腹下したせいで1人異世界転移に遅れてしまったんですが

けん玉マスター

23話 小宮&松山side 最果ての先へ

「…嘘…でしょ?陸…。」
「ケタが…違う…!」
嘘ではない。実際に陸と由希の前に立っているのはレベル1000を超えたブラッドウルフのメスである。
「由希…一旦引くぞ…!」
しかし狼の王者は逃がしてはくれなかった。
「ガァルル…」
後ろに回り込まれ二人は退路を失った。
「!…避けろ!由希!」
「…きゃ!」
ブラッドウルフのその凶暴な爪が振り下ろされた。
由希は間一髪でそれをかわした。
「無事か!?」
「…何とかね…。」
くっ…まずいな。このままじゃ…。
「…陸!」
ブラッドウルフは子供の方へと歩いていった。
「助かった…のか?」
「…とにかく今のうちに…」
「グルル…」
「アオーン!!」
「!」
「…そんな…」
そうここは既にブラッドウルフの巣の中だったのだ。
「由希!下がれ!」
「グアァ!」
「…きゃ!」
「由希…!」


「由希…大丈夫…か?」
「…ごめん…陸…私のせいで…」
陸の片目には痛々しい傷ができている。
「大丈夫だ。それよりも目の前の敵に集中しろ。」
「…うん…。」
目の前にはまだ無傷のブラッドウルフの群れがいる。
「絶望的だな…。」
「…陸、私を…連れ出してくれてありがとう。」
「よせ。そういうのは乗り越えてからだ。行くぞ。」
「…身体強化!」
「ストームフォース!行くぞ!!」
状況は圧倒的不利である。
そんな状況の中二人は果敢にも群れに飛び込んだ。
この状況から生き延びるために。
考えろ…。敵のレベルは1000…。攻撃を受けたら終わりだ。
「由希!横に飛べ!」
「…ええ!」
「ブラックミスト!」
ここに来て陸は幻影魔法を放った。
「今のうちに…」
「アオーン!!」
狼の王の天地を揺るがすような強烈な遠吠え。その遠吠えはこの場に満ちている霧を全て吹き飛ばした。
「嘘…だろ…。」
「…陸!危ない!身体強化!」
「由希!何をして…」
「…陸、ここは任せて…。…信じてる。きっと迎えに来てね?」
「由希!!」
由希は1匹のブラッドウルフに飛びつきそのまま下へと続く穴へと落ちていった。
「そん…な…。」
「グルル…」
目の前にはまだブラッドウルフがいる。
またか?また…守れないのかよ…!僕は…。
「…は、ははは…。」
「グアァ!!」
「由希…僕は…!」


穴に落ち行く中、由希は身を守ろうと試行錯誤していた。
「グアァ…ルル…」
「…暴れないで。大丈夫。私達は死なないから。魔結界!」
由希とブラッドウルフの体を魔力の結界が包み込んだ。
「…このまま行けば…!待ちなさい!私から離れないで!」
ブラッドウルフは由希から距離を取ろうと離れ始めた。
このままじゃ…!
「…感謝しなさいよ…。助けてあげるから…。」
由希は落ちながらもブラッドウルフに近づいた。
「グアァ!!」
「…暴れないで!…お願い。」
「グルル…」
由希は抵抗されながらもブラッドウルフの毛並みに抱きついた。
「…!岩が…!」
二人の落ち行く先には尖った岩があった。
「…お願い…持ちこたえて…!」
岩と魔力の結界が衝突した。
「…!…ダメ!!」


「…あなたは…何とか無事みたいね…。」
「…グルル…クゥン…。」
「…そんな…可愛い鳴き声もできるのね?」
「クゥン…」
ブラッドウルフは由希の足にできた傷を必死に舐めている。
「…っ…ダメよ。出血が多すぎる。ここはどこか分からないけど…あなたは群れに戻りなさい。」
「クゥン…」
「…あーあ…こんなの…敵を助けて死んだって分かれば…陸に怒られちゃうな…。」
「クゥン…」
「…最後に救えた命もある…のね…。」
ダメ…血が足りない。意識が…。
「…最後にお願い。あなたの毛並みに…もう一度抱きついていい?」
「クゥン。」
由希はブラッドウルフのサラサラとした毛並みに抱きつき、そのまま意識を失った。


陸に迫るブラッドウルフの凶刃。
それを陸は剣で受け止めた。
「…考えるのは…もう疲れた。」
「グルル…」
「ふう…。」
陸は一旦大きな息を吐く。
「信じろ…由希は絶対生きてる。だから…僕は…絶対に生き延びてみせる!!」
「グルル…」
「テンペスト!!」
風属性魔法最上級魔法を放つ。
陸の体を巨大な竜巻が包んだ。
「真·五月雨切り!!」
「グアァ!!!」
もっとだ…もっと強く…!
陸の気持ちに反応して竜巻の威力がどんどん上がっていく。
「ぐっ!…うおおおおぉ!!」
その竜巻から数発の風の刃がブラッドウルフを襲う。
「グルル…ガァルル!!」
「エンチャント!」
竜巻は全て陸の剣に吸収された。
「グル…」
「風極斬!!」
「グア…」
陸の放った斬撃は先頭にいたブラッドウルフの体を真っ二つに切り開いた。
「は…ははは…」
陸はその場に腰を着いた。
「ダメだ…。もう…立てやしない…。」
「グルル…」
「ガルル…」
「すまない由希…。ここまでかもしれない。」
目の前には2匹のブラッドウルフ。
「由希…。」
「グルル…」
「下がりなさい。」
「!」
後ろから1人の女性が歩いてきた。
「助ける義理はないのだけれどね。」
「あなたは…。」
本能的に勝てないと察したのか2匹のブラッドウルフはその場を後に下がって行った。
「先日はどうも。1ヶ月ぶりかしら?」
陸の前に現れたのは魔神サラだった。


「どうして…ここに?」
「ちょっと忘れ物よ。」
「忘れ…物?」
「私ここに封印されてたのよね〜。」
「何故助けた?」
「別に。特に理由はないわ。」
「…」
「さてと、忘れ物も見つかったし私は帰るわね。」
「一応礼を言う。…助かった。」
「…あなた…なかなか強いのね。ユウを倒したかったらアドバイスしてあげる。」
「なんだと?」
「ここに眠ってるあるものを見つければもしかしたらユウに勝てるかもね。」
「ある…もの…。」
「ヒントはここまで。じゃ、頑張ってね。」
魔神は暗闇の中に歩いていった。
「っ…敵に…助けられるとはね…。それに塩も送られた…。」
いいさ、強くなってやるよ。…絶対に…!

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昨日は鼻水と目が痒すぎて投稿どころではありませんでした…。
すいません!

あとこれは個人に対するお詫びなんですが…よく僕の小説を読んでコメントをくれるユーザーネーム「自称クズ」さん。すいません!コメントにいいねしようとしたら間違えてブロックしてしまいました!もちろん直ぐに解除しました。
そちらから分かるかは分かりませんが、不快な思いをされたかもしれません。本当にすいません!

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コメント

  • ノベルバユーザー359301

    いらねぇ

    2
  • しらす(。∀゜)

    塩 何に使うのかなぁー\"(๑'ᴗ')ノにょ

    2
  • らう

    本当に塩送ったらいいのに(優勝景品)ww

    5
  • 756

    素朴な疑問なんだけど仮にも封印を解いてくれた恩人を倒す方法を敵に教えるって普通に頭おかしくないか?

    7
  • ぶくぶく茶釜

    ユウはさいつよがいい…

    9
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