腹下したせいで1人異世界転移に遅れてしまったんですが

けん玉マスター

64話 虚の剣

「藤山課長…大丈夫ですか?」
部下がやつれた様子の茂に尋ねた。
「ん?ああ…妻の具合が悪くてな…。」
「奥さんが?だ、大丈夫なんですか?」
「なんとかな…それに最近イタズラの手紙が増えててな…。ストレスがたまる一方だよ…。」
「イタズラですか…。警察に相談してみては?」
「…そうだな…。今度行ってみるよ。」
そうだ…イタズラならば警察に相談すればいい。
こうなった原因が何者かによるものならば警察が解決してくれるはずだ。
茂はこのことを警察に相談することにしたのだ。



「は?え?この文字か見えないんですか?イタズラでしょう?」
茂は警察に送られてきた手紙を見せる。
「…何を言ってるんです?それはただの…




…新聞でしょう?」
「…は?」
「…あなたさっき言いましたよね?新聞はとっていると。これの事なんじゃないんですか?」
「新聞?!これが?!どう見てもイタズラの手紙でしょう!」
「はぁ…あなた…疲れてるんじゃないですか?」
「そんな…!馬鹿な…!」
「とにかく、これ以上用事がないなら帰ってください。」



とぼとぼと帰り道を歩く茂。

(くそ…何がどうなってる?誰がこんなこと…。)
そんなことを考えているうちに脳裏に手紙に書いてあった文を思い出す。
「…親…父…。」
(いや!あいつは行方不明になったはず…。)



「…怖いか?親父。」


「!」

耳元に声が響く。

「だれだ!?」
しかしそこには誰もいない。
だが、その声で確信する。


「っ…優…なのか…?今更…なんだってんだ…。」
ギリ…
「優!お前なんだろ?!出てこい!こんなことしたのはお前か!?」
しかし優の姿はどこにも見えない。
周りの通行人は茂が急に声を上げたことにより離れ始めた。
「っ…くそがっ!」



「ただいま…。」
茂はそう挨拶して家に入る。
検査入院だったため、妻も家にいる。
「どうだ?あれから幻覚は…」



「…人殺し。」



「!」
妻はそう呟いたのだった。
「何…言って…」
「人殺し。」
「何を…言っているんだ?」
「人殺し。」
「や、やめろ…」
「人殺し。」
「やめろぉ!」
茂はその場にうずくまる。


…なた!あなた!
「あなた!」
「!」
「どうしたんですか?さっきからご飯はどうするか聞いているのに訳の分からないことを言って。」
「…は?」
「…まさかあなたも何か見たんですか?」
「っ…まさか…幻聴…?」
「人殺し。」
「っ!またか…!」
「人殺し。」
「っ…俺は…もう寝るっ!」
そう言って茂は自室へと帰って行った。


くそ…全部…あいつの仕業なのか?
部屋に帰る途中娘とすれ違う。
「もう…寝ろよ。」
「…なきゃ…」
「ん?」
「…罪を犯したものは…罰を受けなきゃ…。」
「!」
「この…人殺し。よくのうのうと生きてられるね…パパ。」
「っ…!」


この件から茂は…音が全て「人殺し」と聞こえるようになった。


当然仕事はできるわけなく、仕事はクビになった。



人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し



毎日毎日その言葉が耳に入る。


「くそ…くそ…くそ…!やめろ!俺は…俺は何もやってねえんだよ!」

人殺し…

「違う!」

人殺し…

「や、やめろ…それ以上言うな…」

人殺し…

「っ…ああああああああぁぁぁ!!」
「あなた?!」
茂はそのまま発狂し、家を飛び出した。





「はぁ…はぁ…ここまで…来れば…」
茂は人1人いない公園に来ていた。
「元気そうだな。親父?」
「!」
そこには悪魔の笑みをした少年、優が立っていた。


「ゆ、優…。」
「久しぶりだな…。5年ぶりくらいか?」
「どうしてお前が…全部お前の…仕業なのか?」
「どうやらちゃんと効いてくれてるみたいだなぁ?」
「っ…てめえ!良くもこんなこと!今すぐ元に戻せ!!」
「あ?良くもこんなこと?それをお前がよく言えたな。」
「っ…」
「忘れたわけじゃないだろ?あの時の事。」
「し、知るか!あんなのアイツらが勝手におっちんだだろうがぁ!!」
「…」
その言葉を優は目を細めながら聞く。
「第一あいつが俺に尽くさないのが悪い!飯はまずいわ洗濯もろくに出来やしねえ!あんなのアマ死んで当然…」
「もう…いい。」
「!」
優は茂の首に剣をそえる。
「お前…それは…」
「よーく分かったよ…!これで…これで躊躇いなくやれる。お前がどれだけクズか…。死んで当然なのは…お前だよ。」
「やめろ…やめるんだ…そんな事したらお前は…!」
「あばよ…親父。天国でも元気でな。…あ、違うか…お前が行くのは…地獄だよ…。」
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁ!!」

優の剣が茂の胸に深く刺さった。




「終わったよ…母さん…姉さん…何も…かも…。」
発狂し、のたうちまわる茂を見下しながらつぶやく。

「幻影魔法…虚地獄うつろじごく。」






昨日出せませんでしたすいません!

残すところあと2話です。最後までお楽しみください。
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コメント

  • 熊猫

    「は?え?この文字か(が?)見えないんですか?」

    0
  • るーるる

    ヽ(゚∀゚ )ノイヤッフ-とうとうクライマックスかなー??

    1
  • すばるきゅ~ん

    もう少し苦しむ姿が見たかった(父親の)

    1
  • KIA

    最高でしたね!
    でも、もうちょっと父親の苦しむ姿を見たかった気がしますね

    1
  • イルネス

    もっとやっても良かった気もするけどこれで一件落着ですね!
    …そういえばシロってどこにいるんですか?

    1
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