腹下したせいで1人異世界転移に遅れてしまったんですが

けん玉マスター

19話 銀木犀の木の下で

優side
ピルーク王国
「はぁ…はぁ!」
「どこまで逃げる気だよ?江ノ島。」
「私は…あなたに謝りたいの!」
「だったら逃げるなよ。」
小さな空き地に着いた。
江ノ島を追い詰めた優は空に目を移す。
「銀木犀…か。」
「!」
「なあ江ノ島。覚えてるか?中学の時近所の公園で良く銀木犀の花を拾ったよな。」
「…そんなことも…あったね…。」
「そうか。」
「ねえ、優くん。私にこんなこと言う資格はないのも…これを言ったら優くんが怒るのもわかってる。」
「…」
「でも…もう一度…あの頃に…戻れないのかなぁ?」
江ノ島は涙を流し優に訴える。
「全部…私が悪い…。でも…!私はわがままだから…あの頃に…戻りたいよ…!」
「…」
「…最後になるかもだから…言うね。優くん…私はあなたのこと…あの時…私のために戦ってくれた時から…ずっと…ずっと…大好きでした…!」
「…そうか。…言いたいことはそれだけか?」
「…うん。ねえ優くん。最後に…なっちゃんって呼んでくれないかな?」
「…その程度の要求なら飲んでもいい。だが…小宮と松山はどこだ?」
「さあ…知らないわ…。」
「そうか…。」
「…じゃあな。…なっちゃん。」
「…」
(ごめんね…由希ちゃん…。)
ドンッ!
乾いた銃声が1発。
日暮れゆく街に響いた。




小宮&松山side
ここはスフラン共和国を少し北に進んだところにある小さな村である。小宮と松山は宿をとっていた。
「…」
「…今朝の新聞…見た?」
「ああ…。」
「…菜々…。」
「…まさか…藤山が仕掛けてくるとはな。」
「…アギリシにいた勇者も…全滅した。…菜々…!私が!私があの時…引き離さずに…連れてきていれば…!」
「自分を責めるな。」
「…でも…!」
「落ち着け…由希。」
「…ごめん。ちょっと…出てくる。」
「松山!」
松山は走り去っていってしまった

ダンッ!
「…くそ…!」
小宮は新聞を見ながら頭を抱えた。
「由希を…1人にしちゃダメだ…!」
小宮はいそいで後を追った。


「由希!今1人になるのは危険だ!」
「…」
松山は小宮から逃げるように走っていく。やがて行き止まりに着いた。
「…来ないで!」
「由希…。」
「…うっ…うう…」
「…江ノ島のことは…僕にも責任がある…。」
「…」
「由希の気持ちは分かるが…1人になるのは危険だ。」
「…菜々は…私の…私の唯一の親友だったのに…!私…私…菜々が居ないと…私…!」
「由希…。」
ダメだ、こんな時にかける言葉が…見つからない。
「…ううっ…!ああ…!ああああああああぁぁぁ…!!」
由希はその場に崩れ、泣き叫んだ…。
僕は…その様子をただ見ていることしかできなかった。

由希はそのまま部屋に篭もってしまった。


「由…っ…くそ…くそ…!」
小宮は松山の居る部屋の前に立ったまま入ることが出来なかった。
僕は…なんでこんなに…無能なんだ…!
江ノ島が死んだ。
生き残ったものなんて僕達ぐらいだろう。
由希を守りたい?
「何も…何も出来ていないじゃないか…!」
何も出来ない自分が嫌になる。
「藤山…君はあくまで僕達に地獄を見せる気なんだね…。こんなの…耐えられるはずがない…ははっ…」
小宮はその場に力なく崩れた。
「くそっ…たれが…!」


菜々…菜々!
「菜々!」
そこで私は目を覚ました。
しばらく菜々には会っていなかったのに…前まで感じていた温もりが恋しい。
いつも私に元気をくれたのはあなただった。
「…う…」
目がぼやける…。
「…菜々…!私…ダメ…あなたがいないと…生きていけないよ…!」
いつも近くにいるのが当たり前だと思っていた。
ああ…失ったものは当たり前でいて大きな存在。このことに気づくのはいつだって失ったあとだ…。



「由希、居るか?少しでも何か食べないと…。」
「…」
「由希…。…すまない。」
「…待って。」
「!…由希…。」
由希が部屋から出てきた。
「何か…食べるか?」
「…うん…」
目は腫れていて由希はどこかやつれている。
「おにぎりしかないが…。」
「…ありがと。」
「…」
由希はおにぎりを頬張り始めた。
「…陸、私決めた。」
「何を?」
「…強くなる。」
「由希…。」
「…藤山くんに…負けないくらい…!」
「そう…か…。」
目には強い決意が表れていた。
そうか…由希は…乗り越えたんだね…。
「僕は…君と強くなる資格はない。」
「…!…何言ってるの…?」
「まだ気持ちの整理がつかないんだ。辛いのは…由希なのに…僕は無力だ。こんな時に君にかける言葉が見つからない。君は答えを出した…!それなのに僕は…!メイギスさんの思いも無駄にして…結局はいつも悪い方に進む。僕は…もう疲れた…。」
「…何を諦めてるのよ…。」
「もう…僕のグループは君しかいなくなった。江ノ島は…もういない。仲間が死ぬのは…もう嫌なんだよ!」
「…菜々を…勝手に殺さないで!」
「!」
「…菜々は言ってた。藤山くんと仲直りするまで絶対に死なないって…!だから…菜々は…菜々は…!っ!」
「由希…。」
由希は涙を堪えながら真っ直ぐ僕の目を見て話した。
「ごめんな…由希。」
「!…なんで…謝るのよ…馬鹿…!」
「僕は…由希を守るために強くなる。もう二度と…そんな顔は見たくない。一番辛いのは…由希なのにな。」
「…陸…!」
「君にはいつも助けられてばかりだ…。不甲斐ない僕で…本当に済まない…。」
「…ばか…!」
「!」
頬に感じる柔らかい感触。
「…由希…。」
「…私は陸に助けられた。何度も…何度も。」
「…」
「…それに私達は同じグループ。助け合うのが…当たり前でしょ?」
「…そう…だな。」
「…うん、だから…辛いことがあったらちゃんと話して?私も…そうするから…。」
「ああ……!」
僕の胸に由希が飛び込んできた。
「!…ゆ、由希?」
肩が震えている。
「…ダメだ…!私やっぱ…まだ…ダメだったよ…。」
「…由希…」
「…菜々…!菜々ぁ…」
「っ…!」
慰めてやりたい、元気づけてあげたい。
だがどれだけ探しても由希にかける言葉は見つからなかった。



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昨日はなんかいい感じのストーリーが思いつかず、急遽休載にしてしまいました。楽しみにしてくださった方ごめんなさい。
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コメント

  • ノベルバユーザー332229

    中1の国語みたい

    1
  • ダイアーさん

    2人の目の前でいたぶるに100票かける

    6
  • 12AI11

    江ノ島の死に方もっと苦しめて欲しかった

    2
  • 天宮ソルト

    (´・ω・`)チキン ふうわさんそれな。どうせなら王女より残虐的に殺してほしかった……銃で殺すとか。普通すぎね?

    3
  • ユーノ

    死んだ描写ないし、手足切り落として飼ってるんじゃない???
    ほら、苦しませてから殺す言うてたから、多分小宮と松山2人捕まえて目の前でいたぶって殺してから殺すんじゃない???

    2
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