創造神で破壊神な俺がケモミミを救う
第36話
獣人が人間をかばう光景に大地が驚いた表情を浮かべていた時。
ルルも目の前の状況を理解出来ず、目をパチパチとさせながら困惑していた。
ケンプフを庇う獣人の女性は大地達を睨むと、怒りの表情を浮かべ、怒鳴り声をあげた。
「あなた達はなんでケンプフさんにこんな酷いことをするんですか! ケンプフさんが何をしたっていうんですか! よってたかってケンプフさんにこんな怪我までさせて・・・人として恥ずかしくないのですか!」
凄い剣幕で怒鳴る女性に大地が答える。
「その男が帝国からの密偵だって知ってて言ってるのか?」
「えっ!? ケンプフさんが密偵・・・?」
女性は怒りを忘れて、思わずケンプフの顔を見る。
ケンプフはその女性と目が合うと申し訳なさそうに俯いた。
「俺達はその帝国の密偵から話を聞こうとここまで来たんだが、話をしてくれる雰囲気じゃなかったんでな。仕方なく強硬手段を取らせてもらった訳だ。驚かせたなら申し訳ない。」
「ケンプフさんが帝国の・・・・どういうことなんですかケンプフさん! 説明してください!」
「リリーナすまない。彼らの言う通り俺は帝国の密偵としてここに来たんだ。」
「そんな・・・・」
「てか一つ気になったんだが、何で獣人のあんたが人間を庇ってるんだ?」
「それはケンプフさんに私達がお世話になっていますので。」
「私達? 世話になっている? にわかに信じ難い話なんだが・・・」
「嘘ではありません! ケンプフさんは私と身寄りのないマルタの子供達の為に冒険者をしながら養ってくれているんです!」
真剣な眼差しで大地に訴えるリリーナ。
大地もリリーナが嘘を言っているようには思えず、ケンプフに帝国の密偵でありながら、冒険者までしながら獣人達を養っている理由について聞く。
「おい。なんで帝国兵であるお前がそこまでして獣人を助ける?」
「お前達が欲しいのはトームにいるスパイについてだろ? そんなこと聞いてどうする?」
「いや俺はスパイの事以上に、人間至上主義を掲げる帝国の兵であるお前が獣人と親し気にする理由の方が気になる。」
「おかしな奴だな・・・まぁ話して困るものでもないしな。」
ケンプフは蜥蜴の獣人であるリリーナとの出会いについて語り始めた。
半年前ジョゼからの命令で、トームに潜むスパイに密書を渡す任務を言い渡されたケンプフはドンクレス所属の他の二人と共に帝国を出発した。
ケンプフの担当した密書はデュセオ領地にあるマルタという都市の指定された酒場にてスパイに渡す物だった。
当初マルタに来て密書を渡すべく指定の酒場に来ていたケンプフは、よそ者を嫌う冒険者から毎回のように絡まれていた。
しかし帝国で鍛錬を積んでいたケンプフは冒険者を軽くあしらう程度に相手をして撃退していた。
密書を渡して一週間ぐらい経った頃、スパイからの返答を待っていたケンプフは冒険者ギルドの宿屋に泊まりながら月日を過ごしていた。
ケンプフがやることもなく酒場で酒を飲んでいた時、急に身体が痺れて動けなくなる。
痺れた身体を必死に動かし、周りを見渡すとマルタに来た当初に軽くあしらった冒険者達の姿があった。
冒険者達はケンプフのあしらうような戦い方にプライドを傷つけられていた事から、復讐の機会をずっと待っていたようだった。
そんな時、ケンプフが酒場に頻繁に出入りするようになったと情報を得た彼らは酒場のマスターを買収して痺れ薬をお酒に混ぜてケンプフに提供させていた。
身体が痺れてしまった状態のケンプフはその冒険者達にこっぴどく痛みつけられた後、路地裏に捨てられてしまう。
身体の至る所の骨を折られ、裂傷も酷い状態のまま放置されたケンプフは、自身の命が尽きていくのを感じていた。
そんな絶望的な状況のなか現れたのがリリーナだった。
リリーナは酷い怪我をしているケンプフを見つけると放っておけず手当をしようとケンプフの元に歩み寄る。
