腹下したせいで1人異世界転移に遅れてしまったんですが

けん玉マスター

28話 小宮&松山side 地獄

「僕を…殺してくれ。」
「は?」
「死ねば地獄が分かるんだろう?僕は強くならなければならない。強くなるためだったらなんだってする。地獄から強くなって…はい戻ってきてやる。」
「フ…ハハハ…。」
「…」
「フハハハハハ!!」
閻魔大王は高らかに笑う。
「面白い…!面白いな…お前は!」
「僕は…強ぬなるためにここに来たんだ。」
「それで?強くなるために…死ぬと?地獄に自ら身を投じる気か?」
「ああ。地獄は確実に強くなれるんだろう?なら行かない意味が無い。」
「初めてだ。自ら地獄に行きたいと望むやつは。」
「僕は…なんだってする。」
「だがどうする?戻ってこられないかもしれんぞ?」
「戻ってこれないなんて通じるものか。僕は絶対に生きて戻る。待たせている人がいる。」
「無茶苦茶だな。」
「ふ…僕はこういう男だ。」
「…いいだろう。ここが…」
「!」
小宮の視界が変わっていく。
「…地獄だ。」
「な?!なんだ…これは…!」
「俺は今…お前を殺した。これでお前も死人しびとだ。…ってそういうことを聞いているんじゃないよな?」
小宮は目の前の存在に釘付けになっていた。
目の前には巨大な…天を割き、どこまでも続いている大きな塔がそびえ立っていた。その下には街が広がっている。
「…ようこそ死人しびとの街…ヘルタウンへ。」


「どういうことだ?ここは…地獄じゃないのか?」
「もちろん地獄だ。」
「なら…なんで…なんで街が…!」
「地獄に行っても生活は変わらない。ここでいつまでも暮らし続けるだけだ。」
「…ならなんでここは地獄なんだ?」
「…ちょうど始まった頃だな。」
遠くから巨大な足音が聞こえてきた。
「あ、あれは…鬼?」
角の生えた巨人。それは正しく鬼だった。
「地獄と言えば鬼だろ?あの鬼に喰らわれたものは…無になる。」
「無?」
「何も無い。ただ何も無い存在となる。」
「何も…無い?」
「ああ。全てを失うのさ。自分の存在全てをな。」
「ここで僕は…強くなれるのか?」
「もちろんだ。大きな塔が見えるだろう?」
「…ああ。」
「…あれは地上に繋がっている。」
「!」
「あの塔を登り進めれば強くなれると同時に…生き返ることが出来るのさ。」
「ちなみに…登り切ったものは?」
「ゼロだ。みんな麓で鬼に食われちまう。」
「…」
「…さすがにその姿で地獄に放り込むほど俺は鬼じゃない。」
「!…足が…。」
失ったはずの右足がしっかりと生えていた。
「…何年かかる?」
「さあな。数千年かかっても登りきれないかもな。」
「…」
「安心しろ。地上での時間とこの世界の時間は違う。お前が地上に戻るのに1万年かかったとしても地上ですぎる時間は数秒だ。」
「どれだけ時間がかかってもいい訳か?」
「それはどうだろうな。」
「なんだと?」
「直に分かる…。地獄に送られたものは…壊れちまうのさ。」
「なに?」
「俺が教えていいのはここまでだ。せっかく来たんだ。楽しんでけよ?じゃあな。」
閻魔大王はその場から姿を消した。
「…地獄…」
ここには一体どんなものが待ち受けているのだろうか?
陸は地獄の街、ヘルタウンに一歩足を踏み入れた。


地獄に匂いはなかった。
血なまぐさいものを想像していたが…。本当の無臭とはこのことだろう。何も臭わない。
「死人の気配はないな…。まずこの街…本当に誰か住んでいるのか?」
鬼は去った。全員食われたとは考えにくい。
ぽん…
肩に手を触れられる。
「!」
陸は驚いて振り返る。
「す、すまん…驚かせるつもりはなかった!」
「…誰だ?」
「見ない顔だな。新入りだろ?」
話しかけてきた男はスキンヘッドの男だった。
「俺はここに来て一年になる。分からないことがあったら教えてやるよ。」
「…そうだな…。お前の名は?」
「…お前は名前を覚えているのか?」
「!…何を…」
「覚えているなら言ってみろ。」
「僕は…あ…れ?僕の…名は…」
「そうさ…ここに来たものは…名を奪われる。」
「そんな…。」
「俺はこの街での名はタカラだ。」
「タカラ…覚えておく。」
「お前も名前を付けたらどうだ?」
「僕は…いい。」
「そうか…。」
「聞きたいことがある…。」
「なんだ?」
「地獄に長くいたものは…壊れると聞いた。どういうことだ?」
「…それは…」
「ぐあぁー!!」
「なんだ?!」
「あれを見ろ…。」
「あれは…」
大男が叫んでいた。
「あいつは地獄に7000年いた男だ。」
「7000年…?」
気が遠くなるような年月だ。
「地獄に死人として入れるのは1万年だと言われてる。」
「死人として?」
「…お前…鬼は見たことあるか?」
「ああ、さっき。」
「死人の1万年後の姿…それが…鬼だ。」
「鬼…。」
「長くい過ぎれば…鬼になっちまうのさ。」
「そうか…そういうことか…!ありがとう。あの塔にはどうやっていけばいい?」
「!…お前…まさか…咎人の塔を登るつもりか?」
「ああ。僕は地上に戻って…やらなければならないことがあるからな。」
「…悪いことは言わねぇ。やめとけ。…あそこは…鬼の巣窟だ。」
「それがどうした。」
「お前…食われたらどうなるか分かってるのか?!」
「分かっているさ。無になる…だろ?」
「分かっているなら…!」
「ありがとう。でも…僕は強くなるためにここに来た。」
「なんだと?」
「詳しいことは言えない。僕は行く。色々教えてくれてありがとう。」
「…塔に行くにはこの通りを真っ直ぐ行くだけだ。」
「!…ありがとう。」
「ああ…気をつけろよ…。」
「ああ。」


これが…咎人の塔…。
高すぎる…。
でも…超えなければならない。
「…由希…すぐに迎えに行く…。」
陸は咎人の塔に足を踏み入れるのだった。

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100話以上出していながらルビの機能の存在を初めて知った僕今日この頃。
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コメント

  • 熊猫

    僕は...強ぬなるために
    →僕は...強くなるために
    じゃないですか?

    0
  • 垂直抗力(元ラノベ大好きサムライ)

    小宮様頑張って!!
    小宮様絶対強くなって生き返って来るって信じています!

    2
  • ノベルバユーザー239382

    ユウより小宮強くなっちゃうの……?

    3
  • たくあん

    タカラさん親切だな

    3
  • けせらとてん

    小宮は優よりも強くなるんですか?

    3
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