊れてしまい、移動手段がない。

急がねばならない状況にも関わらず足がないことに頭を抱えるヘイデンに大地が一つ提案を始めた。

「うちのバスを使えばすぐに住民の移動が可能だぞ。」

「バス?」

この後ヘイデンに更なる驚愕の嵐が吹き荒れる事になるのだが、この時のヘイデンはまだそれを知る由もなかった。

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