しかし幼い頃から帝国より獣人は忌むべき存在だと教えられてきたケンプフはリリーナに粗悪な態度を取って、手当を断った。
しかしリリーナはケンプフにどれだけ粗悪な態度を取られようとも強引に手当を行い、ケンプフからどれだけ罵詈雑言を浴びても一向に手を止めなかった。
リリーナの決死の手当てのおかげで何とか一命を取り止めたケンプフはリリーナが住んでいる教会へと運ばれた。
そこでリリーナの懇切丁寧な看病により、徐々に容態を改善していったケンプフは命の恩人である獣人を忌むべき存在だと思えなくなり、リリーナとも普通に接するようになった。
リリーナは教会で親や身内もおらず、食事もまともに取れない子供達の面倒を見ており、教会には獣人も人間も関係なく楽しそうに遊んでいる子供達の姿があった。
ケンプフも身体がある程度動くようになってからは子供達の遊び相手もしていた。
そんな療養生活を続けながら三か月経った頃、傷も塞がり、骨も全て綺麗にくっついた事で、久々に街まで出てきたケンプフは初めてリリーナを取り巻く環境の厳しさを目の辺りにする事になった。
リリーナは薬草からポーションを作る仕事をしていた。
デュセオ領地の南側には洞窟のような形のダンジョンが多数存在し、冒険者はそのダンジョンで魔獣を狩り、素材を持ち帰ることでお金を稼いでいた。
リリーナはそういった冒険者達に作ったポーションを売り生計を立てていた。
しかし帝国程ではないにしろ獣人差別のあるトームの冒険者達は正当な対価も払わずリリーナの作ったポーションを買っていた。
リリーナは必死に正当な対価を求めるが冒険者達は半分以下のお金しか渡さず、酷い時にはタダでポーションをとるだけでなく、説得するリリーナを突き飛ばす奴までいた。
ケンプフは自分に優しくしてくれたリリーナが無下に扱われているのを見て、獣人を忌むべき存在だという帝国の教えは間違っているものだと思うようになった。
ケンプフはこれまでのお礼として、リリーナに身の危険のあるポーション売りを止めるように伝え、代わりに自分が冒険者として活動し生活に必要なお金を稼ぎだした。
ドンクレスに所属し危険な任務もこなしていたケンプフは冒険者として魔獣の討伐もそつなくこなし、リリーナ達を養う程度の金銭を稼ぐことは出来ていた。
その後もケンプフは休みなく魔獣を狩り続けることで、食事等の必要最低限の物だけではなく、子供達にみんなで遊ぶためのボールや、リリーナには綺麗な服をプレゼントするなど本当の家族の様な関係を築いていった。
しかしまたもや問題が起きてしまう。
リリーナがポーションを売らなくなった事から、これまでリリーナから安くポーションを買っていた冒険者達が血眼になってリリーナを探すようになった。
幸いにも地元の住人でも迷うことがある路地裏の更に奥にある教会いたリリーナが見つかることはなかったが、このままではリリーナ達が安心して暮らせないと思ったケンプフは行動を起こした。
最初はリリーナから適正価格でポーションを買うように説得を試みたが、一度安く買ってきた者達が首を縦にふることはなかった。
むしろ獣人如きから買うだけありがたいと思えという輩まで現れる始末だった。
言葉での説得は無理だと判断したケンプフは自分にとって家族も同然となったリリーナ達を守る為、冒険者達相手に実力行使に出た。
こうして始まった冒険者達との内部抗争は最初こそ苦戦することも多かったものの、サムシアン等のケンプフの強さに惚れ込み付き従う者も現れ始めたことで、一気に形勢が逆転した。
その後二か月に渡る抗争を経て、遂にケンプフはマルタの冒険者達のトップに立った。
トップに立ったことにより発言力を得たケンプフはリリーナなど南側に住む弱者からの搾取を禁止した。
しかしケンプフに隠れてマルタ内での権力を高めようと画策したサムシアン達により、ケンプフの名はマルタの南側を支配する者として知られるようになってしまっていた。
そしてその結果、ケンプフは大地達と出会うことになってしまったのであった。
ルルも目の前の状況を理解出来ず、目をパチパチとさせながら困惑していた。
ケンプフを庇う獣人の女性は大地達を睨むと、怒りの表情を浮かべ、怒鳴り声をあげた。
「あなた達はなんでケンプフさんにこんな酷いことをするんですか! ケンプフさんが何をしたっていうんですか! よってたかってケンプフさんにこんな怪我までさせて・・・人として恥ずかしくないのですか!」
凄い剣幕で怒鳴る女性に大地が答える。
「その男が帝国からの密偵だって知ってて言ってるのか?」
「えっ!? ケンプフさんが密偵・・・?」
女性は怒りを忘れて、思わずケンプフの顔を見る。
ケンプフはその女性と目が合うと申し訳なさそうに俯いた。
「俺達はその帝国の密偵から話を聞こうとここまで来たんだが、話をしてくれる雰囲気じゃなかったんでな。仕方なく強硬手段を取らせてもらった訳だ。驚かせたなら申し訳ない。」
「ケンプフさんが帝国の・・・・どういうことなんですかケンプフさん! 説明してください!」
「リリーナすまない。彼らの言う通り俺は帝国の密偵としてここに来たんだ。」
「そんな・・・・」
「てか一つ気になったんだが、何で獣人のあんたが人間を庇ってるんだ?」
「それはケンプフさんに私達がお世話になっていますので。」
「私達? 世話になっている? にわかに信じ難い話なんだが・・・」
「嘘ではありません! ケンプフさんは私と身寄りのないマルタの子供達の為に冒険者をしながら養ってくれているんです!」
真剣な眼差しで大地に訴えるリリーナ。
大地もリリーナが嘘を言っているようには思えず、ケンプフに帝国の密偵でありながら、冒険者までしながら獣人達を養っている理由について聞く。
「おい。なんで帝国兵であるお前がそこまでして獣人を助ける?」
「お前達が欲しいのはトームにいるスパイについてだろ? そんなこと聞いてどうする?」
「いや俺はスパイの事以上に、人間至上主義を掲げる帝国の兵であるお前が獣人と親し気にする理由の方が気になる。」
「おかしな奴だな・・・まぁ話して困るものでもないしな。」
ケンプフは蜥蜴の獣人であるリリーナとの出会いについて語り始めた。
半年前ジョゼからの命令で、トームに潜むスパイに密書を渡す任務を言い渡されたケンプフはドンクレス所属の他の二人と共に帝国を出発した。
ケンプフの担当した密書はデュセオ領地にあるマルタという都市の指定された酒場にてスパイに渡す物だった。
当初マルタに来て密書を渡すべく指定の酒場に来ていたケンプフは、よそ者を嫌う冒険者から毎回のように絡まれていた。
しかし帝国で鍛錬を積んでいたケンプフは冒険者を軽くあしらう程度に相手をして撃退していた。
密書を渡して一週間ぐらい経った頃、スパイからの返答を待っていたケンプフは冒険者ギルドの宿屋に泊まりながら月日を過ごしていた。
ケンプフがやることもなく酒場で酒を飲んでいた時、急に身体が痺れて動けなくなる。
痺れた身体を必死に動かし、周りを見渡すとマルタに来た当初に軽くあしらった冒険者達の姿があった。
冒険者達はケンプフのあしらうような戦い方にプライドを傷つけられていた事から、復讐の機会をずっと待っていたようだった。
そんな時、ケンプフが酒場に頻繁に出入りするようになったと情報を得た彼らは酒場のマスターを買収して痺れ薬をお酒に混ぜてケンプフに提供させていた。
身体が痺れてしまった状態のケンプフはその冒険者達にこっぴどく痛みつけられた後、路地裏に捨てられてしまう。
身体の至る所の骨を折られ、裂傷も酷い状態のまま放置されたケンプフは、自身の命が尽きていくのを感じていた。
そんな絶望的な状況のなか現れたのがリリーナだった。
リリーナは酷い怪我をしているケンプフを見つけると放っておけず手当をしようとケンプフの元に歩み寄る。
しかし幼い頃から帝国より獣人は忌むべき存在だと教えられてきたケンプフはリリーナに粗悪な態度を取って、手当を断った。
しかしリリーナはケンプフにどれだけ粗悪な態度を取られようとも強引に手当を行い、ケンプフからどれだけ罵詈雑言を浴びても一向に手を止めなかった。
リリーナの決死の手当てのおかげで何とか一命を取り止めたケンプフはリリーナが住んでいる教会へと運ばれた。
そこでリリーナの懇切丁寧な看病により、徐々に容態を改善していったケンプフは命の恩人である獣人を忌むべき存在だと思えなくなり、リリーナとも普通に接するようになった。
リリーナは教会で親や身内もおらず、食事もまともに取れない子供達の面倒を見ており、教会には獣人も人間も関係なく楽しそうに遊んでいる子供達の姿があった。
ケンプフも身体がある程度動くようになってからは子供達の遊び相手もしていた。
そんな療養生活を続けながら三か月経った頃、傷も塞がり、骨も全て綺麗にくっついた事で、久々に街まで出てきたケンプフは初めてリリーナを取り巻く環境の厳しさを目の辺りにする事になった。
リリーナは薬草からポーションを作る仕事をしていた。
デュセオ領地の南側には洞窟のような形のダンジョンが多数存在し、冒険者はそのダンジョンで魔獣を狩り、素材を持ち帰ることでお金を稼いでいた。
リリーナはそういった冒険者達に作ったポーションを売り生計を立てていた。
しかし帝国程ではないにしろ獣人差別のあるトームの冒険者達は正当な対価も払わずリリーナの作ったポーションを買っていた。
リリーナは必死に正当な対価を求めるが冒険者達は半分以下のお金しか渡さず、酷い時にはタダでポーションをとるだけでなく、説得するリリーナを突き飛ばす奴までいた。
ケンプフは自分に優しくしてくれたリリーナが無下に扱われているのを見て、獣人を忌むべき存在だという帝国の教えは間違っているものだと思うようになった。
ケンプフはこれまでのお礼として、リリーナに身の危険のあるポーション売りを止めるように伝え、代わりに自分が冒険者として活動し生活に必要なお金を稼ぎだした。
ドンクレスに所属し危険な任務もこなしていたケンプフは冒険者として魔獣の討伐もそつなくこなし、リリーナ達を養う程度の金銭を稼ぐことは出来ていた。
その後もケンプフは休みなく魔獣を狩り続けることで、食事等の必要最低限の物だけではなく、子供達にみんなで遊ぶためのボールや、リリーナには綺麗な服をプレゼントするなど本当の家族の様な関係を築いていった。
しかしまたもや問題が起きてしまう。
リリーナがポーションを売らなくなった事から、これまでリリーナから安くポーションを買っていた冒険者達が血眼になってリリーナを探すようになった。
幸いにも地元の住人でも迷うことがある路地裏の更に奥にある教会いたリリーナが見つかることはなかったが、このままではリリーナ達が安心して暮らせないと思ったケンプフは行動を起こした。
最初はリリーナから適正価格でポーションを買うように説得を試みたが、一度安く買ってきた者達が首を縦にふることはなかった。
むしろ獣人如きから買うだけありがたいと思えという輩まで現れる始末だった。
言葉での説得は無理だと判断したケンプフは自分にとって家族も同然となったリリーナ達を守る為、冒険者達相手に実力行使に出た。
こうして始まった冒険者達との内部抗争は最初こそ苦戦することも多かったものの、サムシアン等のケンプフの強さに惚れ込み付き従う者も現れ始めたことで、一気に形勢が逆転した。
その後二か月に渡る抗争を経て、遂にケンプフはマルタの冒険者達のトップに立った。
トップに立ったことにより発言力を得たケンプフはリリーナなど南側に住む弱者からの搾取を禁止した。
しかしケンプフに隠れてマルタ内での権力を高めようと画策したサムシアン達により、ケンプフの名はマルタの南側を支配する者として知られるようになってしまっていた。
そしてその結果、ケンプフは大地達と出会うことになってしまったのであった。
